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罪状:人権停止処分  作者: あいますく
2/9

2日目 出会い 前編

前編です。

「ふぁぁ…」

目を覚まし、時計を見る。6:32。7時にはまだまだ時間がある。

着替える必要も無いから、ただ物思いに耽っていた。


ここに入ってしまって起こる、俺にとっての一番の問題。

それは、無罪を主張出来ない、という事だ。

俺には人権が無いため、訴訟を起こすことが出来ない。

親からは勘当され、兄弟もいない。頼りになる仲間は殺された。

もう俺を助けてくれる人はいない。


だから、だからこそ俺は、ここで出来ることをやり遂げなければならない。

それが炎天下での水やりだろうと。


「高鷺さーん。起きて…ますね。おはようございます。」

「ああ、おはようございます。」

「いやー、早いですね。極道寺さんは多分まだ寝てますよ。」

「はぁ。」

「っと、とりあえず朝ごはん食べましょうか。食堂の場所は分かりますよね?」

「ああ。一応は。」

「じゃあ私は極道寺さん起こしてきますんで。」


手早く朝食を済ませ、隣の鑑賞室でテレビでも見ようかと立ち上がった時、芥が現れた。

「おう、雨竜。早いな。」

「極道寺さんが遅いんですよ?起床時刻は7時のはずですが?」

「起きてはいるさ。ただ、体がでかい分全身を動かすのに時間がかかるのさ。」

「はいはい。」

永川は呆れたように言うと、俺の方を向いてこう言った。

「今日は雨みたいですし、別の仕事となりますので、8時になったら迎えに来ますね。」

「ああ、はい。」


テレビでは、俺のニュースがずっと流れ続けている。

恐らく、どこのメディアも情報をまとめあげたのだろう。

しかし、なかなかなデタラメを言ってくれる。


「はぁ。」

仕方なく俺はテレビを消した。


暫く無為に時間を費やしていると、永川がやってきた。

「高鷺さん。今日のお仕事、というか、雨の日のお仕事はですね、倉庫整理です。」

「倉庫整理か。整理整頓は得意だ。」

「それは頼もしい。倉庫までご案内しますね。流石に看守エリアには来ていないでしょうし。」


第二倉庫と書かれた倉庫へ着いた。

中にはファイルが山積みになったダンボールがいくつも置いてあった。

「そこのラックに五十音順に並べていただきたいのです。多分足りると思いますが…」

「なるほど。ちなみに中身は読んでもいいのか?」

「いいですが、面白くないですよ?薬品の研究記録ですし。少しグロイかも知れませんね。」

「なるほどな。了解した。」

「じゃあお願いしますねー。」

そう言うとやはり、永川は出ていった。


本来、死刑に等しい刑を受けている俺は監視の一つでもつくものだと思っていたが、どうやらそれは無いらしい。

周りを見回しても監視カメラらしきものは無い。

まあ、サボっているのを見られて射殺なんてことになったら困るし、真面目にやりますか。

「まずはファイル全部出して並べ替えるか…」


数時間後、ラックの一つが埋まった。…が、しかし。

「ファイル多すぎないか…?」

そのラックに入ったのは、あ~お、だけだった。

ラックは確かに10台あるが。

しかも一つ一つがそこそこ重い。


「高鷺さーん。お昼ご飯ですよー。」

永川がやってきた。

「うわっ。高鷺さん意外と几帳面なんですね。意外です。」

「意外か?」

「格闘家らしいのでもっと乱雑な感じなのかなーと。ハハハ。」

「まあ、それも言えてるな。」

「じゃあお昼ご飯食べに行きましょうか。」

時計は12:25を指していた。

「ああ、そうしよう。」


食堂へ着くと、芥がいた。

「おう!雨竜。おつかれさん。」

「そんなに疲れてはいないけどな。」

「そうか。それはいい事だな。こんな所でへばってたら、これから先体が持たないぜ。」

「そうだな。」


「ごちそうさん。俺は先に仕事に戻るぜ。」

「芥は何をやってるんだ?…ってこれ聞いていいのか?」

芥が口を開きかけたが、配膳をしていた看守が代わりに答えた。

「芥さんには研究室の増築作業を手伝ってもらってます。」

「へぇ。」

「まあ土建屋だったしな。じゃ。」

芥はそう言うと、そそくさと出ていった。

「俺も早く戻るか。」


16時ごろ、ファイルは『た』まで入れることが出来た。

俺が『ち』を入れようとした時、永川が慌てた様子で入ってきた。

「あー、高鷺さん。実験の依頼が来ました。急なことで申し訳ないのですが、今すぐついてきてください。」

「ほんとに急だな…」

俺が返事を返すまもなく、永川は行ってしまった。

俺は走って追いかけた。


連れてこられたのは鑑賞室だった。

「ここでこれを着けてください。」

渡されたのは、ヘッドホンがついたゴーグルのような何か。

言われるがままに着けると、完全に音と光が入ってこなくなった。

そして、体を回される感覚。

その後、手を引っ張られ、どこかへ連れていかれる。


次に音と光を浴びたのは病院の廊下ような場所だった。

永川は廊下の先の部屋を指さしてこう言った。

「そこで実験を受けていただきます。」

「…」

「緊張しなくても大丈夫ですよ。多分死にはしません。恐らく。」

「はぁ。」

「幸運を祈ります!」


部屋に入ると白い髪に白く長いヒゲを生やした白衣の老人がいた。

「君が、高鷺雨竜かね?」

「ああ。」

「では、ここに横になって。」

言われた通りに担架に横になる。

「では、運ぶぞ。」


配膳していた看守の名前は安鳥野乃 ヤストリノノ です。

おじいさんは知りません。

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