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Heart to Blade  作者: 朱夏人
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第8話

短いですが、一区切り。

動かなければ。

黒鐵を構え、進化しきる前にやつを殺さなければ。

しかし、腕にも、足にも力が入らない。

全身の傷が激しく疼き、心喰獣への戦意を削いでくる。

その時。



どんぐり ころころ どんぐりこ

おいけにはまって さあたいへん

どじょうがでてきて こんにちは

ぼっちゃん いっしょに

あそびましょう



聞き覚えのある声が、耳に響いた。

この場に似つかわしくない明るい歌詞。

だれもが知る童謡の一節。

澄んだ歌声に込められた心力が、俺の腕を、足を、心を包み込んだ。

確かな熱を持った光が、全身の痛みを癒していく。



黒鐵を握りなおす。

視線の先には、あともう少しで進化を完了させようとしている心喰獣。

さらに先には、両手を祈るように組み、青白い心力の光を放ちながら歌う海歌の姿。

身体から流れる血が止まり、傷が癒される。


「海歌…………ありがとう」


呟き、黒鐵を担ぐように構える。

沸き上がる心力と寄り添う海歌の心力が黒鐵に集まり、大気を巻きこんで轟音を立てる。

異変に気付いた心喰獣がこちらを向き、剣と盾を構える。


「行くぞッ!!」


叫び、力強く地を駆ける。

心なしか、海歌の歌声も強くなったように感じる。

その声に背中を押され、黒鐵を振り下ろす。


「一刀流━━━━鬼哭ッ!」


轟音を立てて振り下ろされた黒鐵は、構えられた剣と盾を両断して心喰獣の装甲に傷をつける。


「まだまだぁ!!」


一撃で決着がつくとは考えていない。

将軍級(ジェネラル)は今までで一番の敵。

武器を斬られた将軍級(ジェネラル)が武器を捨て、掴みかかってくる。

しかし、それを避けてさらに一歩。


「一刀流━━━━断空ッ!」


横一閃に将軍級(ジェネラル)の両腕が宙に舞う。

たたらを踏んで下がる心喰獣。

それでもまだ、俺を喰おうという執念を感じる。

将軍級(ジェネラル)の兜部分が開き、黒い光が集まり始める。

次の瞬間には黒いレーザーが襲い掛かってくるだろう。

避けなければ、俺は風穴を開けられて死ぬだろう。

だから、俺はさらに一歩を踏み込む。


「忍くん!」

「歌ってくれ!!」


海歌の叫びに一言。

今まで感じたことがないほどの力が溢れてくる。

独りで戦っていた時には感じられなかったほどの力。


「甘いん……だよおおおッ!」


放たれた光に、黒鐵を叩きつけた。






自分に出来るのは歌うこと。

でも、歌姫でない私にはどんな歌を歌えばいいのか分からない。

だったら、だれでも知っている童謡を。

私が出来る精一杯をしよう。


(自分の気持ちに正直に━━━━そうだよね、おばあちゃん!)


出来る限りの想いを籠めた私の歌は、忍くんの傷を癒し、再び立ち上がる力を与えてくれた。

私の心力タイプは、回復・治癒。

心機は持っていないけど、昔の人はそんなものなくても歌って、戦っていたのだ。

だったら、私だって!


立ち上がり、心機を構えなおした忍くんは、一息に心喰獣に近づくと、大きな音を立てて心機を振り下ろす。

私の歌で忍くんに届いた心力が、忍くんの心力と一緒になって心機と忍くん自身を纏っているのが分かる。

剣と盾を斬り、さらに両腕までもを斬る。


(あと、もう少し!)


その時、心喰獣に黒い光が集まり始める。


「忍くん!」

「歌ってくれ!」


私の叫びに返される言葉。

私は歌いながら、目の前の光景を信じられない思いで見ていた。

忍くんの顔を覆うほど太さのレーザーを。

眩しいほどの青白い光を放ちながら、忍くんの心機が切り裂いていた。


(すごい……、すごいすごいすごい!!)


歌声に力が籠る。

もう恐怖はない。

もう絶望はない。

これが守護騎士。

守護騎士と歌姫の戦い。


(がんばれ……がんばれ、忍くん!!)






「おぉおおおおおおッ!!」


放たれた黒い光に、自分と海歌の心力を纏い眩しいばかりの光を放つ黒鐵をぶつける。

俺の顔ほどもあるレーザーを、黒鐵は押し負けるどころか、少しも押されることなく切り裂いていく。

黒い光が途絶える。

黒鐵を下段に構え━━


「これで……終わりだ!!」


光の線が、心喰獣を両断する。


「一刀流━━━━瞬影ッ!」


圧倒的な光の奔流が、黒いモヤへと変わる心喰獣を押し流した。






俺の荒い息遣いだけが辺りに響く。

もう、黒い影はいない。


「護り、きれた」


いつしか海歌の歌声は止まっていて、身体を包んでいた心力の光は消えていた。

黒鐵がその姿を光に変えて消える。

駆け寄ってくる海歌の姿を見ながら、俺は意識を失った。

とりあえず、一番やりたかったことはやりました。

次回エピローグ。

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