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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
3章 忍び寄る不穏な影

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30:腹芸大会

 ディアナ王国の王都にある奇跡協会支部を訪れていた。

 そろそろ、各調査報告書などが奇跡協会支部に届いた事だろう。

 当初の予定とは少し変更されたが、ささっと貸し借りの話を締結ていけつさせようか!


 窓口で魔薬の件でアルテミス、カリストと話をしたいと伝えると、応接室に通された。


 しばらくの間、応接室でゆったりと座りながら待っていると、扉が開かれる音がした。


 その先には、来てくれる事を願っていた相手だ。

 無事に姿を見せてくれた事に安堵しながらも、これからが正念場だぞ、と気をしっかりと持ち直して落ち着かせ、穏やかな声を出す。


「お会いして頂けて安心しましたよ。あり得ないとは考えていましたが、善意で情報提供して門前払いにされる可能性もあるのではないかと、ひやひやしておりましたから」


 流石に門前払いされたら奇跡協会前で駄々をこねたくなるからな。こんな善意の冒険者になんて仕打ちをしてくれる!、ってな。


 だが、まずは第一関門突破だな! 一度席についてしまえばこちらのものだ。

 交渉事は席に着く前に既にがんじがらめに相手を絡めとって身動きをできなくさせるのがベストだ。ただなぁ……余りやりすぎると奇跡協会に怒られかねないから、やはりこの貸し1つの為の画策かくさくが妥当なんだろうな。


 目をつけられておたずね者扱いで拘留こうりゅう、取り調べ、なんて流石に俺も嫌だしな。


 アルテミスとカリストが応接用のソファの前まで来た。

 立ち上がり一発、挨拶をぶちかますとしますか!


「先日お会いしてから日数も余り経っていませんが、お久しぶりです。アルテミス様、カリスト様。いやぁ、あれから『百花繚乱こちら』もてんやわんやの状況でしてね? 新規ダンジョンの件しかり、訓練場の崩壊しかり、本当にいろいろですよ。そんな中、裏路地の話と奇跡協会の慌ただしさが、偶然、耳に入ったものですから。これは、ぜひとも奇跡協会の皆様方に協力してお話をせねば、と」


 言外に『奇跡協会ディアナ王国支部おまえら』の狙いも現状の動きも把握しているぞ、と伝えてやる。

 まぁ、おそらくはそんな事をしなくともアルテミスは既に気付いているだろうがな。


「そうでしたか。それは心強いですね。ノーマ君のように優秀な……えぇ、優秀な者に協力を願い出ていただけるなど……いけしゃぁしゃぁと、よくも……」


 おいおい、心の声が漏れ出てるぞ。しっかりと笑顔でふたして上っ面は気にしてない顔を演じろっての。まぁ? 気に食わないようにしてるの、俺だけどさぁ!


 ははははは! 俺の腹芸を見せてやろうか?


「ははは! 最後はよく聞こえませんでしたが、そこまでおだてられては背中がムズムズしてしまいますよ! なに、これも前回のお詫びもかねておりますから! こんな一介の冒険者が何を、と思われるでしょうが何もお気になさらずに!」


「いえいえ、そんな何もせずなど出来かねます。一介の冒険者などとおっしゃられては、我々『奇跡協会』としても立つ瀬がありません。せめて、何か今、お力に成れる事でも仰ってくださいませんか?」


「いえいえいえ、現時点では特にありませんし。それにこれは善意の、本当に善意から、私共『百花繚乱』が行っただけの事です! えぇ、えぇ、お気になどなさらずに!」


 お互いに、いえいえ、いえいえいえ、と言い合う。


 まだだ! このいえいえ合戦の執着は最大の譲歩を引き出せるまで続く!

 こらえろ! 最高の利益とする、何でも貸し1つの言質げんちが取れるまでは!

 アルテミスから「やっぱり貸し借り無しね」、なんて言えるはずがないんだ! 耐えろ、俺!


「い、いえいえいえいえ! こちらとしましてもそんな無下になど!!! 何か今、お困りの事は探せばあるでしょう!?」


 えぇい!! 中々、引っ張るじゃないか! そろそろ、根を上げてもいいんじゃないか!?

 隣のカリストなんて、俺らのいえいえ合戦の応酬おうしゅうにうわ言で「いえ、いえいえ、いえいえいえ……」、なんて呟いているぞ!


 仕方ない! こうなったらこちらから話の方向を提示して誘導してやろうじゃないか!

 この堅物め! 素直に吐き出せ!


「な、ないですよ、現時点では。それでしたら、今回の件が問題なく片付いた後に、改めてご助力願う事があれば伝えさせていただきます。もしくは、今後どこかでお力をお貸しいただければと! どうでしょうか?」


 俺の言葉に慌てた様に告げるアルテミス。


「そ、それでは記録にも残らない口約束ですよ!? 奇跡協会としても外部協力者の名前など記録に残せません! よろしいのですか、ノーマ君!? 口頭での貸し借りのあいまいな線引きなど、一方が貸しだなどと思わなければ不成立です! それに今後、我々が要望を叶える保証もないじゃないですか!」


 来たな!!? そこだ! 保証なんてない! だからこそ、お前らは保証するんだ! 天下の『奇跡協会』様、だからなぁ!!

 これで反故にするようであれば、『奇跡協会』は自らの信用と信頼という絶対的地位を放り投げる事になる!

 なんせこちらは王都である意味で有名な冒険者クラン『百花繚乱』だ! 噂レベルでも声高に口約束を反故ほごにされたと漏れれば大打撃を与えるだろうなぁ!


 そこまで考え至れば、アルテミスは口約束如きでも反故にする事などできるはずがない!


 いえいえ合戦で口が軽くなったな、アルテミス!!

 間髪入れずに、アルテミスの言葉に乗っかっていくぞ。


「奇跡協会の皆様を信頼しておりますので。それを担保に信用と信頼の証とさせて頂きます! 冒険者には信用と信頼が重要ですので。これで納めて頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


「……そこまで仰られては致し方ありません。それでは奇跡協会ディアナ王国支部アルテミスが宣言します。貴方のご助力により、本件が収束に向かったあかつきには……今後助勢を求められた際にお力になると保証しましょう。これでよろしいのですね?」


「えぇ、貴方であれば、何も問題はない。それだけ優秀で信頼足りえる女性だ」


 しっかりと目を見て告げた。


「……」


 アルテミスはこちらを見たまま、じっとしている。


 ここは逸らしてはいけない。相手の目を見て、しっかりとこちらの強い意志を示すんだ。

 やましい事がある時ほど、しっかりと目を見て視線を切らすな! 言葉ははきはきと喋る事、視線はしっかりと見続ける事で、誠実せいじつさと真摯しんしさを演出しろ!


「そ、そうですか……そ、それではその様に致しましょう……貴方からの報告書を読み進め、組織を押さえようと思います。ですので、今日はもう、ノーマ君にはお帰りを……お帰り……を……」


 ん……? なぜこうも言い淀んでいるんだ……? 要は話が済んだから出て行けって事だろ?

 分からん謎行動だな。

 まぁ、良いか。堅物だからな。こちらからスムーズに退散してやるとしよう。


「そうですね。私もこれで安心してクランに戻る事ができます。それでは、失礼します。お会い頂き、ありがとうございました」


 さらっと言って帰ろうとソファから立ち上がり、扉に向かおうとすると声がかかる。


「あの!」


「はい?」


 なんだ、やはり貸し借りの件で訂正でも入れようとしているのか?

 ちっ!? やっと最大限の譲歩を引き出せて安心しきっていたというのに!


「お、お茶を! い、いえ! やはりなんでもないです!」


 お茶!? なんでもない!? なにその意味深な会話!

 だ、だが、ここで、あぁお茶ですね、なんて飲める訳ないだろう!


 さっさと何でも無いと言うのだから退散させてもらおう。

 よし、扉の位置までにじり寄ったぞ……!!


 ドアノブもくひょうをセンターに入れて回転スイッチ! ドアノブもくひょうをセンターに入れて回転スイッチ


「は、はぁ、そうですか……? それでは失礼し――」


「や、やはり待ってください!」


 何回呼び止めるんだ! ポンコツか!? ポンコツなのか!?


 俺、ソファから扉までの短めの距離しか歩いてないよ!? 今まさに扉に手をかけてるの見えません!? 見えないですよね! 俺の背中しか!


「な、なんでしょうか……?」


 振り返りながらアルテミスを見つめる。


 もうさ、用件あるならささっと教えてよ! その、言い淀んだ感じでお仕事終わったぁあ!、みたいな気分は味わえないんだけど!? カリストなんて見てみろ! 未だにうわ言を呟いて心ここにあらずだぞ!?


 さぁ! なんだい!?


「な、なんでも、ありませんでした……」


 ……俺、頑張ったよね? もう、いいよね? もう、ゴールして、良いよね?

 俺のゴール、ずっと目指してきたゴールはここにあるぞ! 今、手をかけているんだ!


「ごぉるぅっ……」


 俺は奇跡協会の応接室を何とか抜け出し、なぜか短距離の移動でへとへとになった体をいたわりながらクランに戻るのだった。

ネタに走りたかった( ´ ω`)後悔はしていない


でも、このネタ知ってる人には怒られそうw

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― 新着の感想 ―
何だったっけこの元ネタ…… ……(*´ω`*) ロボット物だったことは思い出しましたw ふうむ。クランはそれなりに信頼されている組織という感じなのかな? と、思いました。読みが外れ続き……調子悪い…
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