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第30話 堪忍袋の緒は切れた

ええっと、現在の状況説明をするとすれば…。


 うん、私は、放置されてて。


ジャックさんと、エースさんに視線が集まってます?


「やーいやーい、ムッツリー!!こんの巨乳好きー!!」

「お、お前はーーッ!!その女言葉から疑ってはいたが、ホモか!?オカマか!?そうなのか!??」


ひぃぃぃぃ、なんかトンデモネー言葉が飛び交ってますよ。

 教育上宜しくないって。絶対に良くないって。


床に座りながら、二人の言い合いをボーッと観察する。

 私はと言うと完全無視の状態っす。嗚呼、何だか哀しいわー…。


「エース君、クソ真面目だと思ったらそんな一面を隠してたなんてッ…!!私のそばにそんなケダモノがいたなんて信じらんなーい!!」

「うっさい黙れ!!アンタなんぞに誰が手を出すか!!大体アンタは男だろう!!」


ひょお、何だか口喧嘩って白熱すると話がとんでもない方向に飛んでいくよね。


そんな風にヌボォーーッと観察していたら、二人はなんと武器を持ち出した。


ジャックさんがスラリ、と何処に隠し持っていたのか大きな剣を持ち出す。

 白銀に鈍く光る剣は、とても切れ味が良さそうだった。


「えーい!!変態は成敗よ!!成敗!!私の剣で、豆腐地獄に堕ちなさーい!!」


いいのかなー。騎士隊長が食堂とかで剣を持ち出して…。

 というか豆腐ネタはまだ健在だったのか…何処までこだわる、騎士隊長。


「な、何ッ!!ならばそちらも、覚悟はあるんだろうなッ!!」


そう言って、エースさんもジャックさんのより細く、短い短剣をスラリと抜き取る。

 

「てぇーい!!覚悟!悪は滅びろ!変態も!!」


ジャックさんがそう言い、切り掛かる。濃紺の髪が、サラリと揺れた。

 と、いうかどうしよう。この喧嘩…止めなくて良いのか?


「ッ甘い!!」


エースさんがそう叫び、床を蹴って後ろに飛ぶ。

 しかし、ジャックさんのリーチの長い剣にはあまり意味が無い。せいぜい衝撃が幾らか軽くなっただけのようだ。


 ガキィンッ!

 鉄と鉄とかぶつかり合い、共鳴するように奏でる、固く高らかな金属音が響く。


リーチの長い、ジャックさんが有利に私の目には映った。だが、そうでも無いらしい。


 後方に飛び、衝撃を軽くしたエースさんは、ジャックさんの攻撃を、片手だけで持った短剣で受ける。そしてもう片方の手で、細身のナイフを投げた。


カカカッ!ジャックさんに向けられたナイフは、彼に当たる事無く壁に刺さり、軽快な音を立てた。



 勝負を見て思うに、ジャックさんはパワー型、エースさんはスピード型みたいだ。

ジャックさんの剣は太く長い。あの大きさは並の人間の筋力では、ああも軽々とは扱えない筈だ。

対して細身の剣を扱うエースさんは、ナイフを戦いに投入している。ナイフと言うのは一本一本の力が弱く、また小さい。だが、その分素早く動き、また携帯も出来る。


 ・・・って何呑気に実況中継をしてるんだ、自分。イカン、止めなアカンやろ。


どうやったら騎士隊長とその部下をとめられるか?

 私は戦闘に関してはドがつく程の素人…。うーむ。敏腕現役戦士なんぞを止められるか。


作戦その一。捨て身タックル。


・・・はい却下。危険すぎる。

ジャックさんは攻撃を踏み止まってくれるかもしれないが、エースさんに関しては微妙な線だろう。そんな危険な賭けなんてやるものか。正直言って私に取っちゃ自分の身が一番大切なのだ。


作戦そのニ。「私のタメに争うのはやめてェッ!!」と説得。


・・・いや、そのセリフは無い!!

 でも説得は良い手段だ。平和的解決が一番さ!!


 そういうわけで実行しようと顔を上げる、と…。


 もうすでに食堂は大混乱でした。テヘ☆




さっきよりも激しさを増した、二人の戦いに。


 野次を飛ばす兵士、茶々を入れる兵士。(いや、お前等二人を止めろよ!!)


ひたすら避難する人。(あ、私も避難民になろうかな…。)


 逃げる人。(うう、大混乱…。)


あちこちに飛び交うナイフ。(エースさん、少しは狙えよ…全くジャックさんに当たってない!)


食器その他もろもろが割れて錯乱してるテーブル。(弁償代いくらだろう…誰が払うんだ?)





・・・これなんてカオス?


ひえええ、は、早く止めなくては!!



「二人とも、喧嘩は止めて下さいッ!!危険ですよ!怪我でもしたらどうするんですかッ!!」


勿論危険なのは回りの人たちです。


 で、説得はきいたかな・・・?



 ぎゃーすぎゃーす。


「うっさいハゲ!黙ってろバーカバーカ!!」

「ななな、何ですってぇ!!?馬鹿って言ったほうが馬鹿なのよ!バーカバーカ!かば!」


・・・・・・。


聞いちゃいねえな!オイ。



 ふうー、コレは私にはどうしようも無いのか…。


最早諦めの境地です。どうしようもないしなぁ。


そう思ってフゥーと溜息をついてると、カカカッと直ぐ近くで軽快なナイフの音。そして、違和感。


「んん…?」


そう思って違和感のある方と、ナイフの刺さった音がした方に顔を向ける。ぐいっ。髪を引っ張られるような違和感。


「・・・・・・。」


髪の毛が、飛んできたナイフによって切断されていた。先っぽの5cmくらい。


・・・エースさん、もう少し狙おうよ…全然違う所にいる私に、見事命中させてどうする…。


 ヒュヒュッカカカッ!!


「わ、わひゃあっ!!?」


またナイフがこっちに飛んできた。今度はエプロンドレスの袖の部分がいとも簡単に切り裂かれた。



・・・これは、怒っても良いのか、なぁ…。




折角姉から貰った服。いつもは派茶滅茶で、破天荒で、少し迷惑だったけど。

今は、たった一つすがる事の出来る、私の世界を思い出せる物だった。

 

 この世界では、私は歓迎されたけど、独りだった。


私の知らない、世界。

私の覚えてない、記憶。

私への、隠し事。


 誰からも愛されるのは、なんて幸せなんだろう。

でも、同時に恐ろしい気もした。


帰りたい、最初は確かに有ったその気持ち。けれど段々薄れてきて。

その内、私は自分の世界での記憶も薄れ、忘れてしまうのでは無いかと、怖くなった。


だからせめて、自分の世界から持ってきた鞄や、この服を、大切にしようと、思っていた。


姉さんに、会いたいなあ。



なんだか、鼻がツンとして、目が熱かった。





痛々しく、容易に切り裂かれたエプロンドレスの袖。


 それを見て。


そう、強くも無い私の堪忍袋の緒は、


多分、とても簡単に、千切れてしまったのだ、と思う。


はーい、次回、アリスマジ切れの巻き!

 乞うご期待!!さぁ、どうなるんでしょーか!!

というか、遂に30話突破ですねー…今度何か企画モノでもやろうかな…番外編とか。

 取り敢えず、これからも末永くお付き合いしましょう!

どんな話になるか、製作者自身もワカラナイという適当な物語ですが!!


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