表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
9章 機械の花を花と呼べるか、咲けるのか?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/139

100:機械仕掛けの花は英雄の夢を見るか?

 早朝の鍛錬たんれんを終え、クラン長室で作業に没頭ぼっとうする。

 未だに俺は冒険者活動の休止を命じられたままだ。

 これ以外にする事が無い、とも言えた。


 部屋の扉が、コンコンコンッ、とノックされる。


 ローズかな?


「どうぞ、入って」


 扉が開かれ、姿を現したのは予想通りローズ。静かに扉を閉めると、こちらに向かって近付いてくる。


 身だしなみをととのえた姿。俺なんかとは違い、眠そうな目で仕事はしない。


「おはよう、ローズ。朝からどうしたの? まだ始業時間じゃないけど」


「おはようございます、ノーマさん。今日は早くクランに来ようと思っただけですよ」


 そう言ったローズの顔は柔らかな笑み。


 ……これは、今日は鍛錬の後に業務をそのまま始める事を予想してたな?

 昨日時点で残っていた書類の量から、俺がどの程度の作業量で処理していくかを目算したんだろう。


「それで……なんの用事? まだローズに戻す書類はないけど」


「そうでした。こちら、冒険者ギルドからの速達便そくたつびんです。届けに来たギルド職員は、何も言っておりませんでした」


 ギルドからの速達便。

 送られてくる理由はいくつか候補にがるが……俺の冒険者活動に関しての続報。もしくは冒険者ランクの昇格者についての試験もあり得る。


 ただ昇格の話の際は、大体インフィオが真っ先にしらせに来たりするからな。俺の時は何も言わなかったが。


 と言う事で、俺の件かな?


 郵便の口を開き、中の書類を確認する。


「……ん~、やっぱり俺の活動休止の件での相談会って感じだな」


「活動休止の件ですか! 良かったですね、ノーマさん! 最近は鍛錬たんれんの量が増え続けて――あっ」


 ローズはついうっかりと言った様子で口に手を当て、困ったような眼差まなざしで俺の顔を見て固まる。


「……その、これは」


 ……なんでローズが俺の鍛錬の量が増えてるって知ってるんだ。いや、少し考えれば分かる。インフィオだ。アイツなら俺に気付かれる事なく訓練場ものぞけるだろう……


 まぁ、完璧かんぺきに秘密にしたかった訳でもないが……流石に、覗き見されてたのは……ずかしい。

 ひとごとしてたりするからなぁ……


「あ~……なんだ。インフィオが見てたんだろ。別に怒る事じゃないから気にしないでくれ」


 そして、活動休止の件だが……これも嬉しい、けど今じゃなくても良かったのに、と言う感想だ。


 丁度良いから、新しい訓練法や『花扇』の連携を見て、詳細に資料に残そうかと思っていた。


 活動再開となったら、新たなつぼみとの同行時間にてる必要もあるしな……あれからほとんど『花扇』に任せきりだったしな……


 書類を見ながら悩んでいるとローズが声をかけてくる。


「余り、活動再開は良くなかったですか? てっきり喜ぶモノかと思っておりました」


「まぁ、予定としてはもう少し後だったらな、って思っただけさ。じゃぁ、昼からはギルドに向かうね」


「分かりました。向かわれる前に声をかけてください」


 俺の言葉にローズはうなずき、静かに扉に向かうとお辞儀じぎをする。そして入室時と同じように、静かにクラン長室を出て行った。


 さて、作業に戻るか。


 書類を確認し、時々追加で確認をしに来るローズと会話し、また書類に目を通す。


 そうしている内に午前中は過ぎていった。


「じゃぁ、行ってくるよ。ローズ、しばらくお願いね」


「はい、行ってらっしゃい」


 手を上げながらローズに声をかけ、そのままさらっと階段を降りる。

 受付ロビーを抜け、クラン出入口の扉を開く。


 まぁ、タイミングは微妙だったが……冒険者活動、再開と行こうじゃないか!


