00ー01 プロローグの19年前、とある男子高校生の奇妙な出来事
気がついたら俺は、現実味のない白い部屋にいた。
大きさとしては、四方10mくらいか。
と言っても白いせいでイマイチ距離感がつかめないが・・・
えーと?、なんで俺はこんなところにいるんだ?
そうだ…あの日・・・あの時だ。
ーーーー2019年 10月5日 午後 5時30分 遊んだ後 帰り道、運命の歯車が狂うまで、残り 30分ーーーー
「カラオケ楽しかったなー。」
「そうだね。」
ーーーどこが面白いんだ。
「やっぱ米津◯師サイコーだわ。」
「それな!!ピース◯◯ンとかアイネクラ◯○と、後はゆ◯とミス◯ルと斉藤◯義と後は~」
ーーーーつまらない
俺、佐藤祐輝はいわゆる隠れオタクだ。
一応リア充グループ七人のメンバーだが、曲や歌手にあまり興味がなく、流行っている曲を何曲か覚えるくらいだ。そんな物よりもネトゲのレベル上げや録画したアニメを消化する方が圧倒的に楽しい。
しかも今日から某有名ネットゲームの【期間限定・ハロウィーンイベント】が始まるというのだから。
もうさっさと帰って始めたい。
イベントが今日だと知っていたらこんなことにはならなかったのにと、二週間前のことを思い出す……
ーーーー2019年 9月20日 午後 1時30分 学校 昼休み、運命の歯車が狂うまで残り、15日ーーーー
「ねえ、ゆうくん。再来週の土日空いてる?」
この茶髪ポニーテール美少女は、幼な馴染みの五十嵐真希亜。
同学年のクラスメイトでリア充共のメンバー。
そして、俺がオタクであることを知っている数少ない人間のうちの一人。
あー、それと、真希亜っつー大層な名前はこいつの親父さんが元ヤンだからだとかなんだとか・・・
まあ、そんなことはこの際どうでもいい。
「別に、空いてるけどどうした?」
「いや、昨日のグループラインでさ、みんなで遊びに行かないか、みたいなことを伝えたじゃん。まだゆうくんから返事をもらってないんだけど。」
「あー、忘れてた。ごめんごめん。」
「で、行くの行かないのどっちなの?」
確かイベントとかは無かったから・・・
「別にいいぞ。日程と、何人で行くのかだけ教えてくれ。」
「えーと、再来週の土曜日の午前8時集合で、私とゆうくんを含めて七人で。」
ーーー要はグループ全員ということだな。
「ああ、分かった。じゃあそろそろ。」
「うん、皆にも伝えとく!!じゃあね〜。」
「じゃあな。」
ーーーー2019年 9月21日 午前 6時40分 自宅、運命の歯車が狂うまで残り 14日ーーーー
おっ、パソコンに通知が来てる。
えーと、なになに? 再来週の土曜日から期間限定イベント開催? なるほど、土曜日か。じゃあ、この日は寝落ちするまでイベントミッションを・・・
ん?ちょっとまてよ。……再来週の土曜日!?
え?それってまさか・・あのリア充共に付き合ってやる日か!?
「嘘だろおおおぉぉ!!!!」
「こら!!静かにしなさい!!」
「すみません!!!」
あーあ、大声を出して母さんに怒られてしまった。
あ、いや、でも 別に帰ってからでもイベントに乗り遅れないんじゃないか?
えーと、イベントの開始は…午後3時!!よし、お昼に切り上げればなんとか間に合う!!
いや、相手はあのリア充……今まで遊んだ経験から考えると………
『おい、佐藤!!まだ帰るには早いぜ!!』
『え?腹痛?じゃあ、トイレの前で待っててやるよ』
『宿題が残ってる?しょーがねーな、手伝ってやるよ!!』
なんだかんだ言って引きとめられ、必ず最後まで付き合わせられる・・・・・・
と、言うことは……
「イベントに間に合わねぇじゃねぇかあああああああぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」
「だから静かにしなさぁぁぁぁい!!!!!!」
「すみません!!!!」
そういえばこのゲームだけ通知がやけに遅いんだった!!
