表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神切-KAMIKIRI-  作者: haimret
第7章 決戦編 後編
202/709

17話

 塔の頂上からディウスの船を監視し始めてから5日が経過していた。


 その間は嵐の前の静けさなのか驚くほどに何もなかった。さすがにここまで何もないと5日前はやる気満々であったアルエもじっとしているのが退屈なのかその場で軽い体操をくりかえしていた。 


 何度目かになる体操の後。カミキリの隣に座るとディウスの船を監視しながら不満を漏らした。


「むぅ。暇だ」

「その方がいいだろ?」


 カミキリは何度目かになるつぶやきに慣れた様子で受け流す。そんな中でもディウスがいつ行動を起こしても気づけるように警戒は解かないように視線は船から外していない。


 アルエもそれが分かっているからか今も視線を合わせようとしないカミキリには気にせずに言葉を続ける。


「それはそうなんだが……」


 アルエも分かっているのか何とも言えない表情でうなずく。暇そうにしているアルエにカミキリは言った。


「そういえば……今日で5日。何もなければ修復が完了する日だったな」

「うむ。今日の午後には終わると言っていたぞ」

「そうか。っ! 来たぞっ!」

「何っ!」


 カミキリが立ち上がるとアルエも立ち上がった。ディウスの船を見ると出ている砲身に光が収束していた。


「アルエ。行けるか?」

「うむ」


 カミキリが声をかけるとアルエがあらかじめ仕込んでおいた魔術の1つを発動させる。アルエとカミキリを覆うように展開した魔法陣の上で言った。


「あれをするぞ」


 アルエがそう言うとカミキリがたずねた。


「あれ?」

「境都でのあれだっ! 忘れたわけではあるまい」

「……あれか? 合体した」


 アルエの言葉で境都の最後の方でアルエと1つになった事を思い出す。


「そうだ」

「あれは天照が俺の中から出られなくなった奴だろ? やって大丈夫なのか?」


 アルエが肯定するとカミキリは難色を示した。


「大丈夫でなければ提案しない。カミキリが寝ている間に問題点についてはすべて解消した」

『うむ。任せろ。私もしっかり休めたからな。それに最大の問題であった黒神切ときりの件も解決しているから彼らとも力を合わせられるぞ』


 カミキリが自身の中にいる天照に声をかけると返事が戻ってくる。


「そうか。だったら問題ないぞ。注意点は?」

『基本的な部分は問題ない。だが、一度合体してから解除するとしばらく再使用はできない。それに本来の意味での黒神切やきりの力は使えんから考えて使え』

「分かった。どうすればいい?」

「うむ。手を出せ」

「こうか?」

「そうだ」


 カミキリの手をアルエが掴む。


「いくぞ」


 アルエの掛け声と同時にカミキリとアルエが光に溶けて球体になる。見計らったかのようにカミキリたちの立っているエデンの塔に向かってディウスの船が光線を放った。


 数秒の間、アマノミハシラが空間を作り出す結界がディウスの船の砲撃を防ぐが、長くは持たないのか大きく空間そのものが歪むと空間が耐えられずにつながる。光の奔流が迫る直前でカミキリたちの融合が終わると独特な巫女装束の黒髪の少女が緩やかな動作で塔の床に着地した。


 神秘的な雰囲気を纏う少女はカミキリたちが合わさった姿であった。


「八咫鏡」


 涼やかな声が誰もいない空間に響く。巫女装束の袖から手鏡が出てくると鏡は塔よりも大きくなる。


「っ!」


 ディウスの砲撃を受け止めるとその衝撃に少女が少しだけ表情を歪めた。


 しかし、それも少しの間の出来事ですぐに少女は口を開いた。


「跳ね返せ」


 鏡は受け止めていた光を吸収すると文字通り鏡が光を反射するようにディウスの光線による砲撃を跳ね返した。


 最初はギリギリ押し返す程度の出力であったそれは際限なく吸収してそのまま跳ね返し続ける事によってディウスの砲撃を半分に到達するくらいまで押し返す。


 ディウスの船の方もそのまま押し返されるのを嫌ってか出力が上がり、力でゴリ押そうとする。


「甘い。炎よ」


 少女が自身の手から炎を作り出して鏡に与える。取り込んだ炎は跳ね返しているディウスの砲撃に加わって押し切られそうになっていた砲撃をはるかに上回り、砲撃を全てのみ込んでディウスの船が光に飲み込まれた。


『やったか? アルエ?』

「……だめだ」


 少女の体からカミキリの声が勾玉越しで聞こえる。変身した少女をアルエと呼んでたずねると彼女は頭を横に振った。


 光が全て通り過ぎるとそこには球状の結界に覆われたディウスの船があった。


『防がれたか』

「うむ。途中で何かに阻まれた感触があったからな」

『だが、完全には防ぎきれなかったみたいだな。船から出ている砲身が溶けているぞ』


 カミキリの言葉にもう1人の少女の声の主である天照がいった。確認するようにアルエが遠視の魔術を発動させると防御が間に合わなかったのか砲身の部分は防ぎきれずに半ばの所まで溶けていた。


「うむ。あれでは再使用する事は出来んだろうな」

『そうだな』


 アルエの言葉にカミキリが同意する。


『気を引き締めろ。次が来るぞ』


 ディウスの船から結界が消える。同時に船の甲板からナニカが翼を広げて飛び出して来た。

 今回は防衛回。第3章23話くらいのアルエとカミキリと天照の融合をアルエが使えるようになりました。2人と1柱+α分のリソースを使っているので殲滅力はあるのですが、細かい部分で調整が効かないのとアルエが主体となるため、近接戦闘はそこまで得意ではありません。

 次回も防衛戦の続き。翼を持ったナニカの集団との戦闘予定です。

 ここまで読んで下さりありがとうございました。気が付けば200話超えてましたが、完結するまで書き続ける予定です。次回もおたのしみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