 そう考えながら、人通りの多い、クラン前の通りに出るとギルドを目指して歩いた。


 目的地である冒険者ギルドに到着とうちゃくし扉を開き、いつものようにアンナに声をかける。


「こんにちは、アンナさん。活動休止から全く顔を見せずで」


 頭に手を当てて挨拶をしながら平謝ひらあやまりをする。

 すっかりバタバタで忘れていたなどとは言わない。


「あっ、ノーマさん! お元気そうで良かったですよ! 少しは依頼とか関係なく顔を見せてくださいよね」


 俺を見て嬉しそうな声もつかふくれたように言うアンナ。


 いつか王都での件を知る時が来れば、溜飲りゅういんも下がるはず。

 その前に、しばらくすれば顔を見せなかった事も忘れて、気にせず笑いかけてくれそうだが……


「す、すみません。それで、その活動休止の件で呼び出されたんですが、ギルド長に」


「はいっ! 確認をとってきますね! そのままお待ちください、ノーマさん!」


 俺に元気よく返答すると2階まで上がっていくアンナ。


 しばらく、受付前で待機していると……


「おい……! あれ見ろよ。魔道具をじゃらじゃら付けてる奴がいるぞ」


「あ? マジだな。なんだ? 見かけねぇ服装ってこたぁ、あれが噂の他国の冒険者か。おぉいっ! どこの国から来たんだ!」


 ギルド併設へいせつの酒場で冒険者たちが声を上げ、見かけない4人の冒険者達をじりじりと遠巻きにながめる。


「アマテア皇国から来ました! 隊名は――」


 フードをかぶり顔は良く見えないが、声から察するに女性。そして声質も若い、ように思う。


「アマテア皇国だ! おい、アマテア皇国だってよ!」


 一人の男がそう言うと、ギルド酒場の中央に人だかりができる。


「あーっ、くっそ! 他国に出張でばって来るんだから、ホーラルかと思ったのによ!」


 あ~……こりゃ、うわさで実際に来るのか、どこの国かでけてたな……

 他国の冒険者ねぇ……そんな話、あったっけかね。ギルドの件はインフィオなら知っていただろうが……それほど重要でも無いから、伝えなかったかね。


「あ、ノーマさん! ……と、どうしましたか?」


 アンナが俺へ声を掛けたと思えば、うかがう様に視線がはずれ、俺の後ろに向く。


「横入りの様になってしまって申し訳ない……私達はアマテア皇国から来た冒険者です。恐らく、祖国のギルドから連絡が行っていると思うのですが」


 俺に謝罪し、頭を下げる女性冒険者。

 そのまま流れるように一歩前に踏み出し、説明し始める。そのせいでいまだに顔はおがめなかった。


「あぁ、『機構の探求メカニクエスト』の方々ですね! じゃぁ……ノーマさんと一緒に2階に上がってください。ノーマさん、場所まで一緒に向かってもらえますか?」


「え? えぇ……でも、一緒で良いんですか?」


「えぇ、一緒で良いんです! さぁ、ギルド長屋でお待ちですよ!」


 うながされるまま、階段を上がる。後ろについてくる無言の他国冒険者4人。


 ギルド長室の扉前でノックし、声をかける。


「失礼します、ノーマです! 他国の冒険者の方々もおります!」


「おうっ! 全員、入ってくれ!」


「失礼します!」


「「「「失礼します」」」」


 ギルド長室に入ると、ビッグスが応接のソファをし示す。

 それに従い、俺と『機構の探求』も座る。


「ふぅっ……で、だ」


 ビッグスは背もたれに深く腰掛こしかけると、顔を天井てんじょうに向けて申し訳なさそうにつぶやいた。


「ノーマ、活動休止解除の条件だ。『機構の探求』が王都に居る間の面倒を見てやれ」


 ……んっ? なんだって?


「すみません、良く意味が理解できず。もう一度、言ってもらえますか?」


 はぁっ、と息を吐き出し、スゥッ、と深く息を吸い込んだビッグスが大きく口を開いた。


「良いか、ノーマッ!! 『機構の探求』が王都に居る間ッ!! お前が、面倒見ろッ!! それが、活動休止解除の、条件、だッ!!!」


 いきなり大声出さないでくれって……

 それよりも、面倒を見ろだってっ!? 他国の冒険者だぞ!!

 そういうのはギルドでやるもんだろ!


「い、嫌ですよっ! そんなのギルドの仕事じゃないですか! こっちに投げられたって、無理ですよッ!」


「俺も上から言われてんだッ! 拒否きょひすると、ノーマ! 理事会に呼び出されるからなッ! 呼び出された後にどうなるかは俺も知らんッ!」


 冒険者の活動休止で、解除条件は他国の冒険者の面倒を見ろ。

 断れば理事会に呼び出される。


 これはおどしだ。

 呼び出された場合、断れない事を分かった上でネチネチと甚振いたぶられる。痛くもない腹を探られたりする。


 下手すれば冒険者の総合評価で減点される可能性すらある。


 だから、これは……依頼であり、強制命令だ。


「……そもそも、活動休止にしたのも」


「わ、分かってる。俺も理解はしているんだが……どうも、外交関係の問題で理事会も言われたみたいでな……断るのは無理だ」


 こうして、未だに横でじっと無言のままの他国の冒険者――『機構の探求』の面倒を見る事が決定した。


 嘘だろ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