3_ノースウッドからローデシアの話_3
街の人に話を聞いた結果、デッブ達は山に入ったみたいだった。
理由は分からない。
ダンジョン街の奴等の話では、最近アンデッドが多く出るのだと言っていた。
夜の山は危険だが、もしもの事がある。
俺とオタ先輩は山へ足を踏み入れた。
「ヨイドレ氏、もう眠いお」
「我慢してください、もうすぐ山の中腹です」
「太った人間を捕まえてくれば、代用できるお」
「ええ? んな訳ないでしょう」
俺とオタ先輩は急いで山を駆ける。
手に持つ、魔道具の明かりを頼りに。
「師匠の話では、デッブさんと旅をする必要が......」
そこで気が付いた。
ツーンとした臭い。腐臭だ。
恐らく、アンデッドだろう。
「何か、臭いませんか?」
「おいらの事かお?」
「ち、違いますよ」
先へ進むごとに腐臭は強くなる。
それは周囲の空気を重くし、呼吸をするたびに鼻腔を焼き付けるかの如く。
この先にアンデッドが湧いているという事だろう。
「オタ先輩はアンデッドを殺せますか?」
「無理だお。クッコロ氏に殺し方を教わらなかったのかお?」
アンデッドは厄介だ。
奴等は不死。
その体が朽ち果てようとも、地に魂が縛られる。
バラバラにしたとしても、別の体に乗り移るのだ。
アンデッドを殺すには、教会の聖職者かなんかが祓う必要がある。
「教わりました?」
「何で疑問形なんだお」
「いや、クッコロ先輩の教え方は、兎にも角にも慣れろって感じでしょ」
クッコロ先輩はアンデッドをそのまま切り殺していた。
何故、アンデッドが復活しないのかを聞くと "慣れ" と言われた。
ただ、クッコロ先輩を観察した感じ。
いつも曲剣に白い魔素を纏わせて、切りつけていた。
それは、オーグナーの屋敷で見た、結界に使われていた魔素のような。
「まあ、足でも切り落とせばいいお」
「ええ? それじゃあ、また復活......」
見えた。アンデッド共だ。
顔の肉は腐り落ち、顎がない奴も居る。
目があるはずの場所には何もない。
目玉は、どっか落っこどしちまったんだろう。
人型以外にも、ウルフやグリズリー等の獣型の奴も居る。
そして、数が多い。
そいつらは俺達に気が付いた様子で、此方へと這い寄る。
「オタ先輩。無視していきましょう」
♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦
「......人もどき。何故お前が此処にいる?」
「何故って、一緒に聖都まで行くって話だったと思うんですけど?」
デッブ達は、山の中腹辺りでサイトを作り、薪を火にくべ、そこで休んでいた。
周りには何人かの護衛。
デッブの隣には、外套をすっぽりかぶった奴が座る。
「何故、先へ進んだんですか?」
「わしは、お前が嫌いだ」
わあ、直球だなあ。
「嫌いだって言っても、計......」
俺は続く言葉を止めた。
周りの奴等に聞かせて良い話ではない。
......それよりも、アンデッドの一団に遭遇した事を話した方が良いだろう。
「キミ、もう怪我は平気なの?」
デッブの、隣に座る奴が俺に話しかけてくる。
その声は高く、女性の様だ。
「こいつと話すでない、ティナ」
「どうして?」
「......どうしてもだ」
デッブは険しい顔をしてそう言う。
ティナと呼ばれた奴はちょいと小言を言うと、立ち上がって俺に近づく。
そいつが俺に触れようとしてきたので、ちょいと後ろに下がった。
「そんな、怖がらないでください」
そいつは俺の腕や手、首筋等に触れる。
それは医者みたいな感じで、何かを調べる様に。
「此処は? 痛くないですか?」
「......痛くないです」
「我慢、していないでしょうね?」
な、何なのこの人。
体をべたべた触って、変な人だ。
「あ、ごめんなさい。やだ、わたしったら。キミは初めましてよね?」
そう言ってそいつは外套のフードを脱ぐ。
透明感のある浅緑のショートボブ。
吸い込まれる様な、グレーの瞳が特徴的の奴だ。
しかし、俺はこいつを見たことが無い。
「......どこかで、会いましたか?」
「オーグナー様の屋敷で、大けがをしていたキミに治癒をしました。ティナ、ブレアです」
なんと。
この人が俺を治療してくれたのか。
ティナさんと名乗る彼女は、胸に手を当て笑顔を見せる。
それは無邪気な感じで、ちょいと感じが良い。
「ごめんなさい、恩人の方に失礼をしました。ヨイドレ、オーグナーと言います。治療、ありがとうございました」
「ううん、神様に使える者として、当然の......「ティナ、そいつと話すでない」」
デッブがティナさんに被せる様に話す。
何故だか、デッブは俺とティナさんが会話をするのを嫌がっている様子だ。
......余計な諍いは避けたい。
デッブの前でティナさんと会話するのは避けよう。
「デッブさん。ちょっといいですか?」
「なんだ、何か文句でもあるのか?」
「いや、そう言う事じゃあ無くて......」
護衛達やティナさんが居る前で、アンデッドの事を知らせても良いのだろうか?
この場所へ来るまでのアンデッドの数はちょっと異常だった。
その数を把握できていないが、50以上は居ると思う。
そして、それだけのアンデッドが山を登る様に進む。
それは何か、意思を持つ様な感じで。
師匠からは俺の力を他人に見せるな、と言われている。
無能な奴が、アンデッドが闊歩する山を駆け抜けるというのは、疑われてしまう可能性があるだろう。
「出来れば、2人っきりで話したいことがあります」
「......二人で? わしとか?」
「そうです。デッブさんとです」
デッブはちょいと目を細めて此方を見る。
「おぬし、まさかわしの事......」




