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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
3章 忍び寄る不穏な影

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22:冒険者ギルドの騒々しさ

 冒険者ギルドに到着し中に入ると、受付奥の職員は慌ただしそうにしている。


 これは、新規ダンジョンの件か? それとも、薬剤の件か?


 アンナの所へ向かい、声をかける。


「アンナさん、こんにちは。お忙しそうですね?」


 へにゃぁ、とした顔を見せてお疲れな顔を見せるアンナ。


「こんにちは、ノーマさん。忙しいですよー……それも立て続けに……あ、今のは、忘れて頂けますか……」


 ついうっかり、ポロッと出てしまったようにも、わざと言ったようにも見える……が真相は闇の中だな。

 だが、やはり立て続けに冒険者ギルドが間に入る事態の何かが起きている、という事だろう。


「何も聞こえておりませんでした、という事にしておいてください。それで、ギルド長に新規ダンジョンの詳細報告書と差し入れを持ってきたんですが……今って時間ありますかね?」


 左手の差し入れを掲げ、右手でバッグをぽんと叩いて見せる。


 アンナは、あ~……、と言葉が漏れ、悩ましげに苦笑を携えながら告げる。


「今、丁度ギルド長も副ギルド長も突然の来客対応中なんですよねぇ……暫くお待ち頂いた方が良いかもしれません。副ギルド長はギルド長より先にお話が終わるとは思うので、それとなくギルド長に伝えてもらえるようにしておきます」


 突然の来客中か。それもギルド長のビッグスだけではなく、副ギルド長のエリスも一緒にってのは、中々なお偉いさんってことになりそうだ。


 まぁ、それなら仕方がないか。俺の要件なんて、踏破済みですぐにでもって訳でもないし、優先順位など低くしてもらって平気だしな。一向に構わないさ。

 今日はのんびりできる日でもあるし、偶には横の酒場でゆっくりさせてもらおうかね。


「分かりました。では、暫く酒場にでも座って待ってますよ」


「すみませんね、ノーマさん。折角、来ていただいたのに、いつ終わるかも答えられないままで」


 申し訳無さそうに眉を下げて言うアンナ。


「いえいえ、そういう時もありますから」


 気にしないでくれて良いんだがな。

 どうせ、今日はもうクランの仕事も終わっているようなものだ。


 暫く、のんびりとさせてもらおうか。

 そう言えば、俺がC級になってからやっかみの声は表立ってされなくなったな。


 幾ら無能者でも、ランクで立場が変わったか。


 上位ランクになればなるほど、そこそこ性格も良くないとギルドの昇格候補の推薦すらされない。

 逆に言えば、Dまでは言葉も態度も悪い才能持ちでも簡単に上がれて、それ以上は実績を積み上げ、総合評価に重きを置かれて判断される。


 依頼達成における経過・超過日数、依頼者の評価、怪我等の人的被害、人格調査等といった物で中々に大変だ。


 だからこそ、上位ランクは難しい。


 そしてCランクに上がった無能者の俺に対して、ならず者はギルドの評価を目に見えて不満を出せず、批判などすれば他の上位ランクをも否定する事に繋がりかねない。

 上位ランク冒険者も内心はどう思っていようと目に見えて絡む事は避けるのだろう。


 少し、いや、かなり良い気分ではあるけどな。

 散々な言葉をかけられてきたからな。

 才能持ちであぐらをかき、腐った徒花に馬鹿にされても興味はないと無視をし続けてきたが、それでも必至であったが故に辛い3年間だった。


 改めて、俺の3年は間違いじゃないんだ、と思える嬉しさだ。


 にやにやする気持ちを抑えながら、酒場で軽食と果実ジュースを頼み、飲み食いしながら待機した。


 暫くするとアンナさんが声をかけてきた。


「ノーマさん、ギルド長が来てくれって言ってます。今行けます? 飲んじゃってるみたいですが……」


「あぁ、大丈夫ですよ。これは酒じゃないんで。それじゃ、そのまま2階に向かっちゃっても良いですか?」


 口をハンカチで拭い言うとアンナがほっとしたように言う。


「流石、ノーマさん! お酒じゃなくて良かった! もしお酒なら大変な事になってたかもしれませんけど。えっと、そのままギルド長室に向かっちゃって構いませんので! 早めに向かっちゃってください!」


 アンナの慌てたような見送りを受けながら階段を登りギルド長室へ向かうと、中からまだ話し合う声が聞こえてくる。


 これ、本当に入ってしまって良いのか?

 大分、白熱してそうではあるし、入るタイミング測りづらいんだが……


 迷っていても仕方がないか……いくぞ!


 少し強めに扉をゴンゴン、とノックする。


「『百花繚乱』クランリーダー、『開花』パーティーリーダーのノーマです! 入ってもよろしいでしょうか?」


 扉越しなので少し大きめに声を出し、中で白熱しているであろうビッグス達に聞こえるようにする。


「入れ」


 冒険者ギルド長――ビッグスの重低音の怒鳴り一歩手前のような声が室内からあがった。


 はぁ……少しだけ、面倒な事態が起きていそうで億劫ではあるが、致し方ない。

 俺のため、『開花』のため、『百花繚乱』のため、だ。


「失礼します!」


 室内に入ると応接用の席には、やはり誰かが座っていた。一人は白い法衣に身を包む者、一人は甲冑姿の白い騎士のような出で立ち。


 そんな二人はこちらを気にしながらも、ビッグスに対して睨み付けるかのような目線を向けている。

 どうにも険悪な雰囲気だな……


 まずはこの二人が誰であるかの確認から必要だろうな。

 まぁ、だが……白い法衣に身を包む女性に白い甲冑姿の女性だ。この出で立ちの組み合わせはそう多くないから、恐らくは予想通りだろう。

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― 新着の感想 ―
Cランクになるまでに色々言われてたんですね。 あれかなぁ? 3浪人生活していたのに、東大へ合格して誰も文句を言えなくなったイメージ? 白い法衣の女性……(ゴクリ)……あ、全然関係ないんですけどナースさ…
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