1_ノースウッドの話_n+1_3
自由冒険者ギルドの入り口横の壁、そこには沢山の人がごった返す。
老紳士、ガタイの良い猫男、エプロンを掛けたお姉さんに、街の衛兵。
様々な奴等が、各々クエストボードを見ている。
「ちょいと、すいません。通ります」
俺はそんな奴等の間を縫うようにして、クエストボードを流し見する。
> 場所: ローデシア支部
> 内容: ゴブリンの間引き
> 推奨ランク: 4
> 値段: 要相談
アッチノヤマダンジョンを越えた先にはローデシアという国がある。
そこではゴブリンという、人型の魔物が多く発生しているみたいだ。
その他にも、この地域は間引き関連の依頼が多い気がする。
つまり、ここら辺は魔物が増えてきているみたいだ。
ギルドにはランクという制度があり、それは1から12までの数字に分けられる。
1は仮免、2は初心者。
3、4は無くて5が中級者ってとこ。
その他に推奨ランク0というのがあるが、それは分類が出来ないという意味だ。
例えば、言伝や奉仕活動の募集と言った依頼が含まれる。
当然報酬は0というわけ。
> 場所: 聖都西区支部
> 内容: ドラゴンの生息地調査の助手
> 推奨ランク: 0
> 値段: 0
ドラゴンの生息地調査、これは聖都の依頼。
聖都から出される依頼や新聞はここいらに張り出されるはず。
エライコ様の事を書いた記事などがあるかもしれな...... あった。
> 場所: 聖都中心区支部
> 内容: 聖女様の奇跡!目の見えない老人は、初めて空の青さを知る
この記事によると、エライコ様は治癒魔法を使って老人の目を癒したと書いてある。
こうしたエライコ様の活躍を称える記事は度々目にするのだが、師匠曰くそれは教会による自作自演なんだと話していた。
師匠の話が本当なのかは分からない。
もしも嘘だったら、それはそれでいい。
問題なのは師匠の話が本当だった時だ。
エライコ様が置かれている環境は、きっと辛いものだろう。
周りからの重圧と、それに応えられないもどかしさ。
俺が過去に味わっていたものと同じ類の物だ。
あの時の俺にはエライコ様が居た。
今の彼女には誰か支えになるやつは居るのだろうか?
......後、2年待って王立学園に入学する必要はあるのか?
今の俺の実力でも、聖都に行けばどうにかなるんじゃあないか?
......帰ったら師匠と交渉しよう。
それにしても、クエストボードの内容は全世界のクエストボードと繋がっているとの事だが。
そのクエストボードは本当にただの壁に見える。
割と小洒落た壁一面、支部毎に、依頼書が貼り付けられている。
貼り付ける際に使う、粘着剤は特定の種類の魔物を素材として使うらしい。
これが3日後に剥がれて落ちる。
そのため、此処に張り出される依頼は最新のものしかない。
さて、ギルドの用事は済んだ。
教会に手紙を渡しに行こう。
♦♦♦♦♦♢♦♦♦♦♦
ギルドから、城へと向かう道すがらに教会はある。
その建物の外観は赤レンガの鮮やかな朱色。
建物の窓は小さく、天井部分までもが石材で作られる。
それはとても頑丈そうな建物だ。
「じゃ、オタ先輩。手紙を渡してきます。一緒に行きますか?」
「いいや。おいらは外で待ってるお」
教会の大きな扉はちょいとあいている。
狭い門から入れという教えらしい。
俺は扉に触れないように教会へ入って、そこらに居た修道士の人に声を掛ける。
すると、声を掛けた修道士は振り返る。
「ああ、ヨイドレさん。今日も手紙ですか?」
修道士が俺の事を見た時、彼の周囲に漂う魔素が少し揺れて薄くなった。
それは俺が声を掛けた瞬間では無く、俺の事を見た瞬間。
俺は、彼の事を何度も見たことがある。
魔素がこういう反応の時、彼は緊張しているんだと思う。
そして、そういう時は大抵なんかある。
「はい。手紙の返事って届いていますか?」
「届いていませんね。ただ、聖女様もお忙しいのです。一人の方を特別扱いする事は出来ないのですよ」
「そう、ですね。手紙を出しても良いですか?」
「勿論。どうぞこちらへ」
俺はその修道士の男に案内されて、司祭の元へと向かう。
そうして、司祭に手紙を渡す。
「はい。神に誓って、聖女様にその声お届けします」
「ありがとうございます。お願いします」
「ああ、ヨイドレさん? お知り合いの方がお見えです。ご案内しますよ」
おや?
司祭は手紙を受け取ると、すぐ近くの懺悔室に俺を案内した。




