第9話
翌日。
俺は、今までと同じ部屋で横になっていた。
初めてここに来た時と同じように限界を超えて酷使された身体は、自分で動くこともままならない状態だ。
あの時との違いといえば、身体に傷がついていないことだろうか。
いつかの時と同じように、差し出されるスプーンに食いついている。
「忍くんはいつもボロボロだねぇ」
「好きでボロボロなんじゃないんだけどな」
「そうだよね。私たちを護るためだもんね。……本当に、ありがとう」
優しい笑みを浮かべながら次の一口を差し出してくる海歌。
前にも増して何故か気恥しい。
「別に……俺が好きでやってることだ。一宿一飯の恩も、命を助けてもらった恩もあるしな」
「恩がなかったら助けてくれないの?」
「…………別に、そういうわけじゃないけど」
「ごめんごめん。ちょっと意地悪だったね」
ペロッと舌を出して片手で謝る海歌に、ため息を返す。
多分、心喰獣との戦闘の余韻が残っていてちょっとした興奮状態にあるのかもしれない。
そういえば、はじめて心喰獣と戦った時は、そのあとずっと黒鐵を振っていたな。
懐かしい記憶が脳裏に蘇る。
「はい!これで最後だよ」
「あむ…………ありがとう。ごちそうさま」
「はい、お粗末さまでした!じゃあ、私はおばあちゃんに呼ばれてるから、またあとでね。ゆっくり休んでてね」
「分かってるよ。それに、動きたくても動けないよ」
「それもそうだったね」
笑い声と共に部屋を出る海歌。
明日には学園に戻るだろうから、あの声が聞けなくなると思うと少し寂しさを感じる。
俺はもう少しここでやっかいにならないと何も出来ないから、まだ静江さんに迷惑をかけるな。
昨日の心喰獣との戦闘。
死を覚悟したことは何度もあるけど、あそこまで近く感じたことは数えるほどしかない。
そこで聞いた海歌の歌。
戦場に似つかわしくない童謡だったが、その歌に籠められた想いは本物で、あの歌がなければ3人で生き残ることは出来なかった。
見習いであの心力量。さらには、重宝される治癒・回復タイプ。
引く手数多なのは間違いない。
学園では苦労するんだろうな。
「まあ、俺には関係ないことか」
彼女とは、ここでお別れ。
そうそう再会することもないだろう。
彼女は彼女の、俺は俺の進むべき方向へ進んでいく。
そのためには。
「ひとまず、寝るか」
身体を休めること。
それが俺のするべきことだ。
これでひと段落です。
やりたいことはやって、伏線とかばらまいたままですが、思いつきで書いてきたのでとりあえずはここまでです。
読み返して、色々アレな所があるので直していくとは思いますが、続きは少し間が空くと思います。
それでもいいという方、感想・ご意見お待ちしています。




