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大原高校は平津加総合公園の敷地に入りこむようにして建っており、周囲の環境には評判がある。また創立から日が浅いため校舎もきれいである。こうした理由から、市内では結構人気のある高校なのだが、大原高校の最大の魅力は何と言ってもその校風にあると俺は考えている。
大原高校が掲げる「自由」の校風は認知度も高く、大原高校を志望する中学生が面接試験でも受ければ、その十中八九はその校風について言及するほどである。
「大原高校の自由な校風に憧れて……」と、大抵はこんなふうであろう。そんな憧れを抱いた中学生が晴れて合格して大原高校に入学すると、その期待は見事なまでに応えられる。
何せ、先輩たちがその有り余る活力を遺憾なく発揮して自由を謳歌する様は、自由というよりは、もはや無法地帯に近い。談笑する声のせいで全校集会にて校長先生の話は聞こえない、昼休みの教室に宅配ピザは届く、そこまで来てどうして間に合わなかったのか知らないがトイレの洗面器で誰かが大きいほうの用を足すなどなど、校風の自由がどれほど真実なのかを知るだろう。
しかし、誤解してはいけない。この高校では拳と拳で語り合うような血なまぐさい自由は奨励されない。好き勝手やりながら、どこか愛嬌のある自由。それこそ我らが愛すべき大原高校の校風なのである。現に、こうして保健室にて肘のケガを治療してもらっている俺の姿も、傍から見れば愛嬌に溢れているであろう。断じて気のせいなんかではないはずだ。




