11:新たな蕾の加入先検討
訓練場の二人を受付の者に任せて、クラン室の応接用ソファに腰掛ける。
周りには『花扇』の『雨上がりの虹』アイシャ、『踏みしめる大地』グレイ、『陽光注ぐ草原』サニア、『風運ぶ音色』ウィンリィ、『見晴らす丘』ヒルダ、『月浮かぶ湖面』レイク。
各パーティーリーダーが集まっている。
「それじゃ、今後の話をしようか。加入先は確定ではなく、内定って感じだけどね」
皆の顔を見回して言うと、『百花繚乱』の新人加入に悩まし気な顔をしているのが見て取れる。
まぁ、その気持ちも分かるけどね。
俺自ら、蕾を引き上げるのなんて、何年振りだ?
一人は調査部に行っちゃったけどさ……
「皆、そう難しく考えないで欲しい。彼女達は才能開花にあぐらをかかない、久々の実を結ぶ花だと思う!」
「ノーマがそういうのならって思うんが、今の俺達には厳しいな。すまない」
グレイが申し訳なさそうに言うが、安心してくれ。
君達は落ち着いたばかりだ。今、入れてはいけない事は分かっているよ。
「あぁ、『踏みしめる大地』には厳しいかもね。今、伸び盛りのローリーに合わせ始めた君達の連携を崩すのは得策じゃない。毒花になりかねない」
「じゃぁ、俺らが受け入れるか? 私達は安定しているからな」
「いや、『月浮かぶ湖面』だと伸び盛りのアルメリアとフリュウの伸びも緩やかになるかもしれない。できれば、今なお大きく成長してる『雨上がりの虹』、『風運ぶ音色』、『陽光注ぐ草原』にお願いしたいと思ってる。女パーティーだから冒険者なり立てでも気張らず、かつ剣士と魔術師の補充も兼ねてな」
「女のみって話なら、アタイ等もそうだろう? なんで候補にないんだ?」
ヒルダが俺の発言に突っかかる。
女だけじゃねぇだろ……この説明するとヒルダと揉めそうで色々と嫌なんだよなぁ。
ただ、『見晴らす丘』に入っても上手くいくとは思えないからな……
独特なパーティーだから、新規加入させるのも独特な奴になりそうだし。
「女だけじゃねぇだろ……? 少なくともクルルはウルルの兄で男だろうが。ライティは男と風呂に入った事ないし、明言しないから知らないけどさ…… 女の格好でも男だ!」
「はぁ!? 少なくとも心は女だろうが! 何いちゃもんつけてんだ!」
「お前のその性格もよくないんだよ! 強すぎたらあいつら萎縮しちゃいそうなんだよ! お前、男勝りだから……納得してくれよ!」
「ヒルダ、やめろって。実際、男が女の格好してるからって話して新人に通じるか? 流石に戸惑うだろ……?」
レイクがヒルダに声をかけると、ヒルダは一度落ち着き、考え出す。
「う、う~ん……そうかぁ? アタイは別に、『そうか!』で済ませられると思うんだけどなぁ?」
「流石に、無理じゃないかなぁ? 私も結構驚いた記憶あるし……」
アイシャの言葉がトドメとなり、ヒルダも諦める。
「わかったよ! アタイらは今回だめだって事が! 全く……男の癖に、しみったれた事を……!」
これは男、女の問題だから、しみったれた事を言ってるんだよ、ヒルダ?
これだから、鬼醜草――紫苑、なんて呼ばれるんだぞ。
見た目は良いのに、性格が強すぎるんだよ……
そんなんじゃ、嫁の貰い手がみつから、
「あぁん? どういう目で見てんだ?」
あぁ、綺麗だなぁ。紫苑、うん。綺麗な花だなぁ。ははははは。
「ノーマは目で語るのやめた方がいいと思うな。そういうの女性には気付かれてるよ?」
うっそだろ!? アイシャまで俺を非難するの!?
何も言ってませんけど!?
女性陣からの視線が痛い、痛い!
おい、男衆! なに、関係ありませんよって面してるんだよ! お前らだって!!
「ほぉ、ノーマ……覚悟できてるんだろうね? 今もそんな目を向けてきやがって!!」
「な、なんも言ってないだろぉおおおお!!!」
ヒルダに追いかけまわされるも才能を使用されてアッサリと掴まり、床にうつぶせになった俺の上にヒルダが乗ったままで議論が再開される。
おかしいだろ、おい。
男衆!
目を背けてるんじゃねぇ!!!
「う~ん、ボクが入れてあげようか? 『風運ぶ音色』はバランス良く剣士と魔術師、盗賊の構成だし、様子を見ながら彼女達を支援もできると思うからさ」
ウィンリィが名乗りを上げてくれた。
『風運ぶ音色』ならアルメリアとフリュウにとっても動きやすいパーティーになるだろう。
時々は俺も見てやれば、ウィンリィ達が気付かないところも指摘できるだろうし。
「い、良いん、じゃない、か? ウィンリィに、今後、任せる、と思う、から……うぐっ……その、つもり、で」
「苦しそうにしてどうした? ん? アタイなんかが乗ったって軽いだろ? 軽いって言いな?」
「か、軽い、よ……ヒルダ、は……お、重い訳、ないじゃないか……あ、愛を、感じる、なぁ……!!!」
「やだねぇ! 愛を感じるだなんて! 隙あらば口説いてきちゃって! アタイが軽いのなんて分かりきってる事だろう?」
その言葉で機嫌を良くしたヒルダがやっと退いてくれた。
やめろ、潰された格好のままの俺の尻を撫でるな!!
パーティー加入先を決めるだけで、なんでこんなに一苦労なんだよ……
でも、これで準備はできたな。
あとは二人のランク上げ、か。
これは俺も少し出張る必要あるか?
Eランク冒険者ならDランクダンジョンも潜れるしな。
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