01 起動
FrameworksというVRMMOが存在した。
このゲームは端的に言うならばモノ作りのゲームだ。
モノ作りといってもよくあるファンタジーな世界の生産職とか自分で家を作って畑を耕すとかそういう感じではない。
自分でキャラクターや小物、建物といったオブジェクトを作り上げる。ただそれだけのゲームである。
キャラやストーリーなんてものも無ければどこまでも広がるような広大な世界や裏設定なんてものも当然存在しない。
そう、存在しないなら作ればいいのである。
このゲームの面白さはまさにそれだ。
どこぞのアニメキャラクターを作っても良し。オリキャラにチートなステータスや設定を盛り込んで俺TUEEEEEな雰囲気を味わってもいい。
キャラクターに留まらず、武器や防具、家具や小物の類などを作るものもいれば本気を出しすぎた結果、文字通り世界やダンジョンなんてものも作ってしまうやからもいる。
そして一部のマニアがこのゲームにド嵌りしてしまい更に情熱を注ぎこんだ結果、キャラクターのモーションや剣の残光や魔法のエフェクト、木々の揺らめきやダンジョンのギミックまで作ってしまう者が現れたりもした。
そういったMODに対しては公式は公には認めていないがこちらは責任を取らない代わりに自由にやってもOKといった対応でFrameWorksはますますの広がりを見せた。
とは言ってもこのゲーム。プレイ人口が多いかと言われればはっきり”少ない”と言えてしまう程度には小規模だった。
その原因はやはり”難しい”。この一言に尽きるだろう。
作りたいもののフレームを作ってそこにテクスチャを貼る。
簡単に説明するとこれだけなのだが、この”フレームを作る”という時点ですでに難しい。その上物ならまだしも人を作ろうとしたら滑らかな曲線を幾重にも作り合わせてそこに滑らかな肌の色にあったテクスチャを自分で作って貼る。
キャラクター一体どころか小物一つ作るだけでも結構な根気を要求されるゲームなのだ。
要するにこのFrameWorksというゲーム。
どこまで行ってもマニア向けという枠を超えられなかったのだ。
僕の名前は西条巧。
大学2年で中学高校とは違う緩い生活環境で出来た暇を見つけてはFrameWorksにログインしている所要、”廃人”という奴だろう。まぁ危なくない程度には単位も取っているし日常生活を犠牲にするほどの重傷患者ではない……と思うが。
と、そこでスマホに着信が入る。
電話に表示されている名前はヒロだ。
「はい、もしもし。ヒロか?何の用だ?」
「おう、タク!今暇か?暇なら途中まで作ってた『樹』の続きやろうぜ!」
ヒロが言っている『樹』というのは僕とヒロが今共同で作っているFrameWorks内のオブジェクトの話だ。
「おう、いいぜ。そんじゃ今からログインするわ」
「おう、んじゃ切るわ。じゃーな」
「ああ」
電話を切ったところでベッドの枕元に置いてあるヘッドマウントディスプレイを装着する。
装着したらリラックスした体勢で。起動キーを発声する。
「VRMMO、FrameWorks、start!」
その声と共に、僕の意識は落ち新たな光がやって来た。
最初の三話から四話は設定集みたいなもんです。