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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
2章 蕾と花の指揮の違い

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18:ダンジョンからの帰宅と帰還

 帰りの道、アルメリアとフリュウは黙ったままだった。


 流石に、あれは衝撃的だったか?

 俺もついつい興が乗ってしまったしな。


「どうだった。あれが上位ランクの冒険者だ。見ていると楽しいし、わくわくしてくるだろ?」


 振り返り二人を見ると、少しだけ怖そうだった。


「あれを、楽しいって感覚に、まだなれそうにないです」


「う、うん……」


「そうか……まぁ、ゆくゆくはお前等もそうなるんだ。その内に自分がそう思われるって認識しておけ。才能持ちの中でもお前らは同年代から突出しているだろうからな」


「成れるかな?」


 俺の言葉に未来への期待から嬉しそうな声を出しながら、不安もありそうな顔で見てくるアルメリア。

 横のフリュウも同じような目を向けていた。


「成る。と言うよりもして見せる。お前らには経験がないだろうが、誰かが徒花と見捨てた花が幾つもあった。それを俺は開花させる為に支援してきた。それが巡り巡って実となり俺にくる。だから、腐らなければいい。腐りさえしなければ、お前らはまだつぼみ。きっと綺麗な花を咲かせる」


 安心させるようにしっかりと二人を見て言ってやる。


 ガウルですら満足したからか、空気を読んでか、王都に到着するまで静かにしていた。


 報告は俺とアルメリア、フリュウで行う事にして、酒場――琥珀の雫こはくのしずくで落ち合う事を決めた。


 ギルドに到着し、アンナの受付へ向かう。


「アンナさん、今、良いかな?」


「えぇ!? は、早くないですか? よ、夜中ですけど、もう帰ってきたって事は何か不測の事態が起きたんですか!?」


 今日ダンジョンに出て、当日帰ってくるとは思わなかったのだろう。

 慌てて俺の顔を見ながら矢継ぎ早に言われる。


「い、いや、そうではなくてね。1方向型ダンジョンだったから迷う事無く、スムーズに踏破してきたんだ。予想よりもオークの数も少なくてね。ダンジョンのボス部屋はオークナイトだったし」


「そ、そうですか……それで、オークナイトはどなたが? 流石にノーマさんとこのお二人では厳しいですよね?」


「あぁ、それに関しては俺達じゃない。外部指導員のガウル、ノイン、ウィンリイの3人に任せちゃったよ」


 笑いながら言うと後ろの二人から声が上がる。


「ノーマさんの指揮で、あっという間に!」


「す、凄かったです!」


 二人の言葉に苦笑しながら、アンナに言う。


「あの3人の実力が凄かったんです。俺の指揮があってもなくても、瞬殺でしたよ、きっとね。それで、踏破が無事に終わったので報告と魔石、討伐証明の提出に来ました。ボス以外に関してはこの二人が倒したので、オーク討伐の実績はこの二人にお願いします」


「わ、分かりました! ギルド長にダンジョン踏破の件をお伝えしてまいります! 少々お待ちください!」


 そういうとアンナは受付を出て階段を上がっていった。


「さて、ギルド長には早めの対応で喜んでもらえるかもな。良かったな。これで評価値もググっと上がっていくはずさ。今回の新規ダンジョンの時短踏破に加えて、もう2、3件くらい実績を積んでおけば、無事にD級昇格だろう。スピード昇格だな!」


「い、良いんでしょうか……なんかF級からE級昇格はスムーズに行くのも分かるんですけど……もう少しD級は時間かかると考えていたのに」


「そう、だね。この間E級になったばかりだもんね」


 俺の言葉に悩ましそうな声を上げる二人。


 だが、お前らがE級に残っていたらそれこそ大問題だ。

 オーク数体同時の討伐実績は、才能持ちの中でも安定している者にしかできない。

 それに今回は森の中、洞窟と環境の違う2種類での戦闘経験も積んだ。

 ボスの討伐は行えていないが、それを抜きにしても、俺が詳細な報告書を提出すればギルドも気付くはずだ。


 E級ではなくD級にするべきだと、な。

 有能な冒険者は下位の階級を短期間でどんどんと超えていく。


 今はまだ実感がわかないのだろう。

 訓練生としても幾日、ダンジョン踏破を含めても1週間そこら。

 こんな程度で自分達が、と。だが、違う。お前らは成長の伸びが良いのだと、後で気付くはずだ。


 それこそ、最初の訓練生との魔力の練りから違いが出ていたくらいに。

 だが、今日はほめてばかりだ。天狗になられても困るから少し喝を入れるとするか。


「お前ら、D級から上は、今のままじゃそうそう上がれないと思えよ! 花扇ですら、D級からC級昇格は時間がかかったんだからな! 覚悟していけ!」


 そう、俺と知り合うまでの花扇は、な?

