第5話
今日は早めの投稿です。
もう1話挙げられるかな?
今回は海歌視点です。
彼は不思議な男の子だった。
寝顔はとても幼く見えるのに、古いものから新しいものまで体中に傷がある。
雨に濡れた服を脱がせた時にとても驚いたのを覚えている。
中には、抉られたようなものまであり、彼が壮絶な生活を送っていたことが分かった。
今の時代、身体に傷を負うようなことは、心喰獣との戦闘でしかありえない。
人と人との戦闘━━戦争は、ただいたずらに貴重な戦闘資源を浪費する行為だからだ。
そうなると、彼の正体は一つしかない。
(この子は、守護騎士なのかな?)
心喰獣と戦うのは守護騎士と歌姫である人たちだ。
特に、守護騎士の人たちは直接、心喰獣と戦うため怪我をしやすい。
それでも、歌姫からの支援で防御力や自己回復力は上昇しているし、治療専門の歌姫にかかれば、あとを残さないで治療することも可能なのが現状だ。
それが、ここまでひどい傷が残っているとなると、十分な支援を受けずに心喰獣との戦闘を行ったか、治療専門の歌姫が近くにいなかったかのどちらか━━あるいは、その両方。
もちろん、歌姫見習いである海歌にはそこまで考えることは出来ないが、少年の正体を朧気に推測することは出来た。
彼が目を覚ました。
一日中眠っていた時は、死んじゃわないか心配になったけど、目が覚めてよかった!
でも、傷だらけで動くのも辛いはずなのに、起き上がってお礼を言おうとしたときはびっくりしちゃった。
すぐに痛みで力が抜けてベッドに横になってたけど、おばあちゃんと一緒に怒っちゃった。
そのあと、私のおばあちゃん特製卵粥を食べると、そのまま眠ってしまった。
もちろん、身体を動かすこともままならない彼にスプーンを持たせることはせず、いただきますからごちそうさままで食べさえてあげた。
少し恥ずかしそうにしていたけど、その表情が可愛くて、一人っ子の私は弟が出来たみたいで嬉しかった。
食べながら少しおしゃべりもしたけど、私と同じ15歳だったことには驚いた。
絶対、年下だと思ってた!
彼の名前は、御上 忍、というそうだ。
私の海歌って名前に音が似ていて親近感が沸く。
出会った頃から年下だと思ってたから、つい忍君って呼んじゃったけど、嫌そうな顔してなかったし、大丈夫だよね?
忍くんは、傷が治るのがすごい早い。
あんなに傷だらけで血を流してたのに、3日もしたら自分で起きて歩き回れるようになっていた。
ご飯も自分で食べられるようになってしまった、ちょっと残念。
(楽しかったのになぁ……)
私がおばあちゃんの家にいられるのも、あと2日。
離れるのは寂しいけど、歌姫になるのは私の“夢”だから。
(そういえば、忍くんは傷が治ったらどうするんだろう?)
忍くんが何をしていたのか、どこに住んでいるのか、そもそも両親がいるのかすら分からない。
おばあちゃんは、自分から話すまでそっとしておきなって言ってたけど……
ある時、思い切って聞いてみたけど答えずらそうにしていたから、おばあちゃんが正しかったのだと分かった。
まあ、そのおかげで名前が分かったのだけど。
私の通う学園、国立第1奏者養成学園では、1年目のゴールデンウィークに課題が出ない。
しかし、本格的な授業がこの後から始まっていくため、予習をしておかないとついていけなくなるらしい。
将来的に心喰獣と戦っていくため、生半可な覚悟な見習い━生徒や学生ではない━はすぐに脱落していく。
持ってきていた教科書をパラパラと呼んでいくが、専門用語が多くて目が回りそうになる。
パサリと音を立てて教科書に挟んであった紙が床に落ちる。
そこに書かれているのは、入学したとき一番初めに受けさせられた検査の結果だ。
氏名:奏 海歌
所属:巫女専攻科
心力量:Aランク
心力タイプ:回復・治癒
使用心機:なし
心喰獣討伐実績:なし
暫定ランク:Eランク
私は心力量が多かったみたいで、普通ならFランクから始まるところをEランクスタートとされていた。
この検査は、先輩守護騎士や歌姫の協力のもと、膨大なデータをまとめることで結果を出していると説明された。
これを基に、基礎課程が終わるとそれぞれのタイプに特化した授業が始まるそうだけど、今の私には遠い話だ。
その後、分からないところを忍くんに聞き、分かりやすく説明してもらいつい、鼻歌を歌ってしまうということがあったけど、楽しい時間を過ごせた。
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