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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第三章-B 元勇者様と友のラブソング
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元勇者様と友のラブソング

この章は試験的にセリフの改行の間隔を変えてみました。

僕は店の外を魔導具の1つを使って覗いている。


店の出入り口にはカメラのような働きの魔導具を仕込んである。

小さな穴から映像がとれるから隠しカメラに近い。


そのカメラがとらえた映像はガラス状のモニターに映される仕組みだ。

当然、このモニターは店の中にある。


そんなモニターに今日は知り合いが映っていた。


店の外にいたのはクルス。

大きな箱を足元に置いてソワソワしていた。



僕は、彼の足元に置かれた箱の中身に心当たりがある。


あれは僕が少し前に作った蓄音機だ。

色々手を加え続けた結果、形が変わった。


四角い箱の左右にコードレスのスピーカーが付いているという形になっている。


レコード…CDと言った方が今は分かりやすいかな?

CDのような円盤状の音楽を録音した媒体を設置して音楽が聴ける。


すでに音楽プレーヤーと呼んだ方が良い形だけど、蓄音機で僕は売ることにした。

理由は過去に紹介したときに使った蓄音機という名前が定着しているから。


ゲームスキルで作った魔導具に地球のデザインを元にした外観。

パクリ過ぎて罪悪感とか、最近はどうでも良くなってきた。



そんな蓄音機なんだけど、クルスはレイナにプレゼントするつもりなんだろう。

問題は、どんな音楽を贈るかだけど…僕には嫌な予感しかしない。


多分…アレだと思う。


自作音楽の感想を聞かれたし。

音楽の録音方法を聞かれたし。

音楽の録音用魔導具を貸したし。

ラブソングの録音に付き合わされたし。

ラブソングではレイナという単語が連呼されていたし。


もはや、自作音楽を蓄音機とセットで贈ろうとしているとしか思えない。

僕は、やめた方が良いとは言えず、今日まできてしまった。


ラブソングを贈るのはイタイ結果になりやすい。

しかも恋人関係でもない相手に贈るのは無謀すぎる。


贈ったクルスも、あとでキツイだろう。

でも、それ以上にレイナが難しい返答を迫られそうで、かわいそう過ぎる。



何度もクルスを止める機会はあった。

でも、本当に幸せそうな顔で感想とか聞いてきたんだ。


僕には、そんなクルスに現実を告げることなんて出来なかった。

全て僕の甘さが招いたことだ。僕が何とかしないと…


僕は覚悟を決めてクルスの元へと向かった。



~ユウの店 前~


僕が店の扉を開くとクルスがいた。


「お、おう」

「や、やあ」


僕とクルスは別れた恋人のような気まずい挨拶をした。

…僕に恋人がいた経験はないけど。


「……………」

「……………」

「……………」

「今日は、どうしたんだい?」


大きな箱をチラチラ見ながら、僕はワザとらしいセリフを言ってしまった。


「ああ、レイナにな」


ヤバい、僕の予想が外れていない可能性が高い。


「そうなんだ…」

「ああ、コイツをな」


クルスは、足元に置いた大きな箱に軽く触れて、はにかんだ笑顔を見せた。


(なんて、幸せそうな顔をしているんだ)


僕はクルスの幸せそうな顔を見て、何も言えなくなった。

でも目の奥に映る覚悟のような物に気付き、僕は考えを改めた。


(このまま告白させるのはマズイ)


恐らくクルスはラブソングを贈って、告白するつもりなんだと思う。


僕が渡した蓄音機を見て、良いアイデアを思いついたと考えたのだろう…

でも気付いてくれ、そのアイデアは悪魔の囁きだ!


でも、ラブソングを贈るとは確定していない。

その辺りを、まずは確認しないと。


「ひょっとして、自作の音楽を贈るなんてことは…」

「……鋭いな」


クルスは僕が指摘すると笑顔となり照れ臭そうに答えた。

これって確定…いや、まだラブソングだとは…


「先日、お前に聞いてもらっただろ。アレをな…」


確定してしまった。

僕は血の気が引いて行くのを感じた。


いつもなら放っておくけど、今回のはキツすぎる。

告白をラブソングで行うとは…恋人なら笑ってくれるだろう。

でも、恋人ではない相手から見るとイタイやつだと認定されかねない。


…止めないと。



「クレス、大切な話があるんだ」

「レイナに渡してからではダメか?」

「その渡す物に関してなんだ」


僕は覚悟を決めてクルスに伝えることにした。

ラブソングは危険すぎると。


「クルスの作った歌なんだけどね…」

「ああ」

「……………」

「……………」

「……がんばったね」

「お、おう」


僕には言えなかった。

クルスは、ラブソングを作るのに本当に頑張ったんだ。


弾けなかった楽器の練習をしたり歌を勉強したりした。

さらにエリアスさんに付いて回って…!!


そうだ!エリアスさんだ!!!


「クルス、エリアスさんに歌を頼まないか?」

「いや、俺の歌が…」

「それは、レイナに向けた歌だよね」

「あ、ああ」

「そういうのは、恋人になってから贈った方が良いんじゃないかな?」

「だが…」

「エリアスさんにも、ファリアっていう恋人がいるんだ」

「そうなのか?」

「恋人になる前は、エリアスさんは昔からある、有名な歌を贈っていたんだ」

「……………?」

「でも恋人になってから、自分で作った歌を贈るようになったんだよ」

「ああ」

「エリアスさん程有名な吟遊詩人が、最初から自分で作った歌を贈らなかったのは何故だと思う?」

「さあ?」

「僕も分からない!」

「はあ?」

「だから聞いてこないか?」

「だ、だが」

「変ないわくとかあったら、レイナに無神経な男だと思われるよ」

「ま、まあ、そうかも…な」


僕はクルスの荷物をアイテムBOXに放り込み、エリアスさんの元へと向かった。

この街に来たエリアスさんは創作意欲が刺激されたらしく街に滞在している。

僕の作った剣をボロボロにしたりファリアに僕の居場所を伝えたりしたんだ。


クルスの過ちを止める程度なら、手伝わせてもバチは当たらないだろう。



そういえば、蓄音機が普及すると同じ過ちを犯す人が大量に生まれるのでは…

一瞬、技術の発達に潜む影に触れた気がした。

ユウがラブソングを贈るのがイタイ結果になりやすいと知っている理由。

→日浦 悠の魂が持つ記憶が原因です。

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