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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第三章-C 元勇者様の???紀行
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元勇者様は砂を作る依頼を受ける

僕はドラゴンに咥えられている時に見えた街に辿り着いた。

その街は紫色の地面から離れた場所にある通常の地面の上に作られている。


僕はアイテムBOX内から通行税を支払い街の中に入った。


街の中には、冒険者風の人間が多い。

スクエイドの街でも冒険者は多いが、それ以上だ。


(とりあえず冒険者ギルドを探してみよう)


僕は街を歩いている冒険者にギルドの場所を訪ねてギルドへ向かった。


冒険者に聞いた話によれば、ここはゴワムの街。


周辺には特別なモンスターが多く、素材目的で冒険者が集まっているらしい。

それに街は復興中であるため冒険者向けの仕事も多いと言っていた。


~~


僕は冒険者ギルドの前にいる。

比較的、大きな路地に設置されており人通りも多い場所にあった。


ギルドに入るとカランカランと出入り口のドアに付けられたベルが鳴る。

まるで喫茶店か酒場のようだ。


……いや、酒場そのものだった。


ギルドに入るとあちこちで酔っ払いが眠っている。

酒場とギルドとを間違えたのだろうか?


僕が黙ってドアを閉めようとすると……


「待って下さい!」


酒場の奥から女性の声が聞こえた。


僕は声の聞こえた方を向く。

すると1人の女性が早足で歩いてきた。


「あの、殺戮の風さんですよね」


不名誉な異名が第一声で出た。

ここまで知れ渡っていたのだろうか?


「そう……呼ばれています」

「良かった」


女性は胸に手を当て凄くホッとしている。


「ここは酒場でしょうか?」

「いいえ、冒険者ギルドですよ」


僕は酔っ払いが床や椅子で眠っている周囲を見渡した。

ここは……去った方が良さそうだ。


「間違えました」

「えっ……ま、待って下さい」

「いえ、それでは」


僕は、その場から逃げることにした……けど


「ユウ君じゃないか」


酒場の奥から聞き覚えのある声がした。

声のした方を見ると白いローブを着た女性が立っている。


「シェルファさん?」

「変わった場所で会うね」

「再開を喜びたい所だけど……仕事の話を聞いてもらえないかな?」


シェルファさんはウインクをして冗談交じりに仕事の提案をしてきた。


「……分かりました。お話をお伺いします」

「じゃあ、奥に来てもらえるかな?」


僕は、先ほど声をかけてきた女性に案内されている。

先ほどの女性が先頭で、次にシェルファさん。最後尾に僕だ。


彼女はギルドマスターの秘書をしているらしい。

その関係で有力な冒険者のことは把握しているとのことだ。


そう言えば僕はA級冒険者だったな……


~~


ギルドの奥には、このギルドをまとめるギルドマスターの男性がいた。

彼は丸縁眼鏡に豊かな髭を持った初老の男性だ。


「初めまして。私は街長とギルドマスターをしておりますサーフェン・オリメスと言います」

「お初にお目にかかります。ユウ・ヒウラです」

「ご高名?はお伺いしておりますユウさん」


『ご高名』という言葉に?がついたということは、悪名ということだろう。

──どんな悪名が広がっているのかは聞かない方が良さそうだ。


「仕事の依頼ということでコチラにお伺いしたのですが……」

「ええ、作って頂きたいものがございまして」


作って欲しいということは、錬金術師としての仕事か。

わざわざ僕に頼むということは高度な技術が必要な仕事なんだろう。


「何をお作りすれば?」

「浄化の砂をお願いしたいのです」


浄化の砂は、幽体系モンスターにダメージを与えられるアイテム。

幽霊系だけでなくゾンビとかにも効果がある。

作るのは難しくないハズだけど……


「それは普通の物で良いのでしょうか?」

「いえ、上品質の物が大量に必要です」


浄化の砂は、上品質であっても難易度は高くはない。

でも『大量』という言葉が気になる。


「大量に……というと、どのくらいでしょうか?」

「10トンほど……」


えっ 10トンと言わなかった?

