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提示された問題

この世界にはかつて、正義のヒーローと呼ばれる存在がいた。

多くのの命を守るために創られたアンドロイドのガーディアンたち、その名も通称G9。

彼らは突如現れた怪物たちを倒し、人々を守ってきた。


ところがある日、彼らは姿を消してしまったのである。

様々な謎と脅威を残したまま...。




「うん。おねぇさんの紅茶は、いつも美味しいね。気分が落ち着くよ。」


「そうかな?」


「おねぇさんが淹れてくれるからだろうね。」



天気のいい午後2時のこと。

一人の男性がテーブルに座って、優雅にティータイムを過ごしているところへ少年が駆け込んできた。



「人の家でくつろがないでくださいよ、先輩!」



そう、ここは彼の家だった。

偉そうに座っている男性とは「先輩」「後輩」と呼びあう間柄ではあるのだが、実際にそういう関係という訳ではない。

勝手に「後輩」と呼ばれているうちに、いつしかその呼び方が馴染んでしまっていたのである。



「いいじゃないか後輩。ちゃんと土産も持ってきただろう?」



カワイイお菓子が机に並べられているのを見ながら、少年は呆れるようにため息をつく。

女性がいなくなったところで、二人は向かい合った。



「で、今日は何のようですか。」


「前と同じさ。ヒーローごっこは終わりにしとけ、これは俺たちの仕事だ。」


「またその話なんですか!?」



少年は、怒りにまかせて机を叩いた。

そう、彼こそが最近活躍して噂になっている新ヒーローなのだ。

目の前にいる男性は、G9失踪から活動している、いわゆる公認的ヒーローであった。



「今まで何度かそのことで揉めましたけど、なんとかうまくやってきたじゃないですか。どうして今になってまたそんなことを言うんです。少しは認めてくれたと思ってたのに。」


「犯人を逃がすようなヒーローを認められるか?」


「だって。あれは、G9だった!」



先日の事件で、少年は絶句した。

失踪していたはずのG9の一体が、目の前にいたのだ。

怪物を庇い、ビルを破壊したその姿は、間違いなくあのG9だった。



「何の理由もなしに、あんなことをする訳がない。」


「理由があったところで、許されることじゃないだろう。」


「でも、話を聞いてみないことには。」


「あれはただの不良品だ。」


「G9は、僕らのヒーローだったじゃないですか。命を守るために生まれて、たくさん活躍してたのに。壊すしかないだなんて。」


「いいか、よく聞けガキ。」



彼はいらついたように少年の襟元を掴んで、睨んだ顔で言い放った。



「そのヒーロー様をぶっ壊したのが、あのG9だ。」



「…は?あんた何言って。」


「あのG9が、他の同機をぶっ壊しやがったんだよ!」



椅子に押し付けられて、少年は目を白黒させる。

とてもじゃないが、簡単には信じられる話ではない。



「こんな不祥事、話せたもんじゃなかったんだがな。他に目撃者もいたらしいし、今ここで話す分には問題ないだろ。」


「それって、本当なんですか。」

「事実だ。俺がこの目で見たんだからな。」



彼の話は、とんでもない内容だった。

G9たちと彼が共に働くことになった翌日のこと、事件は起こったという。

一体のG9にエラーが発生したかと思えば、他のG9を破壊して姿を消してしまったらしい。

社会に混乱させないようにするためという名目で、G9は全て失踪扱いにすることになったと語られる。



「まさか怪物の味方になるとはな。」


「G9は、どうしてそんなことを。」


「不良品のことなんて考えるだけ無駄だ。とにかく、邪魔するようならお前ごと処分してやるから覚悟しとけ。」



男が立ち去り、少年は一人で頭を抱える。

そのまましばらく黙りこんでいたのだが、さきほどの女性が様子を見に戻ってきた際にようやく口を開いた。



「なぁ、信じられるか?あのG9が仲間を破壊しただなんてこと。」


「仲間とは破壊できるものなのかい。」


「普通だったら、できないはずなんだけど。」



少年は苦笑いを浮かべながら、彼女を見つめた。



「君にはわかったりする?どうしてG9が怪物を庇ったりしたのか。」


「愚問だな。G9は元々、平和のために人類によって命を守るように造られた存在なんだろう?だとすれば、答えは簡単だと思うんだが。」


「人々の命を守るはずのヒーローが、どうして怪物のことなんかっ。」



ふと何かに気がつき、少年は息を飲む。




「もしかして、怪物は...人間なのか?」






ーQ1 守るべきものは何か。

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