表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

あの夏の出来事

 ハッと意識を取り戻すと、俺は自分の部屋にあるベッドの上で横になっていた。外は薄暗い。どうやら、昼寝をしてしまったようだ。それにしても、やけに地味で現実的で長い夢を見ていた……。


 枕元に置いてあったスマホを取り上げ、ロックを解除する。画面には、「二○十三年八月九日」と表示されていた。


(……あれ? 今日って……八月四日じゃなかったっけ……?)


 ……勘違いか? 夏休みに入ってから、曜日感覚も日付感覚も完全に麻痺しているな、俺。むちゃくちゃ損した気分だよ。


 はぁー……と、深いため息が出た。夢の中で呑んだ酒は全然美味しくなかったし、食った弁当の味もイマイチだったし、起きたらやたらと日が経ってる気はするし……。昼寝するとろくなことがない。


 俺は再び寝転んで、仰向けになったままスマホをタップした。その時、メールボックスに赤丸で「1」と表示されているのが目に入る。


(……メール? 珍しいな)


 俺はいつもSNSを使ってやりとりをするので、メールの着信なんて滅多にない。あるとしても、大体が迷惑メールだ。多分これもその類だろうと思うが、一応見るだけ見ておくことにする。


『千笑です! 返事遅くなっちってごめんね! 登録お願い!』


 ……誰だよ千笑って。やっぱ迷惑メールじゃねーか。これあれだろ、返信したら出会い系サイトとかに誘導されて、むちゃくちゃ請求されるやつだろ。……そんな手に引っかかるかっての。無視無視。


 俺はメールをゴミ箱へ移し、スマホを放り投げた。その後、ゲームや漫画で適当にヒマを潰した俺は、何気なしに再びスマホを手に取ってみる。……そこにはまた、着信の表示があった。


『トモくん? メール届いてるかな? 見たら、返信ください』


 ……トモくん……って、俺のことか? 確かに俺の名前は知宏だけど、馴れ馴れしくすれば引っかかるってもんじゃないぞ。逆に不愉快だっつーの。俺は、すぐにメールを削除した。


 ……が、それからというもの、同じアドレスからやたらとメールが届くようになった。


『お願いだから、届いてたら返信してください』

『何度もごめんなさい。でも、トモくんから返信来ないと辛くて』

『悲しいです。悲しくて死にそうです。なんで無視するん?』

『あたしのこと、もう好きじゃないん? そうならそうって言って』

『返信くんないと、今からあたし……会いに行っちゃうから』


 ……しつこい。てこでも俺に返信させたいらしい。最近の詐欺って、こんなに手が込んでるのか。ここまで来ると、恐怖すら感じてくる。


 俺は友人の聡にこの件を相談した。すると、この手の迷惑メールは一度来たら最後、怒濤の勢いで増えていくという。……実際、聡にも経験があるそうだ。仕方なく、俺はアドレスを変更することにした。


 アドレスを変更したらメールは届かなくなったが、今度は見知らぬ番号から電話がかかってくるようになった。何か大切な事柄だったらマズイので、恐る恐る……俺は電話に出てみる。すると……


『トモくん……だよね? どうして連絡……くんないの……?』


 ……相手は可愛らしい声をした女性だった。……つか、あの迷惑メールの当人じゃねーか!! さすがに俺も頭に来て、声を荒げた。


「誰だよお前っ!! しつけーんだよっ!! もう二度とかけんなっ!!」


 俺はその電話番号を即行で着信拒否に設定し、履歴からも削除した。……一体、どこから俺の個人情報が漏れたんだ? 最悪過ぎる。


 その後、その女が会いに来るようなことはなく、この件は落ち着いた。……高校二年生の夏に見舞われた、腹立たしい出来事だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