第1話
修正しながらの次話投稿です。
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その後、女性が作ってくれた卵粥を食べた俺は、そのまま眠りにつき、目覚めたのは翌日の昼頃だった。
障子からは、昨日と同じように明るい光が透けている。
痛みは多少、収まったものの、完全回復には程遠く、起き上がる事すら困難だ。
「これから、どうしようかね…………」
そんな呟きが漏れる。
帰る場所はもうない。
全部奴らが蹂躙していった。
楽しい場所や安らぐ場所ではなかったが、それでも俺の居場所だったところだ。
だから、きっちり奴らは殺しつくした。
そのために俺は育てられ、鍛え上げられたのだから。
「あ、おはよう!あれ?もう、こんにちは、か!あははは」
明るく笑う彼女は、真っ白なワンピースに身を包み、卵粥の器を手に持っていた。
「お昼だし、何か食べたほうが治るのも早いかなって、グットタイミングだったね!」
そういう彼女は、器を置くと俺を布団から起き上がらせる。
鈍い痛みに歪みそうなる表情を意志の力でねじ伏せる。
「はい!いっぱい食べてね」
そう言うと、当たり前のようにスプーンを差し向けてくる。
昨日もそうだったが、まともに身体を動かせないとはいえ、何となく恥ずかしい。
しかし、香るいい匂いに裏切り者の腹は音を立て、早く食べろと訴えてくる。
「ありがとう。いただきます」
観念した俺は、差し出されたスプーンに口をつけるのだった。
「そういえば、どうしてあんなところに倒れてたの?」
食事が落ち着くと、少女はそう聞いてきた。
勿論、正直に全てを話すわけにはいかない。
殲滅したとはいえ、奴らが住んでいる家の近くに現れたなど。
十中八九、奴らの狙いはアソコだった。
奴らに明確な意識があるのかは分からないが、明らかに不自然な現れ方だった。
そもそも、奴らはその特性故、人の多いところに現れる。
この近くに、そんな場所はない。
ならば、アソコを狙った襲撃と考えるのが自然だろう。
また奴らが現れなとも限らない。
大都市なら防護シールドがあるだろうが、都市から離れているであろうこの場所にそんなものは無いだろう。
余計な不安を煽る要因になってしまう。
「えっと、聞いちゃいけないことだったかな?」
考え込んでいると、少女が不安そうな顔をしながら聞いてきた。
「いや、そんなことはないんだけど。どう説明しようかな、と」
「聞いた私がいうのもアレだけど、気にしないでね?言いたくないことだって有るだろうし……ごめんね」
「いや、君が謝る必要はないよ。色々と事情があって……俺の方こそ、ごめん」
「海歌、“君”じゃなくて海歌って呼んで」
唐突な名乗り。
確かに、助けてもらったのに自己紹介をした覚えがない。
「俺は忍、御上忍だ。ちょっと遅いけど、よろしく“海歌”」
「うん!私は、奏海歌です。よろしくね、“忍”くん!」
これが、彼女と俺の出会いだった。
あれから3日、海歌と海歌の祖母である静江さんに助けられながら身体を休めていた。
アソコでの生活のお陰か、回復力は二人が驚くほどで、一人で歩き回る事が出来るほどになっていた。
戦闘をするには不安が残るが、日常生活を送るにはほとんど支障はないだろう。
そうなると、ここにいる理由はなくなる。
自分がこれからどうすべきなのか、どこにいくのか、なんてことは検討が付かないけど、俺に出来ることは奴らを倒す事だけ。
ここを出ても何かしらの方法で、奴らを倒す日々を送るのだろう。
俺は、それしか知らないのだから……
「こんばんは、忍くん。お月様がきれいだね」
「こんばんは、海歌。そうだね。きれいな満月だ」
縁側で月をみながら物思いに耽こんでいると、寝間着代わりの作務衣に身を包んだ海歌が隣に座ってきた。
「あ~あ。お休みもあと2日かー。おばあちゃんの家から離れたくないよー」
「学園だっけ?それは仕方ないんじゃないかなぁ」
海歌は近くの都市にある学園に通っていて、5月のゴールデンウィーク休みを利用して祖母の家に遊びに来ているのだ。
その休みもあと3日、都市に帰ることも考えるとこの家にいられるのは、あと2日だけなのだそうだ。
俺もその頃には、この家を離れて生活していく術を探さなくてはいけなくなるだろう。
「そうだよねー。友達に会えるのは楽しみなんだけどね」
生粋のおばあちゃんっ子らしい海歌は、この家から離れるのがよほど心残りらしい。
実際、数日しか過ごしていないが、この家はとても居心地が良かった。
「そういえば、忍くんって私と同じ15歳なんだよね。学校には行ってないの?」
「あー、そうだね。学校には行ってなかったな。まあでも、色々と教えてくれる人はいたから、そこそこ勉強は出来る方だと思うぞ」
「そうなんだ!」
他愛のない会話を続けながら、心地よい時間が過ぎていった。




