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神切-KAMIKIRI-  作者: haimret
第1章 蛇神様編
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2話

 ルリリの案内で森の中を30分ほど歩き続けた先。木々の隙間から一軒家が見えるようになるとルリリは指をさした。


「あそこが私とお姉ちゃんの家だよ」

「……そうか。結構しっかりしてる所に住んでるんだな」

「ちょっと何それ」


 カミキリの言葉にルリリはあからさまに不機嫌な表情で口をとがらせる。カミキリも口が足りない事を理解したのか言い直した。


「すまない。悪く言うつもりはなかった。こんな場所にあるが、しっかりとした造りの家に感心してしたんだ」

「そんなのが分かるの?」

「ああ。あそこまでしっかりした物はそれなりの大きさの村や町の裕福な家庭くらいしか見た事がないな。それに手入れが行き届いているように見える」


 カミキリは率直に答える。


 ルリリの住む家は1階の木造平屋建てであった。それなりに年季は入っているが、壊れそうな雰囲気はなくカミキリが言ったように頑丈そうであった。


「そう? うん。今回は許してあげるけど、あんまり迂闊な事は言わないようにね」

「ああ。気を付けよう」


 カミキリもわざと悪く言ったわけではない事を把握するとルリリはそれを許す。カミキリもそれにうなずくと言葉を続けた。


「それにしてもスゴイな」

「何が?」


 カミキリが背中に背負ったものとルリリの持つ物を見ながら感心した様につぶやく。ルリリの手にはカミキリの半分ほどではあるが、それでも前には水瓶が1つ。背中には狩りで仕留めたのか動物の肉や山菜などが入った木の籠がいっぱいに入っていた。


 ルリリは頭をかしげるとカミキリは言った。


「いつもこの量を集めて運んでいるのか?」

「あ。そういう事。いつもはもっと少ないよ。今日だけ。冬を越えるための保存食とかの準備で色々と少し多めに集めてるの。それにいつもはもっと回数を分けてるんだよ? カミキリのおかげで1回で済んでるから助かってるよ」


 リルルは答える。


「そうか。働き者なんだな」

「そうでもないよ。狩りは好きだけど、いつもはもっと探索とかして遊ぶからね。それを言ったら私の倍くらい持ってるのに全くカミキリの方がすごいよ。その量を持って歩いてるのに息ひとつ乱れないなんて。男の子ってすごいんだね」


 ルリリは照れたように答えると照れ隠しのためにカミキリをほめる。ルリリのまっすぐな視線にカミキリは視線を逸らした。


「そうか。褒められるのは悪い気がしないな。少し照れるがな。だが、ルリリもこれを毎日してるなんてすごいぞ」

「ふぇっ!?」


 カミキリが言い返すように褒め返すと慣れてないのかルリリは照れくさそうにそっぽを向く。それに気が付いたルリリは恥ずかしそうに言った。


「うぅ。まさか褒められ返されるとは。少し照れるよ。あ。そういえば今更だけど、水を飲んだだけで大丈夫なの? ご飯食べなくて大丈夫?」


 よくよく考えると倒れていたカミキリに水を与えただけでいきなり働かせている事に気が付く。あの状態を考えたら空腹であろうことは分かるはずなのにそのままにしていた事にルリリは今さらながらに気が付くと心配そうにたずねた。


「まだ問題ないぞ。それなりに慣れているからな」

「そっかぁ。あ。御飯とかは少し待ってね。時間を決めてるっていうのもあるけど、先にお姉ちゃんに伝えないとだめだから」

「ああ。分かった」

「あ。それとお姉ちゃんはリルルって名前なんだ。似たような名前だから間違えない様にね」


 カミキリの言葉にルリリは何も考えずにうなずく。思いついたらすぐに口に出しているのかとりあえずで姉の名前だけ教えるとその場に水瓶を置く。ルリリは家の扉を叩いた。


「お姉ちゃん! 帰ったよ」


 元気な声でそう言ってしばらくすると中から人が歩いてくる音が聞こえる。扉の方に近付く足音が止まると扉が開いた。扉を開いた主は穏やかそうな女性であった。ルリリが成長して穏やかな表情を見せればこうなると思えるくらいにはそっくりのためにカミキリでも姉妹であるという事がすぐにわかった。


「はいはい。おかえ……り」

「どうかしたの? あ。この人はカミキリっていうんだ。さっき拾ったの。後、カミキリ。お姉ちゃんのリルルだよ。お姉ちゃん。カミキリを泊めてあげてもいい?」

「元いた場所に戻してらっしゃい」


 ルリリがカミキリを紹介する。ルリリによく似た少女の姉リルルが扉を開けて、最初に言葉はそれであった。


 犬猫と同じような扱いにカミキリ自身は「まぁ。そうだよな」と心の中で納得して微妙そうな表情を作るが、ルリリは納得がいかないのか改めてカミキリとリルルの間に立って言った。


「えぇっ! カミキリは大丈夫だよ!」

「駄目なものは駄目よ。よく野生の動物連れ帰ってくるけど、面倒見切れないから駄目って言ってるでしょ。それなのに人を連れてくる子がいますか」


 前にもあったのかリルルは妹を叱る。極まれに拾ってくる動物に関しては、ルリリにしっかりと言い聞かせると渋々場所に帰してきたが、今回は人。リルルにとっては完全に予想外であった。


 それにルリリは何が気に入っているのかは分からないが、見ず知らずの相手。それもとてつもなく人相の悪そうな人間を家に入れるのはさすがにないとリルルはカミキリを家に上げるのを拒否したのであった。


