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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
4章 無能者のディアナ王国武闘祭

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38:アリアとの訓練、という名の蹂躙(じゅうりん)#

 ガウルとの訓練後、ぼろぼろになっての翌日は気怠けだる過ぎて何もやる気が起きなかった。

 正直、Bランク冒険者との訓練で一発目にガウルを選択したのは間違いではないのだが、辛い。


 というか、ガウルの攻撃が本気で鬼気きき迫り過ぎていて、どうにかこうにか防いで、転がり、小手先で受け流し……そんなのばかりだった。


 でもさぁ!? 実質Dランクじゃん!? よくやったと思わない!? そこらのDランクには負けるつもりねぇよ!? でも、俺が鍛えてきたガウルに勝てる訳ねぇじゃん!!


 言い訳しか頭の中に浮かばねぇよ!!


「ねぇねぇ、ノーマ君。どこまでやっていいの?」


 アリアの声に意識が戻る。


 やべぇ、脳内言い訳に夢中で訓練する意識に切り替わってなかったな……


 意識を変えるために訓練場を見回しながら息を吐く。

 今日は一気に見物は減り、花扇はなおうぎのメンツがちらほらだ。

 改めてアリアに目をやる。


 ふぅ……落ち着け、アリアは機動性きどうせい重視じゅうしした戦い方だ。

 ガウルよりもよっぽど早く、そして厄介やっかいな動きをしてかく乱してくる。


 目を離すな。目を離せば、如何いかくせを知っていようと厳しい。

 アリアの動きは俺の素の反応速度はんのうそくどを超えている! だが、手加減なんていらない。


 だから俺の答えは決まってる!


「全力で来いよ? 下手に情けなんて入れてみろ。逆に俺がその花、手折たおってやる」


 俺の言葉にうれしそうな笑みを浮かべると、何も言わずに床につま先をトントンとする。

 アリアの昔からの癖。ガウルと違って仕込んでもいない。


 だが、アリアがこれをする時は全力だ。本当に、全力なのだ。

 あぁ、情けねぇ……ガウルと同じでこえぇ……


 怖さを払うように抜剣ばっけんして1、2度素振りを行う。

 気休め程度ではあったが、恐れすぎる気持ちをやわらげる事に成功した。


 イリアが俺たちに近付くと腕をあげて宣言せんげんする。


「ノーマさん、アリア姉さん。よろしいですね?」


 俺とアリアの顔を見るイリア。

 お互い、無言で頷く。


「では、始めっ――!!」


 イリアがばっと腕をおろした。


 開始だっ!!


 ガウルとアリアの訓練はこの間見ている。

 あの速度なら、まだ一撃を狙われても対応できる可能性もあるはずだ!


 アリアが一気に距離を離したと思えば、俺の周りを走り始めた。あの時よりも早い!?


 うっそだろ!? ガウルとの訓練では完全に速度上げてなかったのか!? いや、ガウルには剣士としての才能があるから、警戒けいかいもあって速度が乗り切ってなかったのか!!


 まずい、不規則ふきそくに近づいたり、離れたり、左右前後と動いて……アリアは空間を利用しての戦闘が得意だ……! 天井すらも!


 しまった! 上下の動きが加わって目が追いついていない!

 視界から途切れ――!?


「うごぇ!!?」


 俺の横腹に、一気に詰め寄ったアリアの蹴りがぶっ刺さり、勢いを殺せずに壁にぶちあたる。

 正直、早すぎて蹴りが刺さった後に痛みを感じてるレベルだ。


 うぐぅぇ……やばい……これ、何もできないで終わるかもしれない……

 だって、見えないんだもん……


 あー……くそ……めちゃくちゃ、いてぇ……ガウルと違って速度が早すぎて、きちぃ……


「まだまだ行くよ、ノーマ君!」


 くっそ、今の一撃でめちゃくちゃ辛い。

 一時的に身体強化の魔力量を増やして立ち上がるしかねぇ……


 ただでさえ少ない魔力量だってのに! 情けねぇ!!


