第2話
説明回です。
お付き合いください。
次の日も相変わらずの晴天で、小鳥のさえずりが心地よい日だった。
心力も回復して、あとは身体が治れば完全回復だ。
これからのことも一つ、当てが出来た。
都市では、奴らと戦う為の部隊があり、常に入隊者を募集しているらしい。
とりあえずはそこへ行くことになるだろう。
「忍くん、今ちょっといいかな?」
返事をすると、襖を開き海歌が入ってくる。
手には一冊の本を持っていた。
「休んでるところごめんね。忍くん、昨日勉強できるって言ってたから、ちょっと聞きたいことがあって……」
差し出してきた本のタイトルは『心力基礎Ⅰ』と書かれていた。
奴らがはびこる現代とはいえ、さすがに一般学生が心力関係の科目を学ぶことはほとんどない。
あるとすればそれは、奴らと戦う事を目標にしている学生たち。
つまり、『歌姫』と『守護騎士』の見習いだ。
「いいけど、海歌ってどっちなの?」
「さすがに“心喰獣”と真正面から戦えないよ“戦姫”様じゃないんだし。私は、“歌姫”の方だよ。歌は大好きだからね!」
この世界は“心喰獣”、通称“ナイトメア”の脅威と戦っていた。
奴らは突如現れ、人々を襲っていった。
なぜ現れたのか、どこから来たのかは分かっていない。
明確なのは、それが人類の“敵”であること。
様々な種類がいるが、共通しているのは黒い霧をまとった身体に、赤い瞳。
人の心を侵食し、喰らう獣。故に“心喰獣”。
奴らに襲われた人は、塵のように消え、その人がいた痕跡は残らない。
そんな奴らに対抗するため生みだされたのが、歌姫と守護騎士だ。
彼らは、人が持つ“心力”とよばれる力を使って、人類を守るためにナイトメアと戦っている。
『心力基礎Ⅰ』は、その心力をどう扱えばいいかの基礎が書かれている教科書だ。
「それで、海歌はどこが分からないの?」
「あのね、心力ってそのまま“心の力”じゃない?それを心機に通して使うって書いてあるけど、心を通すって感覚がいまいち分からなくて」
心機、これはナイトメアと戦う上でとても重要な要素となる。
心機の開発で、取り戻された都市があるくらいだ。
心機は、心力に反応する感応石を核にして作られている。
通された心力を感知し、増幅することで、心機開発以前よりも少ない労力で心喰獣を倒すことが出来るようになった。
「そもそも、“心力を心機に通す”って考え方が違うよ。多分、学園に戻ったら教えられるかもだけど、基本的に奏者の心力に反応するように作られているから、心機側が感知してくれるんだよ」
心機を使う人は“奏者”と呼ばれ、直接“心喰獣”と戦う者を守護騎士、後方から支援する者を歌姫と呼んでいる。
「心機が開発されるよりも昔の話だけど、有名な歌手がコンサートをやっていた場所では、心喰獣の被害が少なかったんだって。つまり、歌姫見習いの海歌は、どうやって心機に心力を通すかじゃなくて、どうやって自分の歌に心を籠められるかを考えた方がいいよ」
心喰獣は、人の心を侵食する。
それは絶対だが、どんな人でも簡単に侵食できるわけではない。
不安、恐怖など、心が弱っている人が侵食されやすい。
つまり、心を侵食されない為には、心を強く持てばいいのだ。
しかし、簡単にそんなことが出来れば人類はここまで心喰獣の脅威に怯えていない。
怯える人々を助ける存在、それが“歌姫”なのだ。
心の籠った歌を聞くと感動するように、歌に心力を籠めて伝えることで、人の心を奮い立たせて心喰獣に対抗できるようにする。
それは“守護騎士”に対しても同じだ。
心喰獣と直接戦う彼らの心を守り、励ます彼女らの力があってこそ、守護騎士は前に出て戦えるのだ。
「見習いが最初につまずくところだけど、そんなに難しく考える必要はないんだよ。ありのまま、どんな時も自分らしく歌うこと、これが歌姫に必要とされていることだから」
「へー、忍くんって凄い!とっても分かりやすかった!そっか、難しく考えすぎていたんだね。自分らしく、か……」
納得がいったのか、笑顔を浮かべて鼻歌を歌い始める海歌。
澄んだ彼女の声が紡ぐメロディーは、とても心地よく、俺の心に響いていた。
感想、ご指摘お待ちしています。




