魔神軍の最大最強の狂犬
運ばれてきた薬膳料理をギリアに食べさせた後、朝食を食べてギリアの復活を待っていた。
「お、お見苦しい所をお見せしたどころかお世話になってしまいました事をお詫びします」
「まぁ、私も魔王様も放心状態になりましたから、気持ちは分かりますよ」
正直なところ、あのまま、目をこすってたら普通に目を傷めただろうからね…
「だけど、新しいのが出てるね∞の字に+ってついてるし後は、能力値の伸びがこれが、一般的なのかな?」
「いえ、普段ならもう少し伸びます。先ほど気を失う前にリネアが言ったように弱った人間などでは能力値の伸びや取得できる経験値は少ないでしょう」
そういうものなのか、じゃあ、経験値取得の魔法はあまり効果がないのか?RPGのような体力は少ないけど防御が硬くてすばしっこい上に逃げるので倒すのが難しいモンスターを倒しても効果がないのかな?
「ですが、これは異常です」
そう言ってが指をさしたのは魔力量+の+を囲むように指を回してる。
「実際に∞の能力値は測定板では測定が出来ないつまり、測定量を大幅に超えているという事です」
なるほど、測定が出来ないという事は実際は無限ではないという事かとなるとプラスの意味は測定量を上回り更に上に魔力量が上がったという事か。
「魔法使いタイプで能力値の伸びが普通以下となると戦闘は後衛…」
「うーん、この中で魔王様の模擬戦などをやって、魔王様の事で気に病むようなことが無い人物さえいれば…能力値だけでなくレベルもあげられますが…」
「リネア、その前に魔王様はクリスタルをお持ちなのですか?」
「あ…」
「クリスタル?」
はぁ、と呆れたと言わんばかりの表情でポケットから取り出したのは首飾りの形をした微かに青白く光る宝石だ。
続けてその操作をしながら、ギリアが説明してくれる。
そのクリスタルは仲間との通信、周辺の地図や、ゲームだけでなく調べものまで我が軍の最先端の技術の結集と言われたが簡単に言えばスマホそのものである。
「私は武具の開発もしておりますが、このように電子器具の開発・修理なども受ければ何でも受けますよ」
「何でもでは無いでしょう、開発・修理以外では戦場などでは中衛のサポートでしょう?」
「とりあえず、新品未使用の品を持っているので差し上げます。マトゥッターのアカウントなどは恐れながらご自分でお願いします」
マトゥッター…なんだろう…既にどんなやつか既に把握できた。
「とりあえず、立ち上げましょう。そして、ここは、生年月日でここは…」
リネアが説明をしながら自分のタブレットを操作しながら教えてくれる。
「へぇ~測定板のような画面を操作出来るんだ」
「技術がもっと進めば新しい機能を追加できますよ」
「…でマトゥッターのアカウントの設定はメールに送られてきた数字を…押して完了です…あ、私の方に個人チャットが…」
「ん?私の方にも…」
マトゥッター…まぁ、想像通りだね。一応鍵アカがいいよね、きっと。
「よし、でーきたっと…ん?」
リネアとギリアの様子が可笑しい。
目を見開いて画面を見ている。
ガタガタと食事を片付けて駆け出す。
「わっ!?食器は静かに戻してください!!」
「リネア、待って!」
急いで後を追うように思ったがテーブルにすぐに戻りますと置き手紙があった。
「速記でやったのかな…?」
仕方ないので、そのまま待つことにした。
「どうしたんでしょうね?あのお二人」
入れ替わりのようにキッカが大きい器を持って対面に座る。
「さあ、マトゥッターを見て急いで部屋をでていって」
「緊急会議なら魔王様も連れて行くでしょうに…」
キッカが持ってきたのは中太麺のうどんだ。
消化にいい朝食に合うのかイマイチ分からないけど、まぁ、美味しそうに食べてるから、いいか。
「兵站はいつも、キッカがやってるの?」
「まさか、昼食は母様とやって夜は母様と兄様がやるようにローテーションで回してます。まだまだ朝食だけで昼食では材料を揃えて下ごしらえくらいしか…」
「でも、その小さな手でキッカは私たちの健康のために食事を作ってくれるんだね」
「も、もったいなきお言葉…!」
