37:『花園の批評家(レビュアー)』の実力評価
…………
訓練生は訓練場の隅で獅子迫る勢いのノーマと野性味あふれるガウルの戦闘を見ていた。そして、目が離せなかった。
「お前、あれ見えるか……?」
「馬鹿、見える訳ねぇだろ……」
「俺も見えねぇよ……あれで、才能があればどうなってたんだ、クラン長」
3人の訓練生は口々に訓練から目を離さないまま見続けて言う。
すると――
「どれか一つでも才能が有ればそれに特化させ、また違った戦い方が出来ただろうな」
そんな訓練生の言葉に『月浮かぶ湖面』リーダーのレイクが答えた。
今更気づき慌てだす3人の訓練生は、なんとか目を引き離しレイクに挨拶しようとする。
「レ、レイクさん! う、うっす!」
「こ、こんにちは!」
「す、すみません! こんにちわ!」
そんな3人を気にせずに目を向けないまま、レイクはノーマの戦闘を眺めて語る。
「お前ら、良く見ておけよ。あれがお前らの『百花繚乱』クランリーダーの『花園の批評家』だ。才能は開花せずとも、今のお前らよりも瞬間的なら強い。魔力が少ないために継戦能力は才能持ちよりも断然低いが、それ故に瞬間に特化し熟達した戦術をとっている。だが決してノーマの戦い方に惹かれるな。知識としてこう言った戦い方もある、とだけ覚えておけ」
そのレイクの言葉に後ろからグレイが声をかける。
「なに語ってんだ、レイク。訓練生ども、あんなの見て真似しようとしたって無駄だぞ。才能持ちと根本から考え方が違うからな。あれはノーマ専用の技術だ。どうしても才能持ちってのは、どこかで開花したモノに縋っちまう。剣技ひとつ取ってもそうだ。第六感、何かの気配の香り。言い方は何でも良いが、才能持ちは似たような感覚を目覚めさせて持ってる。それは悪いことじゃねぇし、正しい。だが、あいつにはそれがなかった。だからこそ、てめぇの身一つで進んできたダンジョンでの死線の潜り方、濃度がちげぇんだよ。魔力の有無なんかよりも、そっちの経験がでけぇんだ」
「グレイ、お前も語ってるじゃないか……『花園の批評家』――ノーマの真似事か?」
「う、うるせぇな! 仕方ねぇだろ! 久々に見ちまったら、こう、興奮するだろ!」
「まぁ、その気持ちは良く分かる」
グレイもレイクもそう言い合いながら、なおも視線は前を向いたまま。久しぶりに見るクラン長ノーマの戦闘に胸を打たれていた。
「レイクさんやグレイさんでも久しぶりに見るんですか……?」
「ですです!」
そこにアルメリアとフリュウが話に加わってくる。
「あぁ、お前らも加入してからまだ日が浅いから知らないか。ノーマは人のいるところではめったに訓練しない。正確には人に見せなくなっていった、が正しいだろうな」
「人に、見せない……?」
アルメリアが疑問を感じて首を傾げると、後ろからヒルダの声がかかる。
「お嬢ちゃん達、あんたらは新規ダンジョンでノーマと一緒にパーティー組んだなら予想つくんじゃないかい?」
「あ、ヒルダさん。予想……う、うぅ~ん……」
アルメリアが悩んでいるとフリュウが声を出す。
「自分の戦闘の影響を受けすぎないように、でしょうか……?」
「お、こっちの魔術師のお嬢ちゃんは気付いたね。そうさ、まだ若い蕾にはあの戦い方は惹きつけるように見える。けどね、ある程度強くなってくると真似しちゃいけないってのが分かってくるんだよ。それが分かっていても前衛の奴らやアタイらですらも、あれだけの闘志、死線の経験、研鑽による裏付けに惹きつけられたりする。だから極力、ノーマは見せないんだ。ノーマ自身が花開いたって認識するまでは、悪い影響になりかねないからね」
ヒルダの説明にグレイが気まずそうな声で言う。
「知らなかった。人前で訓練したくないだけだとばかり」
その言葉で呆れたレイクは、やっと視線を訓練からグレイに向けて告げる。
「グレイ、お前が知らないのは問題だろうが……まぁ、そういう訳だ。ダンジョンでの連携では意識を魔物に集中させているから問題にならないだろうが、訓練場では別だ。だからこそ本気のノーマは珍しい。何度も言うが、惹かれるな、知識として残せ、だ」
「まぁ、訓練も今度からは変わるんじゃない? 訓練場も二つに増えたしさ。ボクら花扇が訓練する時はアダマンタイト訓練場がメインになるからね。しばらくはノーマの訓練見放題かも」
レイクの言葉に、ウィンリィも反応して会話に加わる。
「久しぶりに、ノーマから手ほどきを受ける機会が増えそうだな。グレイは別だろうけどな?」
「ぐっ……ま、まだ伸びしろがあるってだけだ! いつか俺自身でもパーティーでもレイクのランク越えしてやるからな! 今だけだ!」
レイクの言葉にグレイが威勢の良い声を上げる。
「ははは、グレイ頑張れ。でも、そうなったらBランク以外のメンバーが倒れちゃうかな?」
「アタイみたいにBランクかそうでないかで、明確にノーマからの批評回数が変わるからね。ノーマはBランクは見えない、もう分からない、なんて言うけどな。これを見る限り、どうなんだかね?」
ガウルの剣筋を弾き、取っ組み合いも避けるノーマの動きを眺めながらヒルダが言う。
その言葉を聞いて皆一様に考えるも、答えは出ないままだった。
しばらくして、訓練はノーマの敗北が決定した。
魔力の切れたノーマが息も絶え絶えに倒れ、そこに吠えて追撃しようとしたガウルを、アリアとイリアが二人がかりで押さえつけて終了となった。
倒れたノーマの体は切り傷などでボロボロではあったが、致命傷は負っていなかった。
…………
活動報告に載せた内容ですが(´・ω・`)
ノーマの実力は誤解なきようお願いしたいですが、継戦能力がないので、全力を出したら魔力が切れて速攻でぶっ倒れますw
なので、魔力を瞬間のみの極小に抑えて発動する離れ業です。
けど、それでも暫くすれば魔力切れなので、大分弱いですw
いつか、詳細を書いた設定とか出すべきかも知れないですねー…




