入学式の会話って記憶無いよね
さぁ!皆さんは、童貞という言葉をご存じでしょうか?
童に貞と書いて、『童貞』
主に童貞の定義として、性交未経験の男性・男性が性交未経験の状態のことを指す。
そして、この作品の主人公こと!私、道本 定吉。あだ名は道定もチェリーボーイの一人である。
鎗ヶ岳高校という、町のなかでも少し偏差値の高い高校(64ぐらい)に今年度から通学することになった私は、今年こそ!彼女ができる!!よっしゃゃあ!!頑張るぞ!!
そんな下心満載な気持ちで入学式に望んでいた。私の学校の男女比率は、3:7と女子生徒の人数が他の学校と比べても圧倒的に多い。これは、鎗ヶ岳市の中でも、この学校だけである。つまり、低身長(162㎝)の私でもカップル成立確率も他の学校よりも高いのである。
因みに、余談だが……。私は、この高校に入る前の中学3年生のときに、自分の町の全ての高校の男女比をexcelで計算し、表にして自分の部屋に貼っていた。母親からは、
母「何の資料を貼ってるの?そんなことしてる暇があるなら、勉強しなさい。」
と、怒られてしまったが、当時の私は、爽やかな笑顔で返答した。
定吉「はははは!待ってよ。母さん。これは、過去3年間の受験倍率なんだよ。勉強も大事だが、自分が受ける高校にどれくらいのライバルが集うのか知りたいと思って、調べてたのさ!」
確実な嘘である。まず、受験倍率じゃない。ただの男女比だ。それも、制服のスカート丈の短い学校をピックアップして、そこから導きだした表だ。母は、僕の爽やかな嘘を鵜呑みにして、納得したかのように、
母「そういうことね。」
と、言い残して、ベランダの洗濯物を取り込みにいった。
多分、本音を言ってしまったら、怒る。怒らない。とかではなく、呆れられるだろう。自分の息子が受験期に彼女がほしい。そんな、糞みたいな理由で、スカート丈の短さ。男女比を調べているのだ。多分、私が親でもガッカリするだろう。
母よ。あの嘘から、一年たってしまいましたが……。あのときは、嘘ついて、ごめんなさい。
この場をお借りして深く陳謝いたします。
まぁ、そんな過去があったお陰で今がある。案の定、なんやかんやで、ある程度、学力が高い高校に入ることも出来たから、良かったのだ。親も一安心しているだろう。(真実がバレたらアウトだが……。)
そして、舞台は冒頭の入学式に戻る。見知らぬ顔。中には、中学が同じだったのだろうか?直ぐに打ち解けたのか?分からないが、既に談笑をしている人もいる。
「おーい。お前らぁぁ。早くならべぇ!」
やたら、低音の巻き舌の男性の声が前列から、聞こえてきた。(お前は、サザエさんのアナゴさんか!)って、ツッコミを入れたくなるような声だ。声の元を辿り、前列を見てみると、体がゴツゴツした体育会系のジャージ男が立っていた。ジャージの左胸に刺繍が施されており、ローマ字でTukamotoと記載されている。刺繍もジャージも見ていて、痛々しいぐらいダサい。
塚本「おぉぉいぃぃぃ!おまえらぁぁ!はぁぁやくぅぅ!並べってぇぇ!何回言わせるんだぁぁぁ!」
ヤバイ。さっきより、巻き舌になってきた。そのうち、全ての子音までも、巻いてしまう。そのレベルだ。そんな、塚本の機嫌の悪さを生徒は悟ったのか、体育館は静まり返った。
キーン!コーン!カーン!コーン!
始まりのチャイムと同時に校長と思われる老人が現れた。身体中が、よぼよぼで、プルプル震えている。この老人は今にでも、死ぬんじゃないだろうか?会話できるのか?大丈夫か?と、生徒の誰もが同じことを悟っていた。そして、ゆっくりと体育館の真ん中に立ち、マイクに声を通した。
校長「えー。皆さん。ご…。ご入学……。おめで…………。おぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
会話して早々、校長が吐いた。ほら、思った通りだ。余りにも突発的過ぎて、何処から、テロリストに狙われて撃たれたのかと、よくある映画のワンシーンを想像した。だが、校長は倒れてもいないし、体調が悪いようにも見えない。そして、何事も無かったかのようち、会話を再開させた。
校長「ひふへいひはひまひは。へーみなはまー。」
は?おい。どうした?校長。は行しか言えてないぞ。今の嘔吐で、何があった?それとも、私の耳が悪いのか?いや、そんなこと無かった。そして、私は、校長のマイク付近に濡れている物体があることに気が付いた。
そう、「入れ歯」である。
もう、突っ込む気も失せた。てか、この小説の主人公は、私で間違いないよな?校長に全部持ってかれてね?私、1話目から、モブキャラ扱いじゃん。
自分のキャラ設定と校長のキャラ設定との差に、涙を流しそうになりながら、は行しか発音しない、入学式を迎えた。
はぁ、転校したい……。