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神切-KAMIKIRI-  作者: haimret
第2章 境都編 前編
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14話

 四方から一斉に飛びかかってくるフォレストウルフの群れに対してアルエはそう叫ぶと前に出る。


「背中は任せたっ!」

「任された」


 アルエはそう言うと剣で一部の狼を切り裂く。剣で薙ぎ払えなかった分は盾をぶつけて吹き飛ばす。


 一方で、カミキリはアルエの反対側を向くと刀を抜く。その一太刀でフォレストウルフを薙ぎ払った。体が2つになったフォレストウルフは幻のように掻き消える。


「どうした? 来ないのか?」


 無傷で最初に飛び込んできた狼たちを切り払ったカミキリはいつもの様子で言った。一斉に飛びかかった筈なのに傷一つついていない相手にフォレストウルフたちは動きを止める。


「去れ」


 動揺しているフォレストウルフたちにカミキリはにらみを利かせ、いつもよりも低い声で威嚇した。カミキリが放つ気配に恐れをなして逃走を始める。アルエとにらみ合いをしていた狼たちもカミキリの気配を感じ取ったのか即座に同じように森の中へと消える。


「何とかなったか」


 フォレストウルフが去って行くのを見て、アルエは一息つく。カミキリは微妙な顔をした。


「どうかしたか?」


 カミキリの表情を見てアルエはたずねる。


「いや。魔物は切ると消えるんだな、と。カシウス……一緒に試験を受けていた奴から聞いたんだが改めて実際に切ってみると幻でも見ていたかのようでな」

「ん? ああ。もしかして外から来たのか。それならばその疑問は分かるな」


 アルエは納得するとカミキリは言った。


「いや。最初にいた所は魔物を切っても死体が残ってた上に溢れていたからな」

「何?」


 カミキリの言葉でアルエは眉間にしわを寄せる。


「ああ。迷宮の通路が詰まるくらいには押し寄せていた。生きているのも死体も無差別に押し寄せる姿は肉の壁といってもいいかもしれない。それくらいに明らかに異常な状態だった」

「むぅ」


 アルエは考え込む。


「それでミノタウロスやらが出てきて、2人が負傷したから緊急事態故に迷宮を切った」

「ミノタウロス。迷宮を切った……か。は?」


 アルエはカミキリの言葉を口にするとさすがにおかしいことをつぶやいていることに気が付いたのかきょとんとした顔をする。


「ん?」


 カミキリも分からない分からないと言った感じで頭をかしげる。アルエは心を落ち着けるように深呼吸するとたずねた。


「まず聞いていいか?」

「いいぞ」

「ミノタウロスが出たのか?」

「ああ。牛頭の人型の怪物がミノタウロスでなければ別だがな」


 カミキリはそう言うとアルエはうなずく。


「そうだな。迷宮内で牛頭の人型に出会うとしたらミノタウロスであろうな。そもそもそこでそこまで危険な魔物は初心者迷宮で出るはずがないんだが」

「それは言い切れるんだな」


 まるで必ず出てこないと言い切れるような雰囲気にカミキリは言った。


「ん? ああ。詳しくは言えないが、とある契約で探索者の訓練用迷宮ではある程度の魔物しか出てこない様になっているという事だけは言っておこう。そういう意味ではミノタウロスは出てこないはずだ」

「なるほど」

「それよりも迷宮を切っただと。つまり、さっきの切り跡はカミキリが?」


 気になる話ではあるが、それ以上に気になっていた言葉にアルエはたずねる。カミキリはうなずいた。


「緊急事態だったからな」

「急いでいたのは分かるが……というか、本当にどうやったんだ」


 カミキリがそう言うと呆れた様にアルエはつぶやいた。


「どうやったと聞かれてもな。集中すれば迷宮の壁でも切れるぞ?」


 そういってカミキリは手で空気を切る動作をする。だが、アルエにはどうすればあそこまで複数の階層を切れるのか分からないといった表情をされる。


「上だっ!」

「っ! ぐぁっ!」


 カミキリが突然叫ぶと同時に何かが無数に降ってくる。


 アルエはその声に反応して横に飛ぶが、間に合わずに上空から降ってきた物にぶつかる。カミキリは斜め上の方に飛び跳ねた。


「はぁぁぁぁぁぁっ!」


 降り注ぐ何かに対してカミキリは体に力を入れて甲体を発動させる。至近距離の銃弾すらも無傷であるはずの体に傷がつく。鞘で体の中心だけ弾きながら木々を足場にどんどん登って行き、木々の上のはるか上空へ跳び上がる。


「何もいない?」


 下を見ても木々以外には何も存在していない空間にカミキリは頭をかしげる。上空にいるために飛び去って行った巨大な鳥や飛行できる生物も警戒するがいなかった。


 上昇が終わり空中で一時的に静止するとカミキリは自身の体に刺さった物を引き抜く。


「種か? これは」


 カミキリが頭をかしげるのも無理はなかった。硬い殻に覆われたそれは木の実のようであった。不安定な状態のまま木の実を軽く投げると刀を抜く。木の実は真っ二つになることなく横の方へ飛んで行った。


「硬いな」


 カミキリは不安定な足場であっても普通の木の実の殻くらいであれば、余裕で切れる。


 しかし、現実は弾かれるのみで真っ二つになることなく、木の実はそのまま飛んで行ったのである。そんな状況からあることがカミキリの脳裏に浮かんだ。


「そういう事か」


 上空を落下しているだけのはずなのに先程のような正体不明の攻撃が来ていない事。体にわずかに

刺さっていた硬い木の実。


「ふっ」


 あと少しで先程飛び出した場所に入るという所でカミキリはあることを見極めるために刀を抜く。鞘は腰に外れない様に固定する。固定を終えると刀を持つ手を片手から両手に持ち替えて体を捻る様に力を溜めると先程飛び上がった樹に向かって刀を縦に振り抜いた。

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