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第16話 大きなお家とマッドハッター

はー、また変態と遭遇しちゃったよ。まったく。


 この国ってホント変態ばっかり。イヤな国だなぁ。変態密度高すぎ。


さっき会った変態の双子…子供まで変態ってヤバくない?将来が心配だ。いや、今から心配だけど。


 さぁてと、別の道でも探しにいくかなぁ。


今度は街中でも通ることにした。またあの双子と会うのは勘弁。



 中世ヨーロッパ風の町並み。日本から来た私にとっては、随分メルヘンに見える。


道には、オレンジ色や明るい茶色のレンガが敷き詰められている。立ち並ぶ家も、装飾が随分凝っていて、豪華。


 私はシンプルイザベストって思うほうだけど、こんな風にアンティーク風に凝った飾りも悪くは無い。絵の題材にするならむしろ大好き。


 今度スケッチでもしようかな。空も真っ青で綺麗。茶色とオレンジの暖色で彩られた町には、空の青がきっとよく映えるに違いない。


 人のスタイルも中世ヨーロッパ風味。結構ピラピラしたスカートを着てる人が多い。日本じゃかなーり浮いてしまう、このエプロンドレスも、全然浮いてない。結構この風景に馴染んでる。

 …っていうかいつもの私のカジュアルスタイルだったらきっとかなり浮いてた。不本意ながらもここは姉さんに感謝するべきだろうか?


 わー、ちっちゃい家もおっきい家もある。凄い。


大きな家は、真新しいモノはピカピカと輝きそうな美しさで、古いモノは、どっしりとした風格を持つ美しさ。ツタが絡んでるような建物も結構あるよ。凄い。



 そんな中、私の目を引いたのは一際大きな家。…というのは間違いかな。だって家は少ししか見えなかったから。

 見えたのは、門。茶色とこげ茶、赤茶色のレンガで造られた塀に、黒の美しい模様のついた門が、どっしりと構えていた。


 中には、うっそうと茂った木。…お城と違って、木は沢山あるけどコレは全然手入れをしてないな。折角広い敷地なのに勿体無いなぁ。はぁ。


 それにしても、この家は中々興味深い。こんな家、現代の日本じゃ滅多にお目に掛かれないし、私の画力じゃまだ想像で描くのもムリだ。細かい部分はちゃんとした資料が無いと描けない。


 これは…スケッチしなきゃ損だね!!ほら、据え膳食わぬは――ってヤツだよ!使い方ちょっと違うけど!!


鞄をゴソゴソと探って、スケッチブックと鉛筆、色鉛筆を取り出す。画材からスタンガン、文房具まで揃ってる魔法の鞄だよ!!うわお、我ながら超シュール?


立ってると疲れるので、レンガに座る。エプロンドレス汚れちゃうかな。まぁいいか。でも一応一枚紙でも敷いておこう。どっこいしょ。


うあー、こんな所に座って絵描いてるってどんだけ怪しいんだ、自分。

 他の人の目にはどう映ってることやら。ストリートチルドレン? それもアリかな。


さらさらと心地良い音を立てて、色鉛筆が紙の上を滑る。

 滑った後には、綺麗な色たち。紙の上に見る間に模様が出来る。


さらさらさらさら。目の前の風景を映しとって。細かい部分も描いて。


微妙な陰りや木の色。生憎今は十二色しか色鉛筆の持ち合わせが無い。何色か混ぜて色を作ろう。

 緑と黒、青を混ぜて、木の影。

 黄色と緑、水色を混ぜて木の光。

 木漏れ日の当たる木は、とっても綺麗で、手入れは全然されてないけど、私はうっとりした。


「よしっ!おしまい。」」


サラリと簡単に描いただけだけど、題材が良いこともあり、中々良いものが描けた。


「でも、やっぱり家も描いてみたいなぁ。」


木に隠れて殆ど見えない家。折角だし見てみたい。


 なんとか見えないだろうか、と門の間をチラチラ覗いたり、塀まで届かないかと背伸びしたりする。

 うわぁ、さっきにも増して不審者。けど私は絵を描く為なら地に堕ちることも厭わない!!――カッコつけてみたけど、かなりのダメ人間っぽいセリフ。はずい。


「ん〜…全然見えないよ…。」


高い塀。そんな立派な物が、身長155cmの私に越えられる筈も無く、私はその家の周りでウロウロと未練がましく徘徊することとなった。チキショー泣けてくるぜ。


 あ〜あ、でもホントにモデルにして描きたいよ。こんな立派な家、そうそう見られる物じゃないし。


「何か家に用?」

「ひゃあっ!!」


ぽん。肩に手が置かれ、いきなり背後から声が聞こえた。勿論変な奇声あげてるのが私。仕方ないじゃん!!驚いたわけだし!!


