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第7話 お城は迷宮さながらに。

 お城の城門は、流石に開けるにはでかすぎるから、私たちは城門の端っこにあるちっこい戸を開けて中に入る。


「さぁ、アリス。ここから先はお城です。僕からはぐれないように、気を付けて下さい。はぐれてしまったら、どんな目に遭うかわかりません。」


 え、なんですか。その忠告。めっちゃ怖いんですが。

 私は緊張しながらも、無言で頷く。


 ああ、これって白兎からはぐれたら、クイーンとかに出会って問答無用で首狩られてゲームオーバーっていうノリでしょうか。そうなんでしょうか。さ、さすがに不思議の国だぜ……ごくり。


「さぁ。じゃあ行きましょう。大丈夫、慣れれば良い所です。」


 慣れるまでが危険なんですか。デンジャラスなんですか。

 それってつまり広すぎて道に迷った人の死体がアギャーってな感じで転がっているのか!? それってむしろ眠れる森の美女の茨の森か!?


「では、行きましょう。」

「は、い。」


白兎が私の手を取り、歩く。

 手袋越しに微かに伝わる熱が、私の手に当たる。





 城門の中は、綺麗な薔薇が咲き誇っていた。

赤い薔薇ばかりだけれど、それは何処か狂気的な美しさを誇っている。

 赤ばかりに閉ざされた空間。けれど、それは濃厚な美しさがあって。狂ってしまいそうな、惹き込まれてしまうような、美しさ。


「赤い薔薇が好きなのですか、アリス。」

「へ?―――あ、いえ。そうじゃないんですけど、あまりにも綺麗だったから、つい。」


 白兎の質問に、私は首を横に振る。

 その答えを聞いた彼は、少し何かを考えてから、薔薇に手を伸ばす。


「ふえ?何をしているんですか?」


私が尋ねると、白兎はにっこりと微笑んでキラリと輝くナイフを取り出した。

 そして、ナイフを見て絶句している私を尻目に、薔薇をナイフで切り取った。


「あ…、そんなことをして良いんですか?」


慌てて聞くと白兎は、「ええ。大丈夫です。」と言った。そして、私の髪にさす。


「よくお似合いですよ。アリス。」


白兎はいつも顔に浮かべている微笑よりも嬉しそうに笑った。


「あ、有難う…御座います。白兎さん。」


私がそう言うと、白兎はにこりと笑ってから、「さぁ急ぎましょう。」と言って、私の手を引いた。




大きなお城。確かにこれは迷いそうだ。デンジャラスだ。

 

 お城内部に入ると、廊下だけでも象や馬が何頭も横に並んでズシンズシンと大行進出来そうな幅があった。すっげー。

 しかも左右両側に、変な鎧や銅像、置物がたくさん並べてある。でっけーのが沢山。因みにその分を差し引いても、象や馬は何頭もズシンズシンと横並びで歩けそうだ。


 白兎は私の手を引きながら、すーっとその中を慣れた感じで横切っていく。優雅な感じの身のこなしだね。私はそうでも無いけど…。


 真っ赤な絨毯の上を、ひたすら早歩きで歩く。無言だ。


そして、ずーっとその真っ赤な絨毯を辿っていくと、目の前に大きな扉が現れた。

 赤い扉で、金色の模様が入っている。素材は分からないけれど、触った感じは冷たい。金属特有のヒンヤリとした冷たさだ。


「ここ、です。ここに…、この国の最高権威、この国のルールである女王クイーンが居ます。」


白兎が、少し緊張した面持ちで、扉に手をあてながら言う。

 さっきまでは、あんなにスイスイと歩いていた彼、緊張の欠片も無かったのに…、やっぱり女王様の前ともなると、緊張するんだ。


 私もつられて緊張する。胸がドクドクと嫌な感じに早くなって、汗がベットリと流れ始める。


「じゃあ、行きますよ。アリス。」


白兎が扉に手を掛けた。そして、開く。


 ぎぃっ―――――、扉が重い音を立てて、開いた。


「帰ったか―――――――――、白兎。」


それと共に、美しい声。

 

「はい。ただいま城に戻りました。白兎に御座います。」


白兎が、恭しく頭を垂れる。


「少し遅いことに関しては――――、不問にしといてやろう。今日は見つかったのだから。」


凛とした、女王様の声。でも、見つかったって何が?


「はい。女王様。」


白兎の声。何が見つかったって言うの?


「新しい、アリス=リデルが。」


 あたらしい、ありすりでる。



――――白兎の言葉。


「そうですか――――ようこそ、新しいアリス=リデル。」




アリス=リデルって、私のこと?






















―――――やっと、私はこの時不穏な空気を感じ取ったんだ、ね。



ああ、クイーンさんが出ました。


 うあー、チェシャ猫のターンが来ない!?


こんなのでも、見捨てないで読んでくださる奇特な方がいたら嬉しいです…。

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