表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

伐倒

 たまらず後ずさるサムの背に、木の感触があった。

 先ほど、切り口を付けた木である。


 サムは、焦る心を落ち着かせ、切り口を見る。

 作業中の木は、ちょうど正面と背面の両方から切れ込みが入れられた状態になっている。

 正面の切り口は浅い。対して、背面の切込みは深く、おおよそ木の中心ぐらいまで達している。


(これは! いけるぞ!)

 サムは、歩み寄って来るゴブリンの位置を良く確認してから、正面の切り口に斧を振り降ろした。


 サムの一振りは、正面の切り口をわずかに広げるだけだった。

 その様子を見て、ゴブリンは、馬鹿にしたように笑い声を上げた。非力な生き物が無駄なあがきをしたとでも思ったのだろう。


 しかし、すぐにミシミシッと軋むような音がしたかと思うと、正面の切り口の方向に、木が倒れ始めた。

 ここでサムは、もう一度斧を振り降ろした。今度もわずかに切り口が広がった。


 ゴブリンは、自分の方に倒れてくる木を見て、驚きはしたものの避けるのは簡単だと考えた。しかし、それが油断に繋がった。

 サムが再度切り口を広げて、木が倒れるスピードを上げたことにより、ゴブリンの想定よりも速く木が倒れた。

 サムの狙い通りに勢い良く倒れた木は、ゴブリンの身体を押しつぶした。


「やったか?」

 サムは、いつでも応戦できるように斧を構えた状態で、押しつぶされたゴブリンに近寄った。


 そこには、倒れた木の下敷きになったゴブリンがいた。

 身体を押しつぶされ、緑色の体液をまき散らしたゴブリンは、しばらくピクピクと痙攣していたが、やがて身動き一つしなくなった。


 サムは、念のために、斧をゴブリンの首に振り降ろして止めを刺すと、ふぅと息を吐いた。

 ゴブリンの生態には詳しくないが、首が繋がっていない状態では生きてはいられまい。


 ようやく安心したものの、ゴブリンが一匹だけとは限らない。

 近くに仲間がいるかも知れない。

 サムは、証拠にちょうど良さそうだと、ゴブリンの首を手土産に村に帰ることにした。


 村に帰ったサムは、森林ギルドに駆け込んだ。

 手に持つゴブリンの首を見た受付担当は驚愕し、すぐにギルド長を含めた事情聴取が始まった。

 サムから事情を聴いた森林ギルドは、ハンターギルドとも協力して、森の調査を実施することになった。


 その後、調査により森の奥にゴブリンの集落があることがわかった。

 ハンターギルドは、討伐隊を結成し、ゴブリン達を根絶やしにした。


 幸い集落の規模は小さなものだったので、討伐隊に犠牲者は出なかった。

 しかし、森の奥のわかりづらい場所にあったため、発見が遅れて大規模な集落になっていた可能性もあり、そうなれば多数の犠牲者が出ていたことが予想された。

 そのため、早期発見に一役買った木こりのサムは、大いに感謝されたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