2_俺が目覚めた後の話_2
俺は慌てて丸い球を明後日の方向にぶん投げようとした。
しかし、それを師匠が止める。
「ちょっ、ちょっと待って! ごめんて、そう言う設定ってだけだから! 投げちゃダメ!」
おん?
設定?
「せ、設定?」
「もう、危ないなあ...... そう、そう言う設定。そもそも、私達の目的は核を盗み出す事じゃあないんだよ」
どういう事だろうか。
「今回の目的は、君の実家に協力してもらって学園に入るって事だけ。
つまりは、それっぽい何かを彼らに与えてやれば良い。
別に、そこら辺に落ちてる犬の糞でも良いよ?」
そんな、そんなバカな話があるかよ。
オーグナーの連中だって馬鹿じゃあない。
う〇こ渡して "わーいこれが伝説のまどうぐだ!" なんて、そんな事ありゃしないだろう。
「流石に、それは無理がありませんか?」
「おいおい、私は君の師匠だぜ? 無理なんか存在しない。例えば、例えばそうだね......」
そう言って師匠は腕を組んで背筋を伸ばす。
「聖都に何者かが侵入して、そして、その魔道具が無くなった。その事実がそれを本物にするのさ」
......続きを聞こう。
「君がやるべきことは、聖都に侵入したならわざと見つかるんだ。
派手に暴れるのも良いね?
そうするとデッブ君は傍を離れる。
その隙にありったけの魔道具を、オタ君の箱に詰めて持ち帰るんだ」
......ありったけの魔道具?
「核という魔道具だけ、持ち帰るんじゃあないんですか?」
「うん。正直な話、私は核の実物を見たことが無いんだよ。
だから、それっぽいやつは手あたり次第持ってきちゃって?」
おいおい、適当かよ。
「デッブさんに聞けば形とかは分かるんですか?」
「知らないだろうね。まあ、困ったらオタ君を頼ると良いよ。彼は魔道具に詳しいから」
誰も、その形を知らない魔道具。
......もしかしたら可能かもしれない。
......いや、待て。
デッブという奴は鑑定というスキルを持っている。
それは触れば物の価値が分かるという。
「デッブさんは鑑定のスキルを持っていますよ」
「彼は君の名前すら見る事が出来なかったんでしょう?」
そう言えば、そうだ。
師匠は昔、鑑定にもレベルがあると話していた。
「旧世界の遺物っていうのは、その殆どがバグってるんだよ。
並大抵の鑑定じゃあ見分ける事は出来ない。
そして、君の実家はおいそれと他の奴に鑑定をさせる事は出来ないだろうね?
何故なら、聖都から盗んだであろう物なんか鑑定させたら...... わかるだろ?」
手に持つ丸い球は黒いふわふわを纏う。
もしかしたら、可能かもしれない。
このつるつるした丸い球であれば。
なんたってピカピカ光るし、ちょっとそれっぽい。
「出来るかもって思ったろ? 出来っこないって思ってやれば、何も出来やしないけどさ。
出来ると思ってやれば、偶には出来ることもあるんだぜ」
「偶にって...... 本当に大丈夫なんですか?」
「おいおい、私を誰だと思っているんだい。君の師匠だぜ? 楽勝さ」
心配だよ畜生。
しかし、師匠と話していると何故か出来る気がする。
それは、師匠が特別な魔法でも使っているのか。
「さあ! その為にもまず、君は実家に戻って交渉をしなくてはいけないね。
クッコロちゃんを連れて行くと良いよ。私の代わりさ」
♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦
「クッコロ先輩、良いですか? ちゃんとボスと話せますね?」
「話せる。後輩、最近ちょっと生意気」
「い、いや。違いますよ。だってほら、クッコロ先輩は人見知りでしょう?」
「そんなことない」
ええ?
そんな事あるって。
ちょいと先にはオーグナーの屋敷が見える。
そこには何人かの奴等が、門の前に居るのが分かった。
俺達の事を待っているのだろう。
「......それなら、いいですけどね」
「後輩。怒ってる?」
「いや、別に怒ってないです」
「うそ。魔素が揺れてる。私の所為?」
「違います。なんていうか、何か分からないです」
何か分からない。
何か分からないけど、心の中で何かが騒ぐんだ。
「ヨイドレ様! お待ちしていました。その方が師匠様? ですね?」
ソワールの奴が俺の方へと寄って来る。
「......はい。ボスの所に案内してもらえますか?」
「わ、わかりました。どうぞこちらへ」
俺は何となくだけど、ソワールと目を合わせたく無かった。
さっさと用事を済ませて、オタ先輩とギルドにでも行きたい。
「師匠様は、お名前は何と言うんですか?」
道中、ソワールが話しかけてくる。
......
俺は隣を歩くクッコロ先輩を、ちょいと突いた。
「く、ころ」
ええ?
ダメじゃん。
全然人見知りじゃんかよ。
ソワールはちょいと困った様な顔をして、此方を見る。
まったく、もう。
こんなんでクッコロ先輩はボスと話せるのだろうか。
「クッコロさんです。かの...... この人は、ちょっと人見知りなんです」




