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叶えられた前世の願い  作者: レクフル


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30話 メリエルの怒り


 モリエール公爵家で働ける事を誇りに思い、家族にも喜んで貰って送り出され、メリエルはここまでやって来た。


 由緒あるモリエール公爵家。そこは高位貴族で皆の憧れの的であり我が国の護り神とも言われている、ソードマスターを何人も排出してきた伝統ある素晴らしい家門である。しかしその内情が、こんな酷いものだったとは。


 メリエルは悲しかった。悔しかった。そして凄く残念に思ったし、同時に腹が立った。


 さっき本邸から帰ってきたばかりだが、メリエルはまた別邸から本邸へと足を向けていた。




 一方リュシアンは、執務室にまたセヴランを呼びつけていた。



「シオン嬢の侍女となっているメリエル・アイブラーの移動を命じる。本邸への勤務とせよ」


「は、はい、承知いたしました。ですがなぜ……?」


「やはりシオン嬢は悪女なのだ。メリエルは別邸で酷い目にあっていた」


「そうなのですか?!」


「本人も認めていた。何が悪いのかも見当もつかない様子だっだがな。流石としか言えん」


「申し訳ございません! 今後はキチンと監視致しますので!」


「で、昨日もルストスレーム家の従者が来たのか?」


「はい。毎月の公爵夫人に当てられる金額の増額を願い出ておりました」


「まだここに来て然程経っていないというのに、もうそんな要求か」


「ルストスレーム家への援助は、もう不要ではございませんか? 公爵夫人へと割り振った金額はかなりのものです。それだけでも充分でしょう? 支度金も多くお渡ししましたが、あちらからは殆ど何もありませんでしたから」


「そうだな……」


「全く、不良債権を掴まされたようなものですね。それで、増額の願い出はいかがなさいますか?」


「要求どおりにし、ルストスレーム家への援助は打ち切りとしよう」


「承知致しました」



 モリエール家は、毎月ルストスレーム家へ婚約者の実家という事で支度金として金額を渡して来たのだが、ルストスレーム家の鉱山が崩落し災害に見舞われた時は援助金として更に多くの金を渡して来た。

 しかしシオンを娶った事で支度金は必要なくなったし、災害後もある程度復興されたとして援助金も、もう必要ないだろうと考えたのだ。


 そして毎月シオンに当てられる金額はルストスレーム家からの従者へ渡されていた。それがシオン達の手に渡る事は一切ないのだが、それをリュシアン達は知ろうともしなかった。シオンの置かれている状況など知る由もなかったし、そんな事には関心がなかったからだ。


 その頃、メリエルは侍女長に会うべく侍女長室へと向かっていた。


 侍女長はそこで勤怠管理等や仕入れの入出金等の帳簿付け、新人教育の課程の進み具合等も管理している。侍女長が自分に用がある時はここに来るようにと、はじめてメリエルがモリエール家に来た時に伝えられていた事を思い出したのだ。


 侍女長室に着いて扉をノックすると、中に侍女長がいたようで入室を許可された。



「メリエル・アイブラー、何かありましたか?」


「侍女長、この対応は酷いです! あんまりです!」


「なんの事です?」


「今日、食堂には昼食の用意はされておりませんでした! 場所が変更されていましたが、誰もそれを教えてくれませんでした!」


「食堂を改装すると言う事で、業務連絡として各部屋へ配布していましたよ」


「私は貰っていません!」


「それは貴女が別邸で過ごしているからでしょう?

こちらには何も不手際はありません」


「では食堂は何処になったんです? 場所を教えてください!」


「本日は会議室1の部屋でしたね。あぁ、毎日場所は変わるんです。明日はどこだったかしら……? 配った業務連絡の用紙に書かれていたのですが、忘れてしまったわ」


「てはその用紙をください!」


「全て配り終えて、もう無くなりました」


「……っ!」



 埒があかない。何を言っても通じない。改装するのも嘘だろう。工事が始まっている気配もなかったし、綺麗な食堂なのにどこを修正する所があるのか。侍女長の態度にも、メリエルは憤りを感じずにはいられない。


 今日は会議室1に昼食は用意されていると聞いて、取り敢えずそこに行こうかと思ったが、その会議室が何処にあるのかも分からない。本邸内の地図を貰うことも出来そうにないなと思っていると、扉をノックする音が聞こえ、セヴランが入ってきた。



 

「侍女長、お話が……あぁ、ちょうど良かった。貴女が新人の侍女ですね。名前は確か……」


「メリエル・アイブラーです」


「そうそう。良かったですね。リュシアン様より勤務先の移動を命じられておりますよ」


「え?」


「貴女を別邸勤務てはなく、本邸での勤務へと変更させます。それで、別邸での事を聞きたいのですが……」


「ちょ、ちょっと待ってください! なぜですか?! なぜいきなり……っ!」



 突然の勤務場所変更の勧告を受けて、メリエルは驚きと戸惑いが胸を襲った。


 なぜそうなったのか。リュシアンが命じたとあったが、さっきリュシアンが別邸に来た事と何か関係があるんだろうか。

 理由が聞きたいし、何よりメリエルは別邸での仕事、シオン達と一緒にいる時間を無くされたくなかった。


 だから思わずセヴランに詰め寄った。



「納得できません! 公爵様にお目通り願います!」





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