さすがにキツすぎるんだけど。


「10トンで間違いありませんね」

「ええ 少なく見積もっても10トンは必要になります」


少なく見積もって10トンということは追加でもっと多くなるということか……


「それは、私1人で作らねばならないのでしょうか?」

「いえ、ユウさんには他の錬金術師に声をかけて頂きたいのです」


よ、良かった。

10トンも1人で作るのはキツすぎる。

でも疑問が1つある。


「なぜ私に依頼をなされるのでしょうか?他の錬金術師でも作れるハズですが」

「それはボクが話すよ」


シェルファさんが話に入って来た。


「この街の周りはね、侵食されているのはわかるだろ」

「浸食……あの紫色の地面のことですか?」

「ユウ君は浸食された地面を見るのは初めてかい?」

「ええ」

「じゃあ、そこから話そうか」


シェルファさんが言った内容をまとめると……

浸食された地面は、思念と魔力が混ざった物に地面が侵食されて生まれる。

浸食された地面は食物が育つのを阻害するため死の大地となる。

浸食された地面からは特別なモンスターが湧き出てくる。

こんな所だ。


「浸食された地面については分かりました」

「そうかい。じゃあ、ユウ君に依頼した理由を伝えるけど……」

「ええ」

「浄化の極大魔法を使って欲しいんだよ」

「どこで……ですか?」

「この街から北西に行った場所にある沼で使ってもらいたい」

「浄化が必要な状態ということは……」

「大量の死霊系モンスターが沢山いる」


死霊系モンスターは、素材も魔核石も落とさない。

このため、お金にならないから冒険者は相手にしないモンスターだ。


「10トン必要って言う浄化の砂は……」

「極大魔法の触媒としてさ」


10トン必要とされるとなると途方もない回数の極大魔法を使うことになる。


「もちろん他の人間にも浄化魔法の依頼はしてある」

「そうですか……ですが、受けるに当たり1つ条件が」

「なんだい?」

「極大魔法を使えると知られたくないので顔を隠させて頂きたいのです」

「その程度なら問題ないと思うけど……どうだい?サーフェン街長」

「ええ、話は通しておきます」


僕は、このまま依頼を引き受けようと思った。

だけど懐にしまった呪いのアイテムが気になったからだ。

──このアイテムを持っていたら変な影響が出かねない。


「シェルファさん、仕事を受ける前に見て頂きたい物が」

「なんだい?」


一流の魔法使いである彼女なら何か気付くかもしれない。

僕は呪いのアイテムを懐から取り出した。


「これなんですが……」

「君はなんていう物をもっているんだい……」


シェルファさんは呆れたような声を出した。

クルスのラブソングは、そこまでの呪いのアイテムだったらしい。


「そんなに酷いのですか?」

「なぜユウ君が気付かないのか疑問なんだけど」

「?」

「この入れ物に描かれた模様は呪石を砕いて作られているよ」

「えっ」


この世界の蓄音機はCDに似た音楽媒体を使う。

当然のことながら、ケースに入れておかないと傷つくから容れ物は必須だ。

まさか呪石なんていう物を使っているなんて。


呪石というのは名前のとおり呪いの石だ。

近くに置いておくと判断が狂ってしまい様々な悪い結果を生む。


そう言えば、クルスのラブソング関連で色々とあった。

精神的にも肉体的にも疲れるほどに……


疲れすぎていたせいで、呪石の効果を受けていることに気付かなかったようだ。

それに色々と精神的に追い詰められていたし。


「しかも、この模様は……」

「ええ」


今気付いたんだけどケースに描かれているのは魔方陣だった。

それも呪い関連の……


「はぁ~」


今まで苦労してきた理由が分かり僕は安堵の思いとともに溜息を吐いた。


その後、クルスのラブソングに処置を施してアイテムBOXに入れる。

未知の呪いだと思っていたからアイテムBOXに入れるのは躊躇われた。

でも呪いの原因が分かったので、もう恐れることはない。


今回の依頼を整理すると……

1.浄化の砂を10トン用意する

2.浄化の極大魔法の使用


浄化の砂を作るのは難しくない。

でも街の人間ではなく僕に依頼した。

このことは2つの依頼を同時にして値引きを狙ったからのようだ。


問題のある仕事ではないと思う。


「この依頼引き受けさせて頂きます」


僕は懸念が無くなり爽やかな気持ちで依頼を引き受けた。


………

……


この後、僕はスクエイドの街に戻った。


帰った僕はクルスに、なぜ呪石なんて使ったか尋ねた。

そしたらキレイな意思だったからとの返答が。


偶然、呪石を選び呪いの魔方陣を描いたのかも聞いた。

クルスは『マジ?』と質問してきた。


僕は反射的に彼を殴っていた。

シェルファさんは、街の浸食について相談を受けたのでゴワムの街にいたとのことだ。

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