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罪状:人権停止処分  作者: あいますく
6/9

3日目 喪失 後編

最終回が見えてきた

暫く俺は鑑賞室にいた。

永川の計らいで感情を取り戻すためにテレビを見ている。

この時間は昔の歴史ドラマの再放送をやっていた。


昼食の時間にはほとんど感情を取り戻していた。

「いやぁ、急な停電で改修工事も今日は取りやめになってな。」

「怪我してたのに作業してたのか?」

「俺がやってたのはコンクリ入れるくらいさ。」

「そうか。」

「停電のことだが、看守の話じゃ、配線が一つ焼き切れてたんだってよ。」

「ここはまだ建てられたばかりじゃないのか?」

「いや、元々は生物研究所と動物病院の複合施設だったんだよ。それが人権喪失者管理センターになったって訳だ。」

「へぇ。」

「ごちそうさん。それじゃ、雨竜も午後からがんばれよ!」

そう言うと芥は、書庫の方へ向かった。

俺も行くべきなのだろうか?

偶然会った体を装えば行けるだろう。

しかし、一応永川に何をするかは聞いておいた方がいいだろう。

俺は食事を終え、看守室へ向かった。


看守室には永川はおらず、別の看守がいた。

「ああ、高鷺雨竜さん…だっけ?」

「そうだが…永川はいないのか?」

「機械に強い奴らはみんな呼ばれたんだ。ああ、あんたに言伝があったよ。」

「なんだ?」

「『今日はゆっくりしてください』だってさ。」

「ああ。そうさせてもらう。」


俺は書庫に着いた。中には芥はいないように見えた。

しかし、奥の方から芥と誰かの声が聞こえた。

奥へ行くと受付で芥が本の場所を聞いているようだった。

書庫はL字型になっていて、俺が少女と話したところからでは受付は見えない。


「芥、いたのか。」

俺が声をかけると、芥は驚いたようで、

「雨竜。仕事はないのか?」と聞いてきた。

「こっちもないらしい。何を探しているんだ?」

「この地域の土地の本だ。百年前くらいからあるといいんだがな。」

「それを知らないと工事にも支障が出るのか?」

「いや、問題は無いだろう。だけど俺はこういうのが気になっちまうタイプでな。」

そう言うと、受付の人が芥に話しかけた。

「ここには無いようですね。申し訳ありません。」

「そうか…いや、いいや。ありがとな。」

そう言って芥は歴史書のコーナーへ行った。

俺はあまり本を読むタイプでは無いので、とりあえず歴史書の隣のスポーツ雑誌の方へ向かった。

俺が本を探していると、棚に違和感を感じた。

他の棚よりも枠が少し細い…?


棚は木製で、前後に本が入るようになっていて、こちら側がスポーツ系、向こう側が歴史系となっている。

適当に雑誌を取ると、向こう側が見えた。

この棚の本が他より少ないのか。


俺は受付へ戻り、受付の人に話しかけた。

「この本は独房で読んでもいいのか?」

「申し訳ありませんが、原則貸出は禁止なので持ち出すことはできません。」

「ああ。わかった。ありがとな。」


ということは、芥が借りてその部分がないという訳ではなく、最初からないのだ。

棚に戻ろうとすると、芥がこちらを見て少しうなづいた気がした。

俺の予測が当たっているということだろうか?

芥が近づいてきた。

「今日も風呂頼むわ。というか、治るまで許可は貰っといた。」

「ああ、そうだな。任せろ。」

そう言って芥は去る。


風呂で俺たちはまた秘密の会合を始めた。

「お前も気づいたかもしれないが、あの棚の下に入口が隠してあるようだ。」

「だが、あそこは受付から直接見えるところだ。どうする?」

「あいつらも一応看守扱いなんだ。だから俺が脱獄すれば、恐らく居なくなるはずだ。その隙を狙って奪い取れ。」

「…やるのか。」

「計画を手短に話す。俺がもう1度停電を起こす。」

「もう1度?お前が今日のやつをやってくれたのか?」

「いや、あれは俺が直接やった訳じゃない。最初の受刑者がやってたんだよ。いつかのためにな。」

「…ちなみにそいつは今どうしてるんだ?」

「…死んだよ、人体実験で。」

「…そうか…」

「だからこそ、俺はあの人の意思を継ぐ。」

「…」

「それで、続きだ。お前は停電したら書庫へ向かってくれ。急ぐ必要は無い。」

「…」

「次に内線で俺が脱獄したと連絡が入れば、中から看守は出てくるはずだ。そしたらお前は書庫に入り、不正の証拠を盗み出せ。」

「…」

「盗み出せたら研究区画へ行って、カメラの前にそれを提示するんだ。」

「…」

「やってくれるな?」

「……ああ。」

芥はそれ以上何も言わずに風呂を出ていった。

その背中には、覚悟が表れていた。


遂に、明日。


全てが終わる。


成功すれば、あんなただ人が無駄に殺されることは二度となくなるだろう。


失敗すれば、俺も死に、あの実験が繰り返され、俺のように罪もない人間が人権を失う。


俺は…

どこかで見たことがある終わりだけど、その時と今の心情の違いが表れてたらいいなと思います

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