魔法の教えは知識から
マーリンに、連れてこられたのは中央の中庭の中に建てられているプレハブ小屋だった。
連れてこられる前に寝室から図書室で借りた本を取りに行ったから本を片手に持っているけど、来るまでに何回か落としそうになった。
「い、意外と走るの速いね…うっ」
「ははは、それが、取り柄でもありますからね」
プレハブ小屋の中はあまりにも狭くて掃除はされてはいるが、何もないどころか、文字通りの何もないという感じでガランとしていた。
「ここで、やるの?」
「まさかぁ、このプレハブ小屋はカモフラージュのようなものです。」
そういうと、マーリンは隅の床を3回コンコンコンと叩くとガコンッという音がなって床がへこんでそこから横にスライドした。
「ここは、地下通路になっていてイージスフォレストのどの方向、方面からでも出入りができる魔王城の全員が知ってるエリアです訓練場は他にもありますが、せっかくなのでここを通って外でやりましょう」
「敵には気づかれないの?」
もし、気づかれたらいつ攻めれてても即対応が難しそうなのだけど、だけど、そうなっていればもう落城しているだろう。しかし、それがされてないという事はその対策が、出来ているという事だ。
「まぁ、気づかれることもありますが、ここに来られること自体が難しいですし、外からは専用クリスタルキーがないと通路が開きません」
この世界の近代化はどうなっているんだろう。スマホのようなものがあったり、専用のアイテムがあったりこんな近代化があるなら、単語の近代化も追いついていてほしかった。
「さて、出る場所は南に設定して…ワープ!」
一瞬風景がぐにゃりと歪んだと思ったら徐々に風景が変わり森になった。
「お、おぉ…」
「イージスフォレストに入るのは初めてですよね。近くに大きく開けた場所があるので、そこに向かいましょうか」
マーリンはそういうとスタスタ歩を進める。
心なしか足取りが重い感じがする。
そこから、しばらく歩くと人為的に出来たような開けた場所に着く。
周りの森とは違いやけに広い長方形のスペースに端には椅子でもあったのか引きずった跡がある。
「うん、ここに来るのも久しぶりだ」
さわやかな笑顔を向けて辺りに手を向けると土からボコボコと言う音と共に人型のゴーレムが出てきた。
「さあ、早速、魔術…じゃなくって魔法のレッスンです」
「魔術?」
「??????何の事でしょうか?」
うわぁ、何ともないように流したよこの人。
「まずは、その本の24ページ上から4行目のところです」
言われたままに本のページを開くとそこには初級魔法の事について書かれていた。
初級魔法はその名の通り一番扱いやすい魔法で火を起こして暖をとったり風を操り身体を乾かすなどの主に攻撃用ではなく日常に使うものだった。
「これをやればいいの?」
「確かに、書かれている通り攻撃には向いてはいませんが、それも使い方によるからね。見ていてください」
マーリンはゴーレムに向けて手を向けて一言いい放つ
「アイン!」
マーリンの手から小さな光がゴーレムに向かって飛んでいくしかし、その速度は遅く3メートルくらいの距離でもゴーレムに当たるには15秒もかかった。
それに、当たってもポッと音がして火が出たと思ったらすぐに消えてしまう。
「これじゃあ、流石に戦いとかじゃあせいぜい一人の目くらまし位にしかなりません。ですが」
再びゴーレムに向かい光を飛ばすと先ほどとは明らかに速度が違う。
一秒もかからずゴーレムに直撃してゴーレムはぐらりとよろめいた。
そこから、追い打ちをかけるような炎が弾けて、飛び散った炎弾が再びゴーレムに向かいゴーレムの身体は砕けた。
「これは…中級魔法?」
「いいえ、初級魔法でも使い方次第でこのような事もできます」
応用さえすれば誰でもできるというわけか。
「一応、ネタバラシをしておきましょう。あれは、初級魔法を組み合わせて出来るものです。まず、魔法で小さなボールを作りますそのボールは魔法防御に特化。しかし、物理に弱い欠点を敢えて加えます。ボールの中に火の魔法、風の魔法を何重にも施して後は、魔力を思いっきり放出することで敵に当たるまでの時間を短縮することができます」
「でも、何重にもやったら魔力の無駄遣いにもなるんじゃない?」
「いい質問です。確かに何重にもかけるという事は魔力量もそれだけ使うという事、貴方みたいに誰でも無尽蔵のような魔力を持っているわけでもない。だったら中級魔法のシアンを使った方が効率がいい…と思いますけど魔法にも弱点はあるもの」
魔法の話になると言葉遣いが敬語になったり友達感覚で話す感じがするけど、これが、意外と分かりやすい。
あえて、たとえ話を話すことで自分が例を言わなくてもあっちからそれに近い例を出してくれる。
「弱点と言うのはリキャストです」
「リキャスト?」
「初級魔法は魔力を練るのもイメージをするのも簡単なのでリキャスト時間はありません。ですが、イメージを強める中級魔法は魔力を練る時間やリキャスト時間がまぁまぁかかります。もう予め言っておきますが、上級のコルドが一番リキャスト時間が長いです。」
「つまり、威力が弱いものでもリキャスト時間がないという長所を活かすことで使い方さえマスターすれば心強い…と」
「ん、大正解♪」
パチパチと拍手をするマーリンその顔は明らかに子供扱いしているように思えて複雑な気分だ。
「でも、とりあえず、最初は工夫なしでやってみましょう。隣に来てくださいゆっくり時間をかけて教えてあげます」
マーリンに教えてもらったことは魔法のイメージが強ければ強いほど強大な魔法を撃てるが、それに見合ったリキャスト時間があるらしい。
初級魔法、中級魔法、上級魔法にはそれぞれ、名前が決まっており、初級からアイン、シアン、コルドという名前だ。
マーリン曰く、最上級の魔法はその人のイメージが極限まで達した時、撃てる切り札として使う魔法らしい。
リキャストが半端ないから相打ち覚悟か逃げる時に使うか使い時の判断を間違えると自爆してしまうとも言ってた。
「ふぅ…アイン!」
俺が放った光はゴーレムの中心に当たりゴーレムは中心部分が凍り付いた。
「ふむ、今のは魔力を放出して速度だけではなく狙った位置にまで当てましたね。どうやったんですか?」
「え?回転を加えたんだけど…」
さっき、マーリンの魔法弾をみた時、回転を加えればまるで吸い込まれるようにあてられると思った確か拳銃のライフリングという銃口に螺旋状を組み込むことにより銃弾が回転し狙い通りに銃弾が当たるとミリオタの友人が言っていた。
炎で焼身させるよりも簡単に生物を殺せるものがある。
前世の時に科学を軽く齧った時、液体窒素を実際にみたことがある。
その時、生物は『物質』であることに変わりないつまり熱容量があるという事あの時撃ったのは液体窒素を凝縮したガラスの銃弾を見様見真似で作り、それが森の開けた場所で使ったため見ただけではマーリンの魔法弾と似たものに見えるだろう。
液体窒素を飲み込んだ物質つまり生物はダメージが通らなくとも、極低温になる。
簡潔的に言うと血管が凍って死ぬという事だ。
「確か血管の細胞は5℃から下回ると活動を停止するって聞いたからね。人間の姿を取った魔人にも効果てきめんだと思ってね」
「………」
「マーリン?」
「あっ、いや…ずいぶん人体に対して興味があるんだね」
記録するのは大事それは何時まで立っても変わらない。
それからは、何発か改良を加えて魔力銃弾と中級魔法までクリアした。
それができた時には夜のとばりが落ちていた。