12話
次の日の朝。
『ハガクレ』の0201と書かれた部屋の中でリルルは窓から差し込む光で目を覚ました。
「ふぁ」
先の起き上がったリルルはベッドから起き上がると大きく腕を伸ばしてあくびをする。リルルが活動を開始し始めた気配でルリリも目を覚ます。
「ぅんん。おはよう。お姉ちゃん」
「おはよう。ルリリ」
お互いに寝ぼけ眼のまま起き上がると朝の挨拶をする。
まだ日が昇って少ししか経っていないとはいえ、外からは多くの人の通る音や外から漂うおいしそうな匂い。朝特有の気持ちいい光がリルルたちに朝を伝えていた。リルルは中途半端な眠気を飛ばすためにベッドの上で再び大きく伸びをする。
「「うぅん。ん?」」
声が重なり反対側へ振り向くと同じようにルリリも伸びをしていた。鏡合わせのように。振り向いた先ではお互いにきょとんとした表情で見る。同時に同じような姿勢でお見合いしていることにどうにもおかしくなって、どちらからなのかは分からない笑い声が漏れた。
「ぷっ。ははっ」
「くふっ。ふふっ」
お互いに笑い合ってからしばらくしてようやく落ち着いたのかルリリから口を開いた。
「全く同じことしてたね。お姉ちゃん」
「そうね。それは仲が良い証拠ってことで」
「うん」
リルルの言葉にルリリがうなずくとその笑顔につられてリルルも微笑む。部屋に存在する時計を見るとまだ、朝食には少し早い時間であった。リルルは軽やかな動きでベッドから起き上がると鞄から地図を取り出すと机の上で広げた。
「ルリリ。少し時間があるから、この後の買い物の予定を立てるわよ」
「えぇ。それはお姉ちゃんに任せるよ。おやすみ」
「今寝たら後が辛いわよ」
ルリリは先程とは打って変わって少し嫌そうな顔をするとすぐさまベッドに寝転がる。そのまま寝ようとするルリリに対して苦笑してと二度寝しない様にルリリを起こすためにリルルが近づいてルリリの肩を揺らす。ルリリもさすがに観念したのか渋々と言った様子でベッドから起き上がると地図を置いた机の近くの椅子に座った。
「うぅ。分かってるけど。旅で必要な物を買ったらすぐに移動って。……ほら。この何とも言えない気持ち分かるでしょ?」
「変なこと言わないの。これが終わったら朝食だから。早く済ませないと無くなるかもしれないわね」
「ええっ! それはダメッ!」
リルルの言葉にルリリは必死の形相で地図を見る。昨日堪能した料理がものすごくおいしかったのを覚えているために行動が早かった。真剣にこれからの事を考えてくれるのは嬉しいが、それが馬の目の前ににんじんをぶら下げるのと同じ状態であることにリルルは苦笑いする。
「全く。現金なんだから」
妹の将来が色々と心配になる姉のリルルであるが、そんなつぶやきすら意に介していない様子で集中するルリリ。少しすると書き終えたのかリルルの前に出す。
「出来たっ!」
「しかもこういう時だけは早いのよね」
手早く完成させたそれを確認して、完璧に仕上がっていることにリルルは呆れた。ルリリはもう朝食の方に気が向いているのかいつの間にか着替えて食堂に行く準備は終えるルリリが急かす。
「ほらほら。お姉ちゃん。早く早く」
「分かった。分かったから。もう少し待ってちょうだい」
急かすルリリに対してリルルはそれをなだめながら食堂に向かう支度を始める。我慢できないのかルリリは言った。
「先に行ってるよ」
「ちょっ!」
リルルは慌ててルリリを落ち着かせて行動を止めようとするが、待ちきれないのかルリリは先に部屋を飛び出した。
「あっ。もうあの子は。もうっ。はぁ」
勝手に先に行ったルリリに呆れた様子で溜息をつくといつものペースで準備を終える。部屋に鍵をかけると反対側の扉が開く音がした。
「あら。おはよう」
「ああ。おはよう」
カミキリであった。結局、昨日はあの後から会うことなく、どこかに消えて行ったカミキリに対してリルルは少し不機嫌な様子でたずねた。
「で? 結局、昨日は何してたのよ?」
「それは大人だけのお楽しみという奴だ」
「ふーん」
リルルは胡乱気な眼で見るとカミキリはなんてこともない様子で答える。心なしか前日よりも顔色が悪そうな様子にリルルがたずねた。
「大丈夫なの?」
「大丈夫だ。問題ない」
「本当に?」
「ああ」
念を押して質問するリルル。カミキリは答える気はないのか短くそう答える。カミキリの様子から、これ以上は聞いても無駄だと察したのかリルルは短くため息をついた。
「そう言うなら。それと顔に怪我しない様にね」
「……これは帰り道に転んでな」
リルルがそう言うとカミキリは自身の頬を触る。カミキリから見て左側の方を触るとわずかに怪我をした後のかさぶたらしき凹凸が出来ていた事を理解する。そのことにカミキリは少しばつの悪い顔をした。
明らかに転んでできた様な怪我ではなく、何かで切られたといった方が適切な怪我であった。下手な言い訳をするカミキリを見て苦笑すると、リルルはいきなりカミキリに向かって頭を下げた。
「それと……その。昨日は言いすぎたわ。ごめんなさい」
リルルの唐突な謝罪にカミキリは虚を突かれたのか少し呆ける。が、それでもすぐに気を取り戻すと言った。
「いや。こっちこそ気を使わせて悪かったな」
カミキリも少しだけばつが悪そうにそう言うとリルルは微笑んだ。
「なら、これで水に流したってことでいいかしら?」
「それで構わない」
カミキリの言葉にリルルとカミキリの間の緊張していた雰囲気が和らぐ。それを知ってか知らずか、先に行っていたルリリがいつの間にか戻ってきて2人の間に入った。
「お姉ちゃん! まだ? って! カミキリも起きたんだ! おはよっ! ほらっ! 2人共早くっ!」
「あ。ちょっ!」
元気な声でルリリがリルルとカミキリの手を掴む。そのままルリリは2人を引っ張って朝食の良い匂いがする食堂へと向かって歩きはじめた。




