19:『開花』によるC級昇格の祝賀会
俺達は混雑する前にと言う事で、贔屓の客として酒場の一角に移動させて貰う事になった。
席に移動すると、杯を掲げてアリア口火を切る。
「それじゃ、まずは……せーのっ!!!」
「ノーマ、やったな! これでオレ等ともまたダンジョン行けるだろ!」
「ノーマさん、おめでとうございます。ガウルさんとアリア姉さんが大変でした。また一緒に苦労を分かち合いましょう」
「ノー兄、Cランク昇格おめでとー! また一緒に冒険でしょ!」
「お兄ちゃん! おめでとう! わたしたちと同じCランクなんて凄いよ! やっぱりお兄ちゃんは凄い!」
「お兄さん、また一緒のランクですね? お手柔らかにお願いしますね?」
「ありがとう、みんな!」
口々におめでとうと祝われる。
少し前の話だが、誰からも特に祝われた記憶がなくて、俺自身しか喜んでいなかったはずなんだけどな……ローズ達ですら何も言わなかったから、「あっ、そうですか」くらいの感覚で見られてるもんだとばかり……
酒を飲みながら、数日前まで少しだけ寂しい思いをしていた事を思い出していた。
そんな俺の顔を見て気付いたのであろうウィンリィが言う。
「皆、六花――彼女達に配慮してたんだよ。流石に、一番最初に祝うのは、ノーマの所属である『開花』じゃなきゃダメでしょ? だから示し合わせていたんだ。まぁ、最初はインフィオとローズの配慮から始まった感じだけどね? 改めて、C級昇格おめでとう! 『開花』以外ではボクが初めての人、だね? ふふ!」
ウィンリィが酔った顔で近付いてくると、間にガウルが頭を突っ込んだ。
「オレもうずうずしながらガマンしてたんだぞ! えらいだろ? ほめろよ~!!」
ガウルが頭をこすりつけてくるのを肩を組んで頭を撫でてやる。
「そうか……よーしよしよし……それで皆、何も言わずに。よーしよし……!」
「むー……ボクの……ちぇっ!」
「ノー兄に勝手に話さないようにガウルさんを抑えておくの大変でしたよ」
ガウルはその言葉でしかめ面をする。
「別に、誰が先に言ったって良いだろー? でもダメっていうんだからさー!」
「ノーマ君に一人抜け駆けなんてダメに決まってるでしょうが! ガウルはいつもそうやって1番を持ってくんだから!」
「そ、そうです! お兄ちゃんにそうやっていつまでも甘えているの! ガウルさんはズルいです!」
ガウルの言葉にアリアとクロエが強く言う。
「え、えぇ!? なんでオレだけ! べつにアリアだって似たようなもんだろ!」
「もぉ!! アリア姉さんもガウルさんも! どっちも甘えてるくせに何言ってるんですか! 二人とも21歳の癖に!」
「何をー! まだ小娘の癖に! 16歳が大人に何を言ってるんですかー?」
年齢によるマウント合戦が始まってしまった。
だが、騒がしいけれど、昔からこうだった。
幼馴染同士の気の置けない仲というものは、大分雑なやり取りをしてもそうそう壊れない絆だ。
マウント合戦に終止符を打つか、とクロエに手招きをする。
「ははは! なんだ、クロエは甘えたいのか? ほら、おいで」
皆の声を聴きながら、酒をバカバカと飲んでいき、嬉しさで酔いも大分回ってきていた俺はクロエに手を出して言う。
宙に浮いている俺の手におずおずと頭を差し出すクロエをわしゃわしゃしてやる。
「ははは、最近は甘えなくなって来たと思っていたけれど! なんだまだまだお兄ちゃん離れできないか? ん~?」
「あ、頭を撫でられるのは気持ちが良いんです! それにまだわたしは成人を迎えたばかりですから!」
「あー! ずっこい! ずっこいやつだ!」
アリアが叫び、ガウルが突撃し、イリアは静かにお酌をしてきて、ノインとユリアがバタバタと。
ふと、アルメリアとフリュウの声が聞こえないと思ったら、端っこでちびちびと飲んでいた。
「お、お前ら、ちょっと静かにして聞いてくれ! 今日、思いがけず集まった『開花』に紹介したい。この二人が新たな蕾だよ。アルメリア、フリュウ、挨拶してくれ」
「え、えぇ!? い、いきなりですか!? ど、どうしよ!?」
「あ、あぅ……」
いきなり声をかけられて慌てだす二人。
「この子達が新しい蕾ー? アタシはノーマ君が正しいって思ってるけどー……ふーん?」
「なんだ? 気になるか?」
「どうもパッとしないっていうか? これ位なら其処ら辺にいる訓練生と変わらないんじゃない?」
そうか、アリアはまだ二人の戦闘を見ていないもんな。
だが、アリアの洞察力なら2人の実力に気付きそうなもんだが、自分が強くなってきて下位ランク冒険者の力が判断つかなくなってる可能性もあり得るか。
だが、それもいつまで判断つかないままかな?
意外とすぐかもしれないぞ?
「ははは、アリアは手厳しいな! でも、舐めてかかってると、食われるかもしれないぞ? 『開花』がいくら俺の最高の批評作品だとしても、それは今現時点での話だ。あぐらをかいていたら……」
「やだなぁ! こんな小娘に負ける程さぼる訳ないじゃん! 絶対に……追いつかせないから」
アリアは目に力を入れ、途中から笑顔の消えた目でアルメリアとフリュウを見た。
「ひぃい!?」
「ひぅ……!?」
アリア……やめてやれって。
全く、昔と変わらず今も俺の批評を受けた六花以外の奴にはこんな感じで噛みつくとは、な。
花扇を誘うのですら、最初は嫌そうだったくらいだし。
今は実力も認めて噛みつかず仲良くなってるけど、今後も俺の見出した蕾は増えるかもしれないんだぞ? 六花、花扇以外には嫌なのかもしれないが、これは俺達の為でもある。我慢してくれ。
それに……この二人、恐怖を感じると漏らすかもしれないから、そろそろやめてあげて。本当に……
「怖がらせるなって。そういう訳で、仲良くで、よろしく頼むよ?」
「うーん……そっか。じゃぁ、分かった。ノーマ君期待の蕾ちゃん。よろしくね?」
俺の言葉にやっと顔に表情を戻してくれた。
まぁ、アリアの執着心のような感情が、二人にも良い刺激に成ればいいんだが。
「は、ははは、はいぃいい! アルメリアともうしましゅ!」
「ふ、フリュウぅう……ですぅう!!」
「もー! アリア姉さん! 怖がらせちゃダメでしょ! よろしくね? 年近いでしょ? あたしとクロエは16歳だよ」
「お、同い年! え、16歳でCランク!?」
「え、えぇ!?」
「正確にはCランクはもうちょい前だけどね! そっかそっか! 同い年なら仲良くしよっか! ほら、クロエもいつまで撫でられたままなのさ!」
「わわわ!? も、もう、ユリアちゃん!」
引きはがされる時のクロエの顔が、中々面白かった。
ぷっ、くく……
「あぁ~! お兄ちゃん! 酷いよ! 笑うなんて!」
「ノー兄ー、ガウルさんがー!」
飲み会はわちゃわちゃしながら時間が過ぎていくのであった。
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