元勇者様と緋色の騎士 4
タマやんが魔水晶を噛み砕くと姿が変わった。
その姿は猫の亜人。
黄金の瞳に黒い体毛。
そして黒い衣をまとっている。
これがタマやんの魔神としての姿なのだろう。
タマやんは姿を変えるとディブロスの元へと駆け出した。
猫の姿に違わない俊敏な動きだ。
タマやんの動きに合わせるかのようにアルマも走る。
プロというべき無駄のない動きだ。
タマやんは蹴りを中心とし魔法を絡めながら攻撃をする。
アルマはディブロスに2本の短剣を駆使して襲いかかった。
どちらも捉えることの難しい俊敏にして鋭い攻撃を繰り出す。
だがディブロスの守りを崩すことは出来ない。
「ほお、クローリー。その姿に戻れるとはな」
「7日に一度しか戻れねーのに、お前のせいで無駄遣いしちまったよ」
クローリーというのはタマやんの本名だろう。
ごめん!変な名前付けてしまって。
でも僕達は後戻りできない場所に来てしまったんだ…
これからもタマやんって呼ばせてね♪
~~
僕はタマやんