16:ダンジョン当日
翌日の朝、王都の門にて集合をした俺達。
昨日は準備を終えて、酒場で飲んでお開きとしたが、最後が何とも締まらない終わり方をしてたからな。
無事に元気な顔で来られたようで安心したよ、全く……
軽く、パーティーの連携について話しながら歩くとしよう。
「よし、向かいながらパーティーの連携の事についてだ。アルメリア、フリュウ、理解できてるか確認させてくれ。このパーティーでお前らのする事はなんだ?」
アルメリアとフリュウは考えるように、あごに手を当てる。
しばらくするとフリュウから声が上がる。
「アルメリアちゃんが前衛として敵の注意を引き付け、私が後衛として魔物の動きを観察しながら魔術で攻撃を行います。パーティーの仲間と射線は被らないように意識しつつ、前衛が気付けない死角も見ておく、とかでしょうか?」
フリュウが初めてアルメリアの前に発言をしているな。
良い傾向だ。
いつまでも自分の意思を発信できないと、緊急性がある時にパーティー間での報告、連絡、相談のホウレンソウが遅れる。冒険者でなければそこまでの積極性は必要はないかもしれないが、生死に直結した職業だからこそ、最も重要だ。
「前衛に関しては模範解答に近いがしっかりと後衛についての動きは考えているな。良いぞ。アルメリアはどうだ?」
悩んだ姿勢のまま発言しないアルメリアに問いかけると、たどたどしいながら答える。
「うーん……魔物の強さの把握、それに地形……? ダンジョンの場合は罠も気にしないと。でも狭い空間での戦闘時はそんな事も言っていられないし……分かんないかも」
良いぞ。無鉄砲に解答するだけが賢さじゃない。
こいつらは学園での生活で問題に対しての解答が染み付いているからな。
考えて答えを導こうとする思考があるかないかは大きい。
「それで良い。今時点で何も考えもなく、ただ闇雲にダンジョン行きますって回答をしないだけ優秀だ。狭い空間での戦闘で破れかぶれで勝ちました。その結果が損傷が激しく撤退なんて事になりかねないからな」
二人を見回して続けていう。
「前衛と後衛の立ち位置は距離がある分、見える位置見えない位置の差が大きい。そして前衛は後衛との声掛けで位置を把握する癖を、後衛は全体を俯瞰して見る癖をつけろ。盗賊がいる場合は最悪任せても良いが、自分でも意識しているのとしていないのでは、その後の動きがワンテンポ以上も違うからな」
けれど、冒険者はそれだけではいけない。
生き残る為の思考が最善だという事を伝えてやらなければならないな。
「だが、アルメリアも言っていたが、魔物の強さの把握。これが最も難しく、そして最も生死を左右する。余裕がある敵に出会えば、普段と変わらずに思考することができるだろう。だが、お前らが出会ったオークのように、突発的な強敵と出会う可能性はゼロではない。その時に、冷静に魔物を把握し、撤退か戦闘かを瞬時に決めるんだ。足がすくむなんてあってはならない! 撤退であれば、どこでやり過ごすか、それとも一直線に脱兎の如くの撤退か。戦闘なら横やりが入らないか、十分な戦闘場所の確保と地形の利用が可能であるか。これ以外にも取れる選択はある。それらを瞬時に選択し続けろ!」
俺は二人を力強く見て言ってやる。
これをできなければ、お前らは成長しない。
これができなければその先は……
「出来なければ上位ダンジョンランクでは、即座に死ぬ。冒険者で上を目指すなら希望を捨て、事実を見ろ。甘えるな。今の最善を選択し続けろ!」
「「はい!」」
二人の強いまなざしと元気な返事を聞き、満足して頷いてやる。
その様子を見ていたガウルが言う。
「ノーマが居る内は平気だろ。オレも散々やらかしてきたけど、ノーマのお陰で身に付いたし」
横目でガウルを見る。
まぁ、ガウルは無鉄砲に突っ込む癖があったからな。
だが、俺は何度も言って覚えこませた。各注意点が身に付いたのは、ガウルがしっかりと俺の言葉に頭を悩ませながら覚えた結果だ。だからこそ、ここまで無意識で意識せずに、この森も進めている。
ガウルは、気を抜きながらも気を抜かないという難しい事を自然体で行っているのだから。
「俺はあくまでも、その時にサポートしてガウルの動きを批評していたに過ぎない。俺の手が届く範囲なんて、たかが知れているからな。だから手の届く内は支援できても、その後に身に付いているかはガウル次第だ。俺ではなくガウルが努力した結果だよ」
「まじ!? じゃぁ、ほめろ! ほめろ!」
「わかったわかった!」
差し出された頭を撫でてやる。
昔から甘えん坊だなぁ……
おっと、いかん。そろそろオークと遭遇した空地じゃないか……
「じゃれるのは良いけれど、そろそろ空地でしょ? ほら、ガウルさん。ノー兄から離れて!」
ノインに引っぺがされたガウルはまだ頭を撫でて欲しそうだったが、思考を切り替えたのだろう。
集中をする時の癖で、ぺろっと上唇を舐める。
「じゃぁ、ボク達は軽くしか戦闘参加しないからね。あくまでも指導員として同行するよ。注意してね、二人とも。横やりが入ったら本気でボク達も対応するけど、それに慣れちゃダメだからね」
ウィンリイの言葉に、アルメリアとフリュウが緊張する呼吸をなんとか整えながら頷く。
まぁ、先日襲われたばかりだ。
すぐに出来るようになれとは言わない。だが、この先を目指すなら慣れるしかない。
二人の緊張をほぐす為に伝えてやるか。
「冒険者の中でも若手代表みたいな奴らが後ろに控えているなんて、中々ない事だからな? 胸を借りて、最初のうちは失敗してもいいから緊張しすぎるな。死の恐怖なんてのは慣れちゃいけないが、恐れすぎてもいけないからな。踏破中に克服していけ。焦るなよ」
そう言って、俺が先行して空き地を抜けた先を静かに歩き出すと、二人も後ろを付いてくる。
しばらく進んだ先に、確かにオーク達が呑気に日光浴でもしているかのように闊歩していた。
まずはダンジョンに入る前の小手調べ。
手前に散歩しているオーク達を間引いていかないとだな!