「えぇ。3日間お手伝いしてくれるって約束でお願いしたんだけど。ダメ?」

「う……だ、駄目です」


 ルリリそう言って上目使いでリルルを見る。リルルにとって可愛い妹のおねだりである。その視線を堪えるためにリルルは目を逸らして改めて拒否する。


「お手伝いもしてくれたのにこのまま追い返すの?」


 視線を逸らした姉にルリリがさらに追撃するとリルルは外の荷物を見る。確かに普段のルリリでは持ってこれない様な量の荷物をカミキリが持っている何とも言えなくなる。


「うぅ。……分かったわ。でも、3日だけよ」


 カミキリに手伝って貰ったというのは事実であるため、何もしないまま追い返すのはさすがに良くないと思っているのか渋々と言った様子でリルルは承諾する。ルリリはその言葉に嬉しくなるとリルルに抱き着いた。


「やったぁっ! ありがとう。お姉ちゃん!」

「もうっ! 嬉しいのは分かるけど危ないからしちゃだめでしょ!」

「あ。ごめんなさい」

「分かったならよろしい」


 ルリリが反省するように謝る。さすがにあそこまで強引におねだりするとは思っていなかったのかカミキリは申し訳なさそうに言った。


「なんか悪いな。さっきの反応からして水をくれた礼だけ言って、このまま行ってしまおうかと思ってたんだが」

「いいえ。見ず知らずとはいえ、あの量の物を持って貰ってたのに、何もしないまま返すのは私の心情が許さないわ。だから気にしなくてもいいわ。だから入ってちょうだい」

「そうか。助かる。その間に旅の準備と一緒にルリリの狩りの手伝いをさせてもらう」

「ただしっ! 不埒なことをしたら絶対に許しませんからねっ!」

「分かった。よろしく頼む」


 リルルが詰め寄ってからそう言うとカミキリはうなずく。リルルは思い出したかのように唐突に言った。


「リルルよ。ルリリが先に言っちゃったけど、それが私の名前よ。それとお客様として迎える訳だからかしこまらなくてもいいわ。確かカミキリさんでしたっけ」

「ああ。それで合っている。好きに呼んでくれ」

「変わった名前ね」

「……姉妹だな。ルリリも前半部分で同じことを言っていた」

「そうなの? ごめんなさいね。失礼だったわね」

「お姉ちゃん?」


 妹と同じことを言った事が失礼だと思ったのかリルルは謝った。そのことが心外なのかルリリは少し不機嫌そうに姉を見るが、どこ吹く風と言った状態でスルーする。


「いや。気にしなくていい。それでだ。しばらくお邪魔するのは変わらんが、とりあえず何かして欲しい事とかあるか? さすがに泊めさせてもらうのに何もしないというのは悪いからな」

「そう? だったら……うーん。そうねぇ」


 とっさには仕事は思いつかないのかリルルは考えるような顎に手を当てる。中々思いつかなかったが、しばらくすると考えたことをそのまま口に出した。


「それだったら薪割りはどう? 家の外の裏に一応は準備はしているんだけど、数があるに越したことはないわ。その手間が省けるならお願いしてもいいかしら?」

「分かった」

「交渉は成立ね。改めて言うけどお願いするわ。木は裏にまとめてあるから……」


 リルルは思い出しながら言うとルリリを呼んだ。


「ルリリ。鉈か斧の閉まってる場所わかるでしょ。案内ついでに持って行ってあげて。それが終わったら一度戻ってきて。その時に荷物を倉庫に持って行ってちょうだい。終わったら夕方までは自由にしていいから」

「うん。分かった。こっちだよ」


 ルリリはうなずくとカミキリに手をつかんだ。そのままカミキリを引っ張るとカミキリもその動作に何も言わずに着いて行って裏手に回ると薪になる直前の丸太と薪が別けられている場所に来る。


 そのすぐ近くには大きな切り株があり、刃の跡と思われる切り傷が大量にある。そこが切る場所であるとすぐにわかるとカミキリは辺りを見て言った。


「結構整っているんだな」

「そうだよ。1年くらい前は私たちとおじいちゃんとで住んでたんだけど、おじいちゃんは寿命でね。あ。後、薪の割り方は分かる?」


 木の置かれている場所の隅の方から鉈と斧を持ってきた。カミキリは直ぐ近くに刀を置くとルリリが持っている斧と鉈の入った籠を受け取る。適当に丸太を選んでから切り株に置くと手慣れた手つきで斧の刃の部分を保護しているケースを取り外してから言った。


「知っている」

「そう。なら任せるね。終わったらすぐに来るから」

「ああ」


 そう言うとカミキリは慣れた手つきで斧を丸太に刺すとある程度持ち上げてからそのまま切り株目掛けて落とす。斧の重さとカミキリが最初に付けた勢いであっさりと木は裂ける。


 手ごろな太さになるまでそれを繰り返してから、それらを籠に入れて丸太と薪を交換。また同じように丸太を持ってきてから薪に変えていく。


 たまに出てくる少し細いくらいの木は鉈を使って薪と変わらない太さに変える。それをカミキリは繰り返す。


「これだったら問題なさそうだね。後で聞きたいこともあるし、早めに済ませちゃうからしばらくお願いね」


 カミキリが問題なく薪を作れることを確認するとルリリはカミキリに言った。カミキリはルリリに無言で手を左右に振って任せろと伝える。カミキリのジェスチャーを正しく理解したのかルリリは別の自分の仕事を終わらせにその場を離れる。


 お話できる楽しみが出来た事に、持って帰って来た荷物を移動させるために表の方に向かう。その動きはどこか軽やかであった。

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