「あわわ…す、すみません!!あの、あまりにも素敵なお家があったので恋して…絵描いてて…それでお家も描きたくなって…魔が刺して覗き未遂をぉっ!!」


あー、我ながら混乱して何を言ってるのか理解できない…なにこのコント。私はツッコミ専用キャラじゃ無かったのか…ツッコミ、ボケ、両刀だったのか!!?


「ふーん…つまりは家をモデルにして絵を描きたい、と?」


うっわお。この人スゲエ。今の私の言葉から、華麗に私の真意を抜き出すとは…しかも一瞬。どんだけ頭の回転速いんだ。脳トレしてんのか。


「は、はい!是非ともお願いしたいです!!」


まぁこの際細かいことはいいや。相手が私の考えを理解してくれたんなら、折角だしお願いしよう。


「…解った。良いよ、おいで。」

「はい!!有難う御座います!!」


いえーい、この国も変態ばっかりじゃ無いんだね!!良い人も居たよ!


 私に声を掛けた人は、黒い大きなシルクハットを被っていて、服も黒っぽい。タキシードっていうのかな。ネクタイは蝶ネクタイ。藍色の落ち着いた感じ。

 髪の毛は、黒。凄く真っ黒。墨で塗り潰したみたいな感じ?でもすごく艶やかで綺麗。

 顔は…まぁ言わずとも解ってくれ。美形だ。憎たらしい程。瞳は、ネクタイと同じ感じの藍色。とっても綺麗。

 多分10代後半から20代前半くらいの年齢だと思う。はっきりしないのは、どこか腹の底が読めないっていうか年齢不詳な雰囲気があるから。行動は年上で紳士的っぽいんだけど、顔はまだ青年くらいに見えるって言うか…。あ、あと背が高いよね。

 

 その人は、門を軽くギィッと開けた。え?もしかしてこの家の持ち主?え?金持ちだったりすんの?


そして、するりと門の中に入った。動きがスマートだなぁ。頭の上にあんなでっかい帽子があって、凄く頭が重そうなのに。


「さぁ、行こう。」


その人が手を差し伸べる。門の向こう側から。私は頷いて、門に入った。あ、いっけねー、この人の差し出してくれた手を取って行かなきゃまずかったかも。ヤベー。


 でもその人は、そんな事気にする様子も無く、スタスタと歩いてる。うあ、速いよこの人。ああ、足の長さが違うもんね。それは胴長短足な私への挑戦状か?


「ここなら、家が見えるよ。―――そうだ、もし良かったらお茶会に来ないかい?」


その人が言った。え?お茶会?マジ?


 っていうか、お茶会っていうコトは――――――――――!!



 コイツ、帽子屋かッ!!



 あの、マッドハッターと呼ばれた帽子屋。キチガイ、と定評があるアイツだよ!!!不思議の国のアリスでは、かなーり有名だと思われる登場人物。


 あー、でも良かった。この人はマトモそうな感じだもん。ふぃー。それならお茶会に行ってみようかな。


「はい。誘って頂けるのならば、是非。」


一応礼儀正しく言っといた。だってほら、相手も礼儀正しい雰囲気だし。うんうん。


「そう?なら早速行こう。私達のお茶会へ。」


そう言うと、帽子屋はさっと私の手を取って立ち上がらせた。え?もしかしてさっき私が手を取らなかったコト、根に持ってる?


「は、はい!!」


ちょっといきなりだったんで、転びそうになった。ほら、私運動神経皆無だし。

 彼に握られた手。ほんの少し、あったかい。










 帽子屋に連れられて、行った先。


 そこにあるのは幸福?


 そこにあるのは希望?


行った先に、ハッピーエンドはあるのかしら。

 ついに出てきました。帽子屋さんで御座います。

この人、初期設定は落ち着いた紳士的キャラじゃなくて、ハイテンションで原作譲りのキチガイ設定だったんですよね、実は。


 さぁ、次回はヤマネさんですよ。どんなキャラなのか!!乞うご期待!!

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