 そんな事実を胸に秘め、二人の気を引き締めた顔を見ながら、アンナが戻るのを待った。


 しばらくするとアンナが戻ってきて告げた。


「『迅速な踏破完了と報告、感謝する。今は手が離せないから後日に詳細な報告書を渡しに来たらギルド長室に来てくれ』、との言付けを受けました。ノーマさん、問題ないですかね?」


 少しだけ困ったような顔をしているアンナ。


 あ~……もしかして、これは……ギルド長、今相当、忙しいか? 俺達が情報公開前に速攻で依頼受注したから無理させちゃったかもしれないな……


 ダンジョンの踏破は『奇跡協会』専属ハンターがやる事が裏でほぼ決まりかけていたのを知らない体で俺らに優先したのかもしれない。


 今度、何か良い匂いのする花のグッズとコーヒーでも差し入れしてあげようかな……


「わかった。また今度、報告書持ってくるがてら、差し入れも持ってくって伝えといて。それじゃ、お疲れ様、アンナさん」


「はい、お疲れ様でした! あ、魔石と討伐証明は依頼書と一緒に忘れずにカウンターに持って行ってくださいね!」


「ははは! 幾ら久しぶりの依頼だからって忘れてないよ!」


 そう言ってアンナに挨拶をした後に、買取カウンターで魔石と討伐証明を提出し代金を受け取ってギルドを後にした。


 さぁ、昨日の今日でまた飲みだな!

 昨日が決起集会なら、今日はお疲れ様会だな!


 飲むぞ!食うぞ!


「二人とも、琥珀の雫に向かうぞ! 今日は飲んで食って! 騒げ!」


「「はい!」」


「昨日見たいのは無しで頼むな」


「うぐっ!?」

「う、うぅ……」


「ははは!」


 そうして俺達は皆が待っている酒場に向かった。


 琥珀の雫に到着すると、入口から既に大分騒がしかった。

 理由はすぐに分かった。

 久しぶりに顔を見る花達――彼女達が俺を見つけて声をかけてくる。


「あ、ノーマ君じゃん! やっときたー!」


 真っ先に気づき、天真爛漫に声をかけたのはピチ、スラっとした服に身を包んだ盗賊アリア。


「ノーマさん、お疲れ様です。お体、痛い所などございませんか?」


 静かに、けれど愛情深く世話焼きな一見するとただのメイドの聖騎士イリア。


「お兄ちゃん! 久しぶりです! 久しぶりのお兄ちゃんだ!」


 気が高ぶってお兄ちゃん呼びのダボっとした服に身を包む犬耳メガネの錬金術師クロエ。


「お兄さん、こっちも無事に戻ってきたよ。そっちはどうだったかな?」


 落ち着いた様子で言うけれど、嬉しそうな顔を垣間見せる女の子らしい服装な弓使いユリア。


「おっし! アリア、オレと飲み比べだ! ダンジョンに残って訓練してきたんだろう! オレよりもつよくなってんだろうなぁ!?」


 既に結構な量を飲んだのだろう事が分かるパンツルックな剣士ガウル。


「が、ガウルさん! 絡み酒になってますから! ノー兄、止めてください! ガウルさんが!」


 そんなガウルを必死に止めようとして俺を呼ぶ魔女服を着こなした魔術師ノイン。


「ははは、一気に大所帯だね。これはもう、ダンジョン踏破のお祝い会っていうか、『開花』が戻った出迎え会だね! ノーマ、どうしよっか? ボクは構わないけど、流石に詰めるのはきついし、席増やしてもらうしかないよね?」


 ウィンリイの言葉を聞いていながら、内容を理解していなかった。

 全員が揃うのはだいぶ久しぶりだから、俺も興奮しているのだろう。


 王都に俺の『開花』が戻ってきていた。

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― 新着の感想 ―
ん? 開花のメンバーが揃ったのなら選手交代なのかな? ゲロインズにもようやく慣れてきたところですけど、何だか毎日飲んでいるようなイメージですし、そろそろ彼女たちにはダイエットという名の地獄を味わって貰…
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