 どうにか姿勢を維持するために身体強化を強めにかける。


「こ、来いよアリア! 次は……! いてぇ……簡単に吹き飛ばされねぇからな!!」


 アリアは俺の言葉が威勢いせいを張っていると分かっているだろう。


 途中で大声出しただけなのに鈍痛がおそって、声がれちまったしな……

 だが、俺は、こんなもんで終われねぇ! 終わらせねぇよ!!


「ノーマ君っ!! 行くよ!!」


 宣言してから素早い動きをするアリア。


 そうさ、アリアとの実力差なんて分かりきっている。アリアも舐めてかかってはいないだろう。

 でも、向こうは宣言してから戦う余裕があるってのは、中々来るもんがあるな!


 だから、一撃だけ! 一撃だけでも、防いで反撃をして見せる! ちょうど良く突き飛ばされた壁を背にして、動きを見続けて予想してやる!


 投げナイフか!? りか!? それとも拳か!? 見極めろ(みきわ)、アリアの動きはガウルよりも素早いが、野性味よりも予測は付きやすいはずだ!

 それに、瞬間的しゅんかんてきなステップやフェイントの動きは、強化された足にも当然負荷ふかがかかる。その一瞬の遅延ちえんを見逃さずに目で追え!


 なおも速度を上げながら、アリアは疾走しっそうしていく。


 見ろ、アリアの動きを! そのすきを、その瞬間に、魔力を流せ!

 フェイントを見抜くんだ!


 アリアが姿勢を低くして、突っ込み! 跳躍ちょうやく――! 天井を蹴って体を回転――これは回し蹴り動作だっ!


 今っ――!!


「んなくそぉっ!!」


 目、左腕、剣に極小ごくしょうの魔力を流し、瞬間的に強化をほどこす。

 戦闘に魔術を満足に使えるほどの余力がない俺の、唯一ゆいいつと言える戦い方。


 アリアの蹴りに腕を、当てるっ――!!

 完全に目で追いきれねぇ! 上手く当たれっ!!


 願いは届き、アリアの左足蹴りを強化した腕で防ぐ。


 だがアリアの細い脚のどこにそれだけの力があるのか。そう思わせるほどの痛みが腕におとずれる。


 ここで、ひるんじまったら、意味がないっ! 右腕はかざりじゃねぇだろ! 思いっきり、突き立てろっ!!


「うぁああああらぁあああっ!!!」


 アリアの左足に、魔力を刃先に通し切れ味の増した剣を突き立て――

 られなかった……


 身体強化で無理やり立たせていた体から、力が抜けていく。


 魔力切れ……

 無様にも、突き立てる前に剣を落としてしまっていたようだ……


 こんな調子で武闘祭にカリストとエキシビションか。


「はは……こりゃぁ、前途ぜんと多難たなん、だ……」


「そんな事ないよ、ノーマ君! 一瞬だけ左足に刺さったから」


 アリアは少し楽しげに言う。

 良く見れば、アリアの綺麗な足――左ももに針を刺したかのような、本当に小さな流血――血の玉。


 微かにだが、ぎりぎり落とす前に、ほんの少しだけアリアの強化された体にも届いた俺の剣……

 一矢いっし、というよりも一針ひとはりだが、報いる事はできた、な……


 魔力切れで地面に倒れ行く中で見えた、アリアの左足の刺し傷。

 その事に満足しながら、床へ倒れこんだ。


 どうだ、俺の剣は……Bランク冒険者にだって、届くんだぞ……


 というか、動き、早すぎるだろ……成長しすぎ、だ……あふん……

回し蹴りっていうのかな?( ´ ω`)

天井から体を捻って回転を入れた新体操的な蹴り、なんだけど…回し蹴り?

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― 新着の感想 ―
竜〇を付けなきゃセーフな気もしますけど、他の既存表現なら以下辺りでしょうか。 ・独楽を思わせる回し蹴り ・まるでフライングキャメルスピンのような蹴り技 スピード感のイメージ的には新体操よりフィギュ…
旋風脚が一番しっくりくる呼び方かな〜と。 (*´ω`*) 画面端で三角飛びしてからの、空中竜◯旋風脚をめくり気味に出したイメージで読んでいましたw
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