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第一章 『喩えば、図書室の君と、僕の話』

僕には、ちょっとした秘密がある。

秘密と言っても、そんな大した事でもなく周りから見たら蔑まれるような物でしかない。

『朝ですよー、起きてくださーい!!ご主人様!ご出勤のお時間です!』

朝から桁まましく鳴り響く僕だけの最愛な目覚ましアプリ。

そう、これが秘密の正体である。黒髪ロングの女の子がメイド服で笑顔を浮かべながら起こしてくれる、そんな夢の宝だ。


そんな至福の声に包まれながら、僕はのっそりとベッドから起き上がり学校へ行く支度をする。支度を済ませたら朝食を済ませる。

そんな当たり前で、当然という日常が不思議で堪らない。そう感じることは多々ある。これはおかしいか?いいえ、可愛い二次元の女の子が起こしてくれた直後のことだ。深く考えるのはやめておこう。今夜見るアニメに今は全てを費やしたい。


そんな偉大な願望か決意か、そんなのを抱きながら学校へと向かう。これと周りから蔑まれそうなことだが、僕は学校への通学路は電車と歩きだ。これは問題ない。電車が駅のホームまで来るには時間が掛かる。暇だろ?

だから、電車が来るまで僕はスマホでアニメを見ている。見るアニメが無かったらアニソンを聴いている。もちろん、ボカロ曲もありだ。


電車を降りると学校は駅から数分歩いた距離にある。

思わないか?僕は常々、電車内や通学路に男女のカップルが度々いる。

「……恋愛脳のオスとメスめ。学生の本文は勉強だろ。恋愛に勤しむ時間があるなら…もっと、別の生き方を探した方が楽しいと思うが。」

僕は毒吐きながら、野郎どもを無視して通学路を歩む。

僕の声は誰にも届かない。

いや、友達じゃないからあまり聞いてくれる人がいないんだ。


それにしても別の生き方とは何だ?自分が言っておきながら、自分はどうなんだ?そんな考えが頭を過る。

こんな僕には、別の生き方なんて限られているだろ。何の取り柄もない奴は、唯一自分の趣味に注ぎ込む以外ないんだから。そんなグループに入る自分が嫌だ。そう感じつつも、自分の趣味を思うと、それはそれで有りかなー。と思う。


「よーし、お前ら!今日の遅刻者は無しだな? 先生は嬉しいぞ!月曜の朝から遅刻者が居ないなんて…どんだけお前らはやる気のある生徒達なんだ…。」

あー、泣いてる。ウチのクラスの担任は非常に涙脆い。感動作の映画を見たら、号泣するような人だ。只でさえ、遅刻者がいなかっただけで、一筋に輝く雫を流す担任だ。

まぁ、個性があって素晴らしいことだな。

朝の鐘がなると同時に、教師は扉を閉めて出て行く。更にはクラスが一斉に騒ぐ始末だ。

流石にこんな所でアニメを見ていたら、気が引けるので小説を読むことにした。

ふと周りを見てみる。皆の机には次の授業の教科書が置いてあったり、弁当がおいてあったり。

おい、まだ朝だ。早弁か?

そんなのは置いといて。筆箱や机の上に座る人達もいる。

また不思議に思ったから、思わず口に紡いでいた。

「物には、やっぱり背景が大事だな。簡素な空間と言えばいいか?想像してみろ、何処かの高級レストランに居たとする。綺麗な真っ白のテーブルクロスにグラスが置いてある。美しいだろう?もし、そんな美しい所に、みかんが置いてあったらどうする?不釣り合いだろ。みかんイコール炬燵だ。ガラスのテーブルに湯呑みも合わないだろう?何が言いたいか、物には置くだけでなく、その背景にも関わりがある。物にもTPOがある。背景と物が合わさることで、美が発揮する。しかも……。」

ここまで独り言を言ったせいか、近くに居たクラスメイトに冷たい目で見られた。

仕方なく、この言いたい気持ちを抑える…。


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