2_俺が目覚めた後の話_4
「後輩。私、頑張った」
「ああそうですね。よく頑張りましたよ」
まあ、殆ど俺がボスと話して、俺が話を通したわけだけど。
大凡の筋は、師匠の言う通りに進んだ。
盗む対象は、核という伝説の魔道具。
全てを破壊し、盾にもなるし剣にもなる魔道具だそうだ。
デッブの奴を含め、オーグナーの奴等はその形すら知らないらしい。
そして、それを何に使うのかは聞かなかった。
知らなくていい事は、知らない方が良いからだ。
「頑張ったら、ご褒美がある。でしょ?」
「俺は嫌ですよ」
「......まだ、何も言ってない」
ファングーラオの通りを外れて、裏路地へと入る。
そこらで駄弁る奴等は、俺達を見ると姿勢を正して、声を掛けてくる。
俺はそいつ等に軽い会釈をして、足早に師匠の店へと向かう。
「クッコロ先輩。師匠の店の前に置いてあるガラクタって何なんですか?」
「しらない。師匠、配ってる」
箱の中の魔道具は、見る度に数が減ってゆく。
それは誰かが持って行っているのか、俺も良くは分からない。
そのどれもこれも、微量だが黒いふわふわを纏う。
「疑問に思ったり、しないんですか?」
「師匠、よく分からない。でも、夢を叶えてくれる。だから付いていく」
「クッコロ先輩の夢って、なんです?」
「夢は、口に出したら、駄目」
♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦
「グワッ! グワッ! グワグワグワ」
......
師匠の店に入ると、フェニックス先輩が居た。
それは翼を広げ、此方に向かって威嚇をするような感じで。
......前に食べようとしたことを根に持ってるのかもしれない。
「フェニックス、怖くない。おいで」
クッコロ先輩はそんなフェニックス先輩を宥め、此方を見る。
「怖がってる。後輩、何かした?」
......きっとバレたらやばい。
しらばっくれよう。
「何か...... まあ。人は皆、何かをしますよ。そう、それが人生ってもんでしょう」
「......何言ってるの?」
はい。
自分でも何を言っているのか分かりません。
「生きていれば腹が減り、腹が減れば物を喰う。そうでしょう?
まったく、困っちまいますよ。それが生きるって事ですから」
「......大丈夫?」
「でもね、先輩。それでも俺達は生きていかなきゃあいけない......
時に先輩、フェニックス先輩って、少し美味しそうですね?」
クッコロ先輩は訝しむように俺を見る。
それは目を細めて。
そんな折、クッコロ先輩の向こうっ側。
2階へと続く階段から、師匠がおりてきた。
「あゝ、二人ともお帰り。話は上手くまとまった?」
師匠! 神かよ!
「はい、問題なさそうです。あ、パルノ族の名義の件ですが、手に入らないそうです」
「ええ? それはちょっと困るな...... ううーん、まあしょうがないか。こっちで用意するよ」
師匠はこちらへとやってきて、フェニックス先輩を抱き上げる。
そうして、先輩の足元に巻き付く何かを取る。
それは細長い紙。
何か書いてあるのだろうか、師匠はそれを広げて見始めた。
「うーむ? 所でヨイドレ君? 君って結構、綺麗な顔してるよね」
「......はい? な、なんですか急に」
「いやいや、他意は無いよ。
ただ、君が化粧でもして、ウィッグも付けてさ、スカートを履けば女の子に見えるかもね?」
な、なんだよ。
怖いんだけど。
師匠は細長い紙を読み終えたのか、それを掌で丸める。
「さあ、これからの話をしようか。
君はアッチノ山ダンジョンを越えて、一番近くの都市。ローデシアで列車に乗って聖都へ向かう」
おいまて、さっきの話は何だよ。
化粧だとか、スカートだとか言ってたぞ。
「聖都に着いたら、君はエライコさんの様子を見るだけでは我慢が出来ない。そうじゃあない? 会って話したりしたいでしょう?」
「話せるんですか!?」
「楽勝さ。私に任せろよ。ただ、その為には色々と問題がある。例えば、基本的に聖女に仕えるのは女性だけだよね」
......ふむ?
「つまりはさ、男である君がエライコさんの居住区に行けば、それだけで捕まってしまうんだよ」
なんだか、嫌な予感がしてきた。
「だから、君は女の子の恰好をするんだ!」
「え、えええ? 絶対バレますって。それ」
「絶対いけるって。私が保証する。君は可愛い」
えええ? ......まじ?
「自信持てよ。君の可憐さの前では、王子様だってメロメロになっちまう位さ」
本当に、大丈夫か?
......ただしかし、エライコ様に会うのにそれしか無いのであれば、そうするしかない...... のか?
「分かりました。やってみま...... ちょっと待って、居住区に入るにはどうすれば良いんですか?」
「ああ、それは問題ないよ。旅の途中でその伝手が出来るからね」
「伝手? なんです? それは」
「まあまあ、その時が来れば分かるさ」
師匠の話はよく分からない事が多い。
しかし、いつも師匠が話す様に物事は進む。
それは恐ろしい位には。
「あとは、結構ゴタつくと思うけど、くれぐれも人前で君の力を見せたりはしないでね」
......ごたつく?
「分かりました。それもエライコ様の為になるんですよね?」
「勿論。それじゃあ、私は店の入り口を移動させるからね。さあさあ、外へ出てってくれよ?」
い、移動?
♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦
師匠の店を追い出されたわけだけど、店の入り口を移動するってどういう事なのだろうか。
「クッコロ先輩。移動するってどういうことですか?」
「別の扉、店を繋げる」
うん?
「扉、開けて見て」
俺はクッコロ先輩に言われて、師匠の店の扉を開ける。
すると、中は何もない。
あれほど沢山あった魔道具も、テーブルや棚だって何もないのだ。
室内に入ると、床に積もる埃が舞い、足跡が付く。
......意味わかんないんだけど。
「師匠のバグって何なんですか?」
「お店、師匠のバグじゃない。神の使徒から、奪ったって。オタ言ってた」
う、奪った?




