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神切-KAMIKIRI-  作者: haimret
第2章 境都編 前編
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4話

 カミキリは受付のエトナの言った通りに置くまで進むと広い場所に出るとつぶやいた。


「どうなってるんだ?」


 目の前の光景に自然と言葉が漏れるのも無理はなかった。修練場と言われたその場所は木の床と壁、天井があり、室内であるという事は分かるが、その規模がおかしかった。天井はカミキリが目を凝らすことでギリギリ見え、壁に至っては通ってきた出入口の所に見える壁以外は全く見えない。床の方も踏んでいる感じは硬い木や地面なんかよりもかなり固い。


 そして、何よりもカミキリが疑問に思ったのは最初に入ってきた建物よりもはるかに大きく見える事であった。


「ここは修練場でもあるが、迷宮の内の1つを繋げてるんじゃ」

「そうなのか。ん?」


 そんな広すぎる空間でカミキリが呆然と目の前の光景を眺めていると後ろから渋い男の声がカミキリの疑問に答える。カミキリが振りかえるとそこには金属鎧を纏った初老と思わしき男がカミキリと同じように出入口の方から出てきているところであった。


「あんたは?」


 カミキリは気配を感じさせなかった初老の男に対して警戒するように身構える。男は警戒するカミキリに対して笑った。


「ふははっ。そこまで構えなくとも今は何もせんぞ」


 男はカミキリとは裏腹に全く警戒した様子もなくそう言うとカミキリは警戒を解く。


「すまない」

「気にしとらんぞ。わしが近づくと勘のいい奴らは良く身構えるからの。それよりもこれからの試験が楽しみになったわっ!」


 陽気にそう言うと男は歩き出す。そこから少しした所でカミキリが動いていない事に気が付くと振り返った。


「ほら。着いてこい。こっちだ」

「分かった」


 男に促されるままにカミキリは後をついて行く。男とカミキリは徒歩というには早すぎる速度で移動する。カミキリはしばらく後を追っていると6人の人影が見えた。


「うむ。……着いてこれるか。これは有望じゃの」

「何か言ったか?」


 男は引きはがされることなく、後を着いてこれるカミキリに対して小さくつぶやく。男が何か言った事は分かっているのかカミキリがたずねた。


「いや。年寄り特有のちょっとした考え事じゃよ。最近物忘れが多くてな」

「そうか。無理しないようにな」

「むぅ。純粋に心配されたのは久方ぶりじゃな。大丈夫じゃ。それよりも行かなくていいのか?」


 カミキリが純粋に心配した様子で男に言うと男は少し困惑するが、男は人の集まっているところを指さした。指さした方を見ると中心には男と同じように全身を鎧で身に纏った人物が周りの者たちを集めている様であった。


「集めてるみたいだな。ここまで案内してくれてありがとうな。えっと」

「ギリエルじゃ」

「そうか。ギリエルか。また後でな」

「おう。この試験に受かればわしの出番じゃから楽しみにしておれ」

「ああ」


 カミキリがそう言うと男ギリエルは他の試験を受ける者たちやカミキリの邪魔をしない様に距離を取る。


「ギリエル。名前からして神人なのは分かるが……何者だ?」


 カミキリは小さくつぶやいた。カミキリの知る限り神人は基本的に人の上位互換として扱われることが多い。それ故に神の使徒である天使の名前の五感に近い何々エルといった感じの名前が使われるのである。そして、その中でも特に強い者や影響力の強い者は実際に存在したと言われる有名な天使の名前を襲名するのが習わしであるとカミキリは聞いたことがあった。


「まぁ。今はそれはいいか。それよりも試験と言っていたが何をするつもりなんだ?」


 カミキリは動作だけで呼んでいるように見える鎧の人物の元へ近づきながら試験の事を考えてつぶやく。この場所はただ広いと言うだけでこれといった特徴はない。カミキリと同じように試験を受ける者は今も黙って立っている鎧の人物を除き、自分自身を含めて6人であると予測して観察する。全員が集まると鎧を着た人物が口を開いた。


「これで全員だな。これより探索者認定試験を始める」


 フルフェイスの兜によって男か女かは分からない声でこの場に居る全員に向けて話しかけた。その声に全員が鎧を着た人物を見る。


「いきなりで悪いんだが、その試験ってのは何をするんだ? 結局、受付でもほとんど説明もなしにここに集まればいいって言われただけで迷宮に入るための視覚については何も聞かされてないんだが?」


 青年の問いにカミキリを含めた他も同意なのか話を聞きながらも、静かにうなずく。鎧の人物は青年の質問に丁寧に答える。


「ふむ。それについては今から説明する所だ。私の事は終わるまでは試験官と呼んでくれ。本来は説明してから言うべきではあるが、他に何か聞きたいことはあるか?」


 鎧の人物もとい試験官がそう言うと周りは特に質問することはないのか手も上がらない。


「よし。これから試験の内容を発表する。試験は大きく2つだ。1つ目は実力試験。2つ目は迷宮内での模擬試験だ」

「ふぅん。ならここでするのは……」

「その想像の通り、ここでするのは実力試験だ。ここでは私と模擬戦をしてもらう。その前にだ。余分な者は減らさせてもらおう」


 試験官に対して来やすい感じで先程質問をしていた青年が口を出すと試験官はそれを肯定する。それと同時に纏う空気が一変する。粘度の高い液体の中に入っているような、まるで重い何かに押しつぶされそうになる感覚に陥る。


「ほぅ。3人……か。今回は豊作だな」


 カミキリはいきなりの事に驚いた表情はするが、全く苦にした様子はなかった。その様子を見て試験官は喜色の声を漏らす。試験官の近くではカミキリを除いて最初に質問した男と全体の中で一番背の小さいローブを着た子供が辛そうにはしているもののしっかりと耐えて立っている。それ以外の3人は立つことすらままならずにその場に倒れるか立ち上がる事も出来ずに地べたを這いずっている。


「ふむ。ここまでだな」


 数分ほど経ってから試験官はプレッシャーを放つのを止める。ギリギリで耐えていた子供はその場にへたり込む。男は少し息を荒くしながら少しバランスを崩すが、何とかバランスを保っていた。根性で立っていると思われる。


 試験官は面白いものを見つけたと言わんばかりに余裕そうに立っていたカミキリを見た。


「最初は貴様だ。構えろ」


 試験官は鎧に見合うような盾と剣を出して構える。口調の軽快さとは別にしっかりと左手で盾を構え、いつでも右手にある剣で反撃すると言わんばかりのいかにもな堅実そうな構えを採った。


「ああ。分かった。得物は?」

「貴様の一番使い慣れた武器でいい」


 いきなりいかにもな重量のありそうな装備である真剣と盾を持った相手にカミキリも油断せずに刀を構えた。

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