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中央地下道を出ると、夜の道はまだ七夕帰りの人が歩いていて普段よりも賑やかだ。
「陣ちゃん、テニスはどーなの?」
「今やトラウマだね」
「トラウマ?」
「まあ、とにかく思い出せそうな気配はないね。初心者同然だよ。全く面白くない」
なるべくゆっくりと歩いていると、姉さんの草履の足音が道に反響する。
「君にとってテニスとは何かね?」
突然、姉さんは仰々しい口調で言った。
「難しい質問ですな」
「それが分かれば、おのずと道は開ける。若者よ、大いに悩むのだ」
悩めと言われても、姉さんのような美人が隣にいたのでは他のことに対する集中力など些かも残らない。今ならテニスボールと野球ボールを間違える自信だってある。俺は悩むふりをしながら、姉さんの浴衣姿を眺めていた。
「ちゃんと悩んでないでしょ?」
「悩むのは苦手分野でね」
「それじゃあ、神頼みにしちゃおっか?」
姉さんは手に持っていた小さな巾着から短冊とマジックを取り出した。
「どこの竹に吊るすの?」
「陣ちゃんの家の前の公園に子供会の竹があったよね。あれでいいんじゃない?」
「なるほど。それにしても、よくそんな物持ってたね」
「友達がたくさん持ってたから、何となくもらっちゃった」
「その友達もよくそんな物持ってたね……」