マジかぁ、しかも何!?限定キャラメイクが手に入れられるバトルロイヤルじゃねぇか!!
最悪だ〜!は~。でもまぁしょうが無いかぁ……
あー、でも余計に遊びに行きたくなくなって来たなぁ・・・・・
ーーーー2019年 10月5日 午後 5時45分 遊んだ後 帰り道、運命の歯車が狂うまで残り、15分ーーーー
「ーーーーくん?」
「ーーゆうくん!!」
「え?…なに?」
「なにじゃないよ。もー」
「ごめん、聞いて無かったわ」
「お前どっか具合でも悪いのか?さっきからずっと反応が無かったぞ?」
「悪い、あー考えごとをしてた。」
お前等と遊ぶことがどれほど辛いかということを考えてたんだよ。
「もー、しっかりしてよ。ゆうくんたまにそういうところあるよね。」
ーーーそういうところってどういうところだ。
「あ、俺らここの角曲がんないとだわ。じゃあな。お二人さん、仲良く幸せに帰れよ~」
はぁ…これだからリア充はすぐに恋愛と結びつけやがって。
「もーそんなんじゃないってば!!」
ーーーー全くだな。
「はぁ、すぐにからかってくるよね。」
「ああ、ああいう奴らはほっとけばいい。全く、幼馴染みが恋愛に発展するなんて、ラノベじゃあるまいし。」
「・・・そっか…そうだよね。」
なんか悲しそうに聞こえた気がするが・・・まあ気のせいだろう。
とにかく、まずは家に帰って早くイベントの遅れを取り戻さなくては、
はぁ…今日はリア充どもの相手でただでさえ疲れたってのに、全く……
徹夜ルート確定かな・・・
「お、そろそろお前ん家じゃないか?」
「あ、ほんとだ」
さて、俺は俺で帰ってゲームのイベントを進めるか…
「じゃあな」
「うん。またね」
ーーーそう言う、真希亜の顔が、やけに寂しそうに見えたのは・・・・・・ この後に起きる事があまりにも非現実的だったからだろうか。
ーーーー運命の歯車が狂うまで残り 5分ーーーー
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なんだか、今日のゆうくんつまんなそーだったな。
まさか、あのゆうくんが苦手なカラオケに行くなんて…
こっちは、振り向かせようと必死なのに・・・・
なのに「佐藤祐輝」通称ゆうくんは、その鈍感さゆえに気付いてくれない。
『あ、俺らここの角曲がんないとだわ。じゃあな。お二人さん、仲良く帰れよ〜』
私のこの気持ちもそろそろみんなに勘付かれる時期なのかな〜。約1名は除いて。
『はぁ、すぐにからかってくるね。』
まあ、でも私はこの関係が良いんだけどね。
『ああ、ああいう奴らはほっとけばいい。全く、幼馴染みが恋愛に発展するなんて、ラノベじゃあるまいし。』
『・・・そっか…そう、だよね。』
ゆうくんは、恋愛慣れしてないとはいえ、女心がわからなすぎるよ。
あの時、ああやって言われたことちょっと悲しかったな。
『お、そろそろお前ん家じゃないか?』
『じゃあな』
結局、関係に進展がないまま今日が終わっちゃった。
なんだかゆうくん急いでるみたいだったし、引きとめなかったけど。
でも、もう少し、お話したかったな。
ーーーー運命の歯車が狂うまで残り、1分ーーーー
俺は今、猛ダッシュで家に向かってる。
「よし、この曲がり角を抜ければ・・・」
俺の家ーーーと言うところで、急に地面が光り出す。
「な、なんだこれ!!!??」
その光が俺を飲み込んでくる。
ーーーーーー離れないと・・・・・・反射的にそう思ったが、抵抗する間もなく俺の意識、いや・・・俺の存在はーーー
消えた
ーーーー2019年 10月5日 午後6時 自宅前、運命の歯車が狂ったーーーー
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彼は本来ならば数年後に就職し、五十嵐真希亜と結婚し、子宝に恵まれ、幸せな人生を送るはずだった。だが、彼が消えたことにより、他の者の歯車も狂い始める。
消えた彼の行き先は神のみぞ知る・・・・・・・・・・