元勇者様と緋色の騎士 5
この話にはモンスターへの残酷描写があります。苦手な方注意。
『神気結界』の効果
神気で結界を作って内部にいる上位存在の力を僕が持つ魂の力を使い相殺。
そして味方に神気を少しだけ与えて強化する。
代わりに僕は神気による高速戦闘を行えなくなる。
~~
「何をした」
攻撃がアッサリと通ったことで状況は大きく変わった。
ディブロスの声には先程までとは違い焦りが混ざっている。
「これから死ぬヤツに話す必要はない」
「ユウ、それは悪役のセリフだ」
僕の言葉にシュメルがツッコミを入れた。
ボケたつもりはなかったんだけど…
僕達は会話をしながらディブロスを囲む形に移動している。
今までは時間稼ぎのためだったけど、今回は倒す為に。
「…」
ディブロスからは先程との戦いとは違い、警戒する意思が感じられる。
ヤツも分かっているのだろう。自分の優位性が無くなったことを。
僕達とディブロスは睨みあっていた。
ディブロスの左手側には僕とアルマがを構えている。
ディブロスの右手側にはタマやんとシュメルさんが構えている。
金属と化した森の中双方の睨み合いが続いている。
この空間では僅かに零れる呼吸音と足音だけが響いていた。
静寂ともいえる程、静かな睨み合い。
だが周囲には殺気が満ち溢れていた。
その静寂はシュメルにより壊される。
シュメルは火魔法を放ち、炎の矢が7本、ディブロスを襲う。
だが、ディブロスは炎の矢を腕で払い3本が消滅。4本は強固な装甲に阻まれる。
更にディブロスは前方へと走り、シュメルに拳を振り上げた。
だがディブロスの背後にはタマやんが回り込んでいる。
背後からタマやんは、強力な回し蹴りを首元に当てた。
「クッ…」
ダメージを与えたようだが、装甲によりダメージは減少させられたようだ。
上位存在としての守りを相殺したけど、ヒヒイロガネの装甲は健在なままだった。
「ハッ」
背後にいるタマやんに対しディブロスは裏拳で応戦する。
だがタマやんは、体を伏せて敵の攻撃を避けた。
(だったら…!)
僕はアルマに視線を向ける。
アルマは頷き、ディブロスへと襲いかかった。
「タマやん!援護を」
僕はスピードのあるタマやんにアルマの援護を指示する。
タマやんはディブロスの背後からヤツの右手側に移動した。
タマやんはアルマと両サイドから攻撃を仕掛けるつもりらしい。
「シュメル!火魔法を連続で打ち込んで!!」
戦闘中には『~さん』と口にする暇はない。
僅かな時間が生死を分けるのだから…
僕はディブロスの正面にいるシュメルに火魔法を放つように指示した。
シュメルは火魔法を放つ。
火魔法の爆炎は目くらましとなり、タマやんとアルマの姿を隠す。
「クソッ」
ディブロスは装甲の奥に光る眼で周囲を見るも、爆炎で視界が遮られている。
アルマは敵の装甲の隙間に剣を通した。
「グッッッ」
だが、まだ傷は浅い。
どうやら装甲の隙間にも高い防御力を持っているようだ。
だがタマやんはアルマが傷付けた個所に強力な蹴りを入れる。
「グアッ」
エグイッ……けど、相手の弱点を突くのは常とう手段だ。
「シュメル!火魔法を」
僕は再びシュメルに火魔法を指示して、再び目くらましを行う。
「そう何度も!!」
ディブロスは剛腕を振り火魔法をかき消す。
と、同時に強い風が周囲に吹く。
どうやら風魔法を使ったらしい。
タマやんとアルマは足を止められる。
そして、その隙をディブロスは見逃さなかった。
ディブロスは大きく飛び上がる!
そして拳を構えアルマへと襲いかかった。
それが、大きな隙を作る動作であることを忘れて…
僕はディブロスの跳躍に合わせ跳び上がっていた。
風魔法を組み合わせディブロスの跳躍力に合わせている。
僕に気付きディブロスは拳を向ける先を変える。
当然、僕に対してだ。
ディブロスの拳は無手の僕に振り下ろされる。
ヤツは僕が武器を持っていないことに気付くべきだった。
そうすれば致命的な攻撃を受けずに済んだのだから…
僕は振り下ろされる拳を横から払いのけ、ディブロスの胸部へと両手を当てる。
(ディメンション!)
ディブロスの胸部に一瞬だけ四角い空間が生じた。
(雷龍)
間を空けずに僕は雷魔法を放つ。
蒼い龍の姿をした雷がディブロスを襲い吹き飛ばした。
そしてディブロスは背後にある金属の木へと衝突する。
木へと衝突したディブロスはヨロメキながらも立ち上がった。
だが己の身に起きた異変に、すぐさま気付く。
「タマやん!胸を狙え!!」
僕はタマやんに指示を出す。
そして僕もディブロスに向かって走り出した。
ディメンションは素材を加工する生産系のスキル。
通常なら作った空間内部に素材を飲み込み加工する。
でも僕のスキルレベルなら空間に触れさせれば脆くすることぐらいは可能だ。
だから、ディブロスの胸部は…
タマやんはディブロスの胸部に蹴りを打ち込むも…
ディブロスは両腕でヒビ割れた胸部をガードされる。
だが、ガードした腕から響いた音は軽い物だった。
なぜならタマやんが手加減をしたからだ…足加減というべきか?
攻撃を防がれると、すぐに横へとタマやんは移動する。
タマやんの背後に隠れていた僕が長刀でディブロスの胸部を突いた。
腕と腕の隙間から長刀をヒビ割れた胸部へと突き刺す。
「ガッ」
ディブロスからは息が詰まるかのような声が漏れる。
だが、攻撃をコレだけで終わらせる気はない。
「雷よ!」
「ァァァァァァァ」
もはや声にすらならない声を上げるディブロス。
僕は長刀に雷魔法を通しディブロスの体内に流す。
全力の雷魔法はヤツを内部から焼いていく。
ディブロスの体は感電して痙攣している。
アルマが付けた傷跡からは黒い煙が上がりはじめていた。
~~
ディブロスの痙攣が止まり僕は長刀を抜く。
長刀を引き抜くとディブロスの巨体は前のめりに倒れようとしていた。
「下がれ!ユウ!!!」
僕は声に反応し後ろへと下がると、タマやんが走り込んで来た。
そして前のめりに倒れつつあるディブロスの腹部を蹴り上げる。
タマやんの攻撃によりディブロスの巨体は空宙高くに浮いた。
「コアを破壊しろ!」
そうだ…魔神の本体は六角形のコアだとタマやんは言っていた。
すなわち本体を破壊しない限り復活する手段があるということだ。
僕は再び長刀を構える。
落下してくるディブロスの体に流れる魔力の流れを観る。
そして魔力の流れからコアの位置を見極めた。
魔神のコアも僕が使っているコアも魔力の流れは同じようだ。
僕は上段の構えをとる。
そして落下するディブロスに対し振り下ろし、心臓部分のコアを破壊した。




