2:才能の開花なんて俺にはなかった
説明話に近いので、流し読みしても問題ないように今後、話は作っていく予定です(´・ω・`)
なので、「こんな感じの世界なんだな」、「こんな感じで呼ばれてるんだな」と知りたいと考えた方はしっかりと読んでください( ´ ω`)
この世界では才能の開花が10歳〜15歳に起きるとされている。
才能開花しない者もいるが、今後の生き方が左右されると言っても、過言でない。
その者に向いた職業が選ばれるとされ、才能による適正があれば、相応の地位に就けるとされている。
人族、獣人族、耳長人族などの区分は限定的である。
種族毎に成りやすい才能や成長度合いの差もあるにはある。
だが、才能の有無による違いは、種族間の差を凌ぐほど、溝は大きく深い。
才能なく、特定の職に就く者もいるが、差が縮まる事はない。
アイデア等は影響を受けない為、そういった方向で努力をすれば、差が埋まるとはいえる。無能者――凡人の素の技術と魔力量では絶対に届かないだろうが……
そんな大陸には文明が起きては消えを繰り返し、東西南北に4大国ある。
東にディアナ王国、西にアマテア皇国、南にノルズ王国、北にホーラル共和国。
俺達が育ったのはディアナ王国の北に位置した辺鄙なナモナキ村だ。
今尚、国毎に別々とはいえ、神が信仰され続けているのも、ダンジョンと魔物、10歳~15歳の才能開花という、不可思議な現象の為だろう。
正に神のみぞ知る世界だ。
当時の俺達は村で剣士ごっこや鬼ごっこといった遊びをしながら、子どもながらの訓練もしたりして、将来は冒険者になって、『伝説龍の巣』、という英雄譚で謳われる、Sランクに皆でなろうと言っていた。
彼女達は、有能な才能開花を10歳の誕生日を迎えると同時に、果たしていった。
ガウルは剣士。
膂力に優れ、魔術は使えなくとも、魔力による剣技で地を抉り、空穿つ。
ノインは魔術師。
魔力特化でメインに攻撃魔術、サブで支援魔術を扱う。
アリアは盗賊。
素早く動き、探知に優れた、探索と戦術の要。気配探知、魔力探知、罠回避と役は多い。
イリアは聖騎士。
全体的に高水準で、前衛と支援の両立ができる。
万能な才能。
ユリアは弓使い。
属性付きの矢で、後衛から高精度の支援火力を担う。
魔術の方が威力は上であるが、遠距離からの攻撃の場合、大きく威力が減衰する魔術よりも弓の方が良い。
クロエは錬金術師
身体能力は控えめだが、薬品やゴーレムなど幅広い生成が可能。
ダンジョンで何か困れば錬金術師の薬品が役立つ場面が多い。
ガウルと同じ系統でも良い。前衛で剣を振るい戦うのも格好良い。
ノインと同じ系統でも良い。元々の動きの素早さを活かして、中衛で動いて戦っても良い。魔術剣士であれば問題もないだろう。
アリアと同じ系統でも……、イリアと同じ系統でも……
そんな同年代の彼女達の目覚ましい才能開花を見ながら、俺も何が開花するかと夢を描いた。
そうやって、夢を描き続け……
5歳離れたユリアとクロエが10歳で才能開花した。村の皆は、彼女達の才能開花に大喜びをし、宴会が開かれた。
宴会を耐え切れず、自宅で蹲って泣いた。
俺は、15歳の誕生日を過ぎても開花しなかったからだ。
彼女達の才能開花は嬉しく思っていても、俺だけ、俺だけが、何も持たなかった。
せめて生産系でも良かったのに。よりによって、何も持たない。
そういう人を馬鹿にし、無能者と呼ぶらしい。
所謂、凡人だ。
凡人だからと全て劣る訳ではないが、戦闘においては適性持ちが圧倒的に優位だ。成長の上限値も大人と子ども以上に変わってくる。
だが夢を捨てられず、俺は無謀にも彼女達と共に15歳で冒険者になった。いや、なってしまった、と言うべきか……
結果、17歳で早々に成長が止まり出し、彼女達と冒険に行く事は難しくなった。戦闘の余波に巻き込まれ、逃げ遅れかねない危険すらあった。
その頃には皆、B〜Cランク。
俺自身はDランク止まりだ。
俺は邪魔しない様に眺め、戦闘後は褒め、「次はこうすれば良いかも」、と批評を告げるだけだった。
F~Sランクまでの階級で言えば初心者を抜け、中堅手前がDランク。
それも幼馴染に助けられての実績D評価。
口さがない冒険者にアブラムシだ、害虫だ、と罵られた。
パーティーランクは俺抜きでB評価。
俺が加わると、Cに届かない、D評価だった。
これでは野次も否定できない。
凡人――無能者はそれだけ劣る。
頭脳やアイデアは凡人でも可能だ。だが、それを無理なく実行する技量には、手が届かない。
そういう世界だから、仕方がないと諦めた。
それならばクランを作り、皆をサポートする側に回ろうと考えるようになっていた。
18歳のCランクダンジョンで決めた。
もうダンジョンでは彼女達の力になれないと、彼女達の戦闘で理解させられた。
一念発起で、伸び代のありそうな他パーティーを誘い、クラン創設をした。
クラン名は『百花繚乱』。
彼女達――幼馴染には、その美しさから花の異名が付けられたからだ。
ガウルは彼岸花。
跳ねっ気のある赤のショートパーマが、情熱的な彼女にぴったりだ。
ノインは紫陽花。
膨大な魔力による後天的な変化で、髪は光と角度によって色を変える。
黒にも青にも紫にも、陽の光を浴びれば、淡いピンクにも見える、そのストレートロングは、まるで魔力の流れを映す万華鏡のようだった。
アリアは芍薬。
前髪は白、後ろ髪は薄ピンク、サイドはオレンジのミディアムポニーテール。華やかさと軽やかさを併せ持つ。
イリアは牡丹。
牡丹色――薄い赤紫に白のメッシュを入れたストレートヘアは、気品と柔らかさを演出していた。
ユリアは百合。
黄とオレンジの髪をツインテールにまとめた姿は、純粋さの中にどこか儚さを感じさせる。
クロエは星薊。
青紫系のぼさっとしたロングヘアに眼鏡。知的で無防備なその見た目は、まさに彼女らしい。
彼女達を呼ぶ時は六花だ。
そして、俺はそこには居ない。
むしろ、良かったのかもしれない。
俺はもう、冒険ではお荷物だ。更に、指揮も批評も彼女達には必要なくなった。
兄のように慕っていた彼女達も、俺の手から離れ、しっかりと地に根付き、花が咲いたという事だろう。
俺は裏方で支える段階になっただけ。
悔しいけれど、昔に憧れた英雄譚の主人公にはなれない。この夢は彼女達に託す。
裏方で彼女達やクラン所属パーティー達を支えた男として生きる。それで満足できる。凡人の俺には、それだけでも、過分な報酬……なんだ……
だから今日も、クラン運営に奔走する。余計な事を考えず、ひたすらに。
今ではダンジョンも軽いF〜Eに一人で潜るだけ。
彼女達はランクを一つ上げ、B~Cランクとなった。
クラン創設前のCランクダンジョンで、違いを痛感した。見上げるだけの高見だと理解できた。
今の彼女達が挑む、B級ダンジョンなど、即死の可能性があるだろう。
そんな彼女達のクラン長であり、パーティーリーダー。
今では一緒に冒険しない平凡な男、それが俺だった。