第3話
今日は少し早めに。
このまま毎日更新していきたいと思います。
「海歌は、いい声をしているね」
「ありがとう!おばあちゃんにも言われるんだ」
「いい歌姫になるよ、海歌は。」
「ほんと?!そうだったらうれしいなぁ」
歌姫は、心喰獣との戦闘を支援する以外に“心喰獣”対策の一環としてライブを開催したりしている。
まだ世界が平和だったころ、アイドルと呼ばれる人たちがいたそうだが、それと同じようなものだ。
歌姫のライブはとても人気で、有名な歌姫になると多くのファンがいるくらいだ。
「そういえば、歌姫の事や心力の事って、専門的なものだって学園で言われたけど、忍くんは詳しいんだね」
「まあ、色々とね。関係者ってだけだよ」
「本当かなぁ?もしかして忍くんって……」
ゾワッ……
背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
心臓が打つスピードを上げ、冷や汗が頬を伝う。
この感じ……まさか
「どうしたの、忍くん?顔色が悪いよ。どこか具合でも……」
「海歌、静江さんを連れてすぐに逃げて」
「え、逃げるって、突然なに?」
イヤな感じが強くなっていく。
間違いない、奴ら、心喰獣だ!
「奴らが、心喰獣がくる!!」
なんでもっと早く気が付かなかった?!
辺りがこんなに静かなことに!
「急いで!はやく!!」
「え、でも、急に言われたって。だって、ほら!心喰獣って人の多いところにでやすいんでしょ?!こんな私たちしかいないようなところに出るなんて……」
そう。
心喰獣はエサが多い、つまり人が多いところに出現しやすい。
だから、普段ならこんなところに出現するなんてことはあり得ない……ある場合を除いては。
心喰獣にとって人がエサであるのなら、そこに優劣があってしかるべきだ。
ここでいう優劣とは、心力の質と量。
よりよいエサがあれば、そこに出現することが確認されている。
実は、さっき海歌に話した歌手の話には裏がある。
結果的に心喰獣による被害は少なかったが、襲来した心喰獣たちはコンサートに来ていた沢山の人たちに襲いかかったのではなく、歌っていた歌手に襲いかかったのだ。
結果、コンサート会場にいた人たちの大多数が逃げられ、歌手を含めそれを護衛していた人々が喰われることとなった。
もちろん、最後まで心喰獣と戦っていた人たちは歌手の歌に勇気づけられ、普段では考えられないほどの心喰獣を屠り、逝った。
だから、海歌に話した内容は間違いではないが、話の表しか話していない。
現在の歌姫にそういった役割もある事は、実際に心喰獣と戦う者たちのなかで暗黙の了解となっている。
それよりも、今、心喰獣が現れた原因は明らかだ。
海歌の鼻歌だ。
鼻歌だけでも心に響いてくる声。
歌姫見習いということは恐らく、豊富な心力。
質と量がそこらの人とは違うために、心喰獣に見つかった。
しかし、今までも彼女はこの家に来ているはずだし、今回だけ見つかるといったことはおかしい。
つまり、別の要因もあるということだ。
それは間違いなく……
「俺……だよな」
あの晩、殲滅した心喰獣が脳裏に浮かびあがる。
10や20といった数ではなかった。
明らかに50近くは斬った覚えがある。
大量の心喰獣が出現した直後に心力を振りまくと,
心喰獣が呼び寄せられる可能性が高いと言われている。
今回は、そのパターンだ。
「え?」
「心喰獣が出たのは、間違いなく俺のせいだ」
「なんでそんなこと言うの?!」
「あの晩、俺は大量の心喰獣と戦った!目の前にいた奴らは倒したけど、俺も力尽きた。打ち漏らしがいたのかもしれない」
「じゃあ、やっぱり忍くんは……」
「ああ、俺は守護騎士だ」
イヤな感じが近づいてくる。
このままだと間に合わなくなる。
「多分、その時の奴らだ」
実際は違う。
あの時の奴らは、間違いなく殺し尽した。
でも、本当の事を言ってしまうと、彼女は罪悪感に囚われてしまう。
折角のきれいな声で、歌を歌えなくなってしまう。
そんなことは、あの声を聞いた者としては、なにより、
「守護騎士が歌姫を守るのは当然のことだしな」
小声で呟く。
「ほら、早く逃げて!間に合わなくなる!」
「でも!忍くん、武器を持ってないよ。それじゃあ、戦えないよ!」
「大丈夫…………武器なら、ここにある」
俺の戦意を感知して、心機が起動していく。
「来い、黒鐵!」
右手に青白い心力の輝きが集まり、一本の黒い刀が現れる。
刀身から柄まで、光を飲み込むような黒が、刀の形をしている。
「いま、なにもないところから刀が……」
「そんなことは今どうでもいい!武器ならあるから、早く逃げて!」
「わ、分かった!」
俺の強い口調に弾かれたように家の中にはいる海歌。
静江さんを探しに行ったのだろう。
これで大丈夫だろう。
あとは……
「心喰獣のくせに、空気を読むじゃないか」
庭先に現れたやつに向かって声をかける。
勿論、答えはない。
いつも通りの黒い霧をまとった身体に赤い瞳。
狼のような形状のそいつは、5種類に分けられている中でも最弱の兵士級。
それが3体。
「リハビリにはちょうどいいじゃないか」
そう呟くと、心機、黒鐵を正眼に構え、俺は心喰獣と対峙した。
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やりたいことまで、あともう少し……