顔を真っ赤にして、可愛い娘
「ここかぁ!!」
リネアが鬼のような形相で戻ってきた
「うわぁ!リネア!?どうしたの?」
「そ、それが、そのゲホゲホッ!」
リネアの後に続くように白髪の長身の男性が入ってきた。
「あ~ぁ、そんなに走ったらそれは、息を切らすよ。はい、深呼吸して、吸って~吐いて~」
「その…理由が…あな…たよ…」
「マ、マーリン様!?」
キッカが目を輝かせてマーリンと呼んだ男性に抱きつく。
「よーしよしよし、よく頑張ってるそうだね~飴ちゃんあげるよ~あーんして~」
「あーんっパクッ…ん~♪」
動作が子供っぽくて可愛いなキッカは…そして、マーリンって言ったあの男性は
「あっ、魔王様だ、覚えてる?生まれたばかりの君の世話をしてたんだよ~」
「えっと、自我が芽生えたばかりだから全く…」
「そうか~残念だね」
全く残念そうに見えない。
「マーリン、まずは自己紹介しなさい、不敬でしょ」
うわぁ…今までに見たことないくらい露骨に嫌そうな顔している。
「あぁ、そうだね…そんな顔しないでよ。そうだね…玉座の間で挨拶したかったけど、ここでいいか、キッカちゃん降りて、お母さんによろしくって言っておいてね~っと改めてこの度は魔王様として君臨した事を祝福致します。私の名はマーリン魔王軍の中で最高のバランサータイプでございます」
なんだ、結構ふざけたような感じだけど、しっかりと挨拶出来ているし、子供達にはああいう、感じが人気なのかな。
優しそうでいい人っぽいけど…なんだろう…なんか、見透かされていそうな、リネアのミステリアスな落ち着きを崩して更に自らもミステリアスな感じを漂わせている…いや、隠そうともしないな。
わざと気づかせているような、正直な所、不気味だな。
「さて、魔王様、執務室に行きましょう。マーリンも報告はそこで」
「はーい」
「リネア?なんか急かしてない…ってわわっ!いきなり抱っこしないでよマーリン!」
「ごめんなさいね。でも、歩調を合わせるために我慢してください」
執務室についても、リネアの顔はいつものようなクールさを失ったままだった。
「さて、報告でしたよね。えーっと何から話そうかな…」
しばらく、ブツブツと呟いたがよし!と言った後再び、口を開いた
「まずは、国々を巡って子豚、や牛などを買ってさっき養豚場に放したり牧場に移動させたりしたよ。後は、あっ、でもこれは些細な事だけど…まぁ、いいか話しても、帰って来る時北北東の魔人領を通ったんだけど、そこの魔人族に邪魔されたから周辺の魔人族を一掃した」
うん、些細なことじゃあないなそれ、むしろ、なんで些細なことと言えるんだろう。
顔色一つ変えず真顔で言っているのが、ガチで些細なことを言うような目をしている。
「魔王様、ごめんなさい、こういうやつなんです。我が軍の猟犬は」
「これをおじいちゃんは飼いならしたっていうの?」
「二代目にはつきませんでしたよ。俺は」
意外と地獄耳だったのか。
「でも、北北東の魔人を潰したとなると、その事があっちのトップにバレたらやばいんじゃないの?」
リネアから見せてもらった勢力図などを見るに、東方地域の魔人族を倒せる規模の勢力は内戦除いて魔王軍だけだろう他の魔人族や人族の勢力は離れている。
「そこは、安心してください。遺体は隠しましたし、部下をシェイプトランス…あぁ、分かりやすく言うと変装魔法ですね。それをかけたので、彼らが必死にいなくなった奴を探したりしない限りバレたりはしませんよ」
間違いないな、この、最後の将軍格のマーリン、猟犬ではなくて、狂犬だ吠えることなく相手に噛みつくから気づいた時にはかみ殺されていると感じる。
これだけは言える、この男絶対に敵に回したら勝てる気がしない。
「さて、報告は以上ですが、聞いたところによると、魔王様って底なしの魔力量らしいじゃないですか、それなら、今からでも大丈夫な、魔法訓練始めましょう。」
答えを言う前にすぐにお姫様抱っこをされ耳元で囁く。
「大丈夫、報告書は部下が今作ってます。それに、リネアの魔法説明は直感的なので擬音語が多くてとても、教えられるものではないので、私が適任です」