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 月曜日、諸々の準備を終えた俺は学校へ行くために自転車に跨った。

 十二時十分だ。まあ、四時間目が終了する頃には着くだろう。明け方までウィンブルドンを観戦していた割には早く起きたんじゃなかろうか。

 大原高校は平津加市を東西に走る線路の北側にある。線路の南側にある俺の自宅からは、近からず遠からずの場所だ。近過ぎて油断することもなければ、遠過ぎて時間がかかることもないのにこうして遅刻してしまうのは何とも不思議なことである。

 家々の間の狭い道路を走り、浜竹地下道を通り抜けて七間通りに出た。珍しく晴れた梅雨の昼は蒸し暑く、着ているTシャツをパタパタと扇いで服の中に風を入れる。当たり前のことながら七間通りの歩道にはすでに高校生など一人もいない。

「うむ。実に清々しい」

 一年生の頃、初めて遅刻した日を思い出す。いつも同じ高校生で混雑を極めている道は見違えるように空いていて、遅刻した俺を懐深く受け入れるように伸びていた。俺は心打たれ、以来遅刻した時は強いて急ぐことをせず、ゆっくりと落ち着いて登校する心のゆとりを身につけてきた。決して急ぐことが面倒なわけではない。

 しかし高校側は俺のそうした精神的成長を一切認めず、多くの先生方は遅刻日数四十日を記録した俺を冷遇した。プロテニスの試合ではよく客席の中にファミリーボックスなるものが用意されているのを見るが、所属高校の教師から目の敵にされる様は自分のファミリーボックスにまで対戦相手の関係者が座っているような四面楚歌だといつも思う。

 それでも俺は急がない。そう易々と周りに流されてはテニスでも決していいプレーはできないのだ。

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