23:どうもお怒りのご様子で
「ビッグスさん、そちらの方はもしかして?」
流石にいきなり二人へ声をかけずにビッグスを間に挟んで確認する。
「『奇跡協会』のディアナ王国支部長アルテミス殿と協会認定冒険者カリスト殿だ。新規ダンジョンの件で俺達に追加で確認をされに来たらしい!」
やはり、『奇跡協会』の者か。
しかし、直接乗り込んでくるとはね。通常は下位の使いが来るか、手紙での通達で済ませたりするのみだろうが……
予想外に重く受け止められたか?
「その冒険者という肩書で呼ばれるのはやめて頂けませんか? 我々は冒険者ではなく、『奇跡協会』の騎士として仕えている。あくまでもダンジョン踏破の任もその一環なだけです」
カリストは前のめりになるようにビッグスの言葉を否定する。
ははぁ、こりゃぁ、大分『騎士』様は冒険者と一緒にされたくないようだ。
言葉は穏やかに言いながら、俺達冒険者を下に見てるのがはっきりと分かるぞ。
騎士ねぇ? やってる事は魔法使用の疑いのある者や物の取り締まり、要請に従ってダンジョン踏破に封鎖だろ?
殆ど、小間使いやってる冒険者だろうに、そこまで言われ方にこだわるかねぇ……
俺等冒険者は確かにならず者や荒くれも多いが、誇りを持ってやってる冒険者だっている。
一括りにするのはどうかと思うぞ?
カリストの言葉にビッグスが、少しだけ眉を顰め告げる。
「それは失礼した。どうも俺は協会の騎士を、冒険者と同じみたいな考え方をしちまうようでね。そんで当事者も呼んだ訳だが……俺の言い分は既に言った通りだ。ノーマ達が本来居ないはずのオークと接敵。王国、協会への王都近郊の森の異変を報告後、数日経過し『百花繚乱』による独自調査でダンジョンが発生したと情報を受けた。即座に『百花繚乱』への依頼要請で合同パーティーが動き出し、踏破した。その後、踏破済みのダンジョンに騎士が到達しただけだ。そちらでの動きなど知りもしなかった。奇跡協会からの通達が届いた時には驚いたものだ」
ビッグスが睨むようにアルテミスとカリストに答える。
アルテミスもその言葉に反応し、俺とビッグスに笑顔でありながら鋭い視線を向け、告げる。
「それを確認させて頂きたいのですよ、ビッグス殿。我々にもオーク調査と発見次第ダンジョンの封鎖要請が来たので、支部の騎士が急ぎダンジョンに向かった。だが冒険者ギルドの報告では、既に踏破済みだという。これでは情報を意図的に止め、君達がダンジョンでの悪巧みをしたのではないかと疑いたくもなるでしょう? 我々も騎士を多数動員して動いているというのに、冒険者ギルドの独自判断でそんな事が起きていたら横暴でしょう? だから何度も当事者に確認を、と告げた訳です」
笑顔を浮かべながらも鋭い視線。
それを俺にだけじっと向けると続けて言う。
「さて、ノーマ君、君にも確認したい。まず、今回の件は相当に動きが早かったようだが、この件に偽りはないかね……? 確かに手渡された資料とビッグス殿から聞いた内容に齟齬はないが――」
「ビッグスさんの言った通りですよ。俺達『百花繚乱』は独自調査で他よりも早くに依頼受注し行動した。その結果、ダンジョンへ向かうのも、踏破もそちらより早かっただけです。その時のそちらの動きがどうなっていたかなど、一介の冒険者である俺に知る由もないでしょう?」
言葉を遮って、アルテミスとカリストを見て、しっかりと言ってやった。
要するに、奇跡協会が受けた依頼を自分達の権威とメンツの為にも1から10、全て行いたかったって事だろ?
だが、どこの馬の骨か知らない俺達に先を越され、新規ダンジョン踏破という実績を横取りされたとお怒りという訳だ。
しかし、俺達の言葉も嘘ではない。
実際に協会側よりも早くに動いただけだ。叩いてもホコリなど出ようはずもない。
冒険者ギルドと依頼への示し合わせはあっても、その時の王国側単独での動きと協会側の動きはあくまでも俺の予想であり、冒険者ギルドや俺達とは分離されて動いていた件。その事で追求をした所で、何も問題などない。
そもそも、封鎖の告知がされる段階の前に動いていたからと、俺達がとやかく言われるのも可笑しい話だがな。
尚もこちらを見続けるアルテミスとカリストだったが、アルテミスが溜め息を吐き告げる。
「……では、事実であると。そうですか……それでは、今後このような事がないようにお気をつけください。万が一、こちらの動きを妨害するような事があれば、我々としても取り締まらねばならないので。今回は別件の調査もありますので、この件は終わりとしましょう。あぁ、王都の件で2度も被らない事を祈っておりますよ」
「……」
アルテミスの言葉に、カリストは尚も納得はしていないような視線を俺に向けるが、無言で黙っている。
「……今回は偶然の事です。偶然とはいつ起きるかわからないものですのでね」
ビッグスが言うが早いか、アルテミスが動き出す。
「これだけ長く確認をさせて頂き、手間を掛けましたね。冒険者ギルド長ビッグス殿、今はおりませんが副ギルド長のエリス殿に、それからノーマ君。協力に感謝申し上げる。それでは、失礼させていただきます。カリスト、協会へ戻りましょう」
「はい、支部長」
「見送りを――」
それまでの話し合いが嘘のようにさっと立ち上がると、ビッグスの見送りの言葉を待たず、聞く気もなさそうに扉を出て帰っていった。
「すまんな。どうにも『奇跡協会』は冒険者、というかダンジョンを横取りされたとお怒りで、当事者をの一点張りだったんだ。断っていたんだが、ここに来てるって話だったしな。引かねぇなら、勝手な事をされるよりも今呼んじまおうって考えた。だが、俺としても助かった。感謝する」
「いえ、これくらいであれば。しかし、彼らがここまで気にするとは思いませんでしたよ。メンツ、ですかね」
「まぁ、メンツもそうだろうが、一番は魔法という奇跡の行使に横槍が入ったのが嫌だったんだろうな。ディアナ支部はどの組織にも似たような反応を示すのさ」
俺も短時間の割に疲れたが、ビッグスは更に疲れたようだ。
同時に溜め息がついて出た。




