地上の知らない世界
ーーここはどこだ
ーー自分は誰だ
意識が覚醒すると共にゆっくりと瞼を上げた。横たわった上体を起こし周りを見る。何も前が見えない場所。そこには一点の光もなく、ただただ深く暗い闇が広がってた。
ささささっ
音がする、ネズミでもいるのか。その音は一瞬にして遠くへ行ってしまった。ただここに居座っていてもこの状況を何も分かりはしない、立ち上がり音が遠く行った場所へと足を運ぼうと思ったが、左足が引っかかる。酷く冷たい触感、重量による痛み。しゃがみ、左足首を左手で触った。
「重い、足鎖か、鉄球も付いてる」
鉄球の重さは推定10kg、左足に力を入れてみる。痛みはするが歩くぐらいは出来そうだ。歩み始める瞬間どこが懐かし気な感覚を抱きながら少年は音が遠のいた方向へと歩き始める。
歩き初めてからどれほどの時間が過ぎたのだろうか、歩む先に光が見えた。青光だ、しかし発生源が確認出来ずにいたのもあり、右足を前に出し身を構える。数秒もせず少年は違和感に気づいた。体を構えたと共に拳にした両手に汗が滲む。それは青光、否、炎と認識できるまでに時間は要さなかった。
「ーー!」
力が使えない、いや感覚すらない、何故だ、そんな、今は考える時間も無い、炎は10m以内にまで迫って来ていた、膠着状態に瀕していた体に【ここでは、死ねない、死んではならない】という強い意志をぶつけ、左足で地を蹴り上げ体を全力に右へと引っ張り出す....!
「間に..合わない...!!」
自分の体の何倍にもなる炎が顔をすれすれに通り過ぎる、しかし、足鎖と鉄球に繋がれた左足が避け切れない。
「これは、まずい、、」
頬に伝って流れていく汗、最大限の力で地を蹴り上げた左足の直ぐ前には青い炎が数cm距離に位置していた、回避は不可能、ここで左足を失う、その覚悟に自分は向き合えるのか、分からない、しかし、とっくの昔に覚悟は出来ていたと思わんばかりに歯を食いしばる。体の条件反射に沿って顎を引く動作を強制的に止め、少年は上を見上げた。
刹那、少年の見上げた頭上に白光が灯った。青い炎に足を焼かれ始めるその時間が止まったのごとく、それほど白光がこちらに迫る勢いは凄まじかった。それはやがて少年の頭上にまで降り、目の前に映ったその白光は美しく金に近しい黄色い炎だった。
「懐かしい」
その思いと共に安堵が少年の心に宿っていた。いつしか見た色、景色、仲間、家族、空、花。何もかもが記憶と残ってはいない。しかしその心が覚えている。
0.秒の出来事だった、黄色い炎は青い炎を消し去り、暗闇の中消滅した。同時に、消滅した黄色い炎の因子が一つ一つその場において少年を認識するかのようにその場の隅々まで拡散されて行き、何も見えなった空間が照らされて行った。共に足鎖と鉄球を繋いでいた鎖もいつの間にか解かれていた。恐らく因子のおかげなのだろう。
どこまでも続く石畳の空間、どこまでも続く天井、上に視線を向け見入れば見入るほどそこは暗闇が広がっていた、少し目が痛い。その空間を眺め少年はポツりと。
「月がない」
そんなことを呟いてた、しかし少年は月を知らない。自分の中にあったはずの過去の記憶はどこに行ってしまったのか。それだけが少年は気になっていた。
何もかもが忘れ去られ未だ分からない空間に居る少年の心に一つだけ確かに抱く思いがあった、リーダーにならなければならない、これは誇りでも、傲慢でもない、ただ、これだけが自分に与えられた使命・運命だと信じ歩むその心とのある人との約束を。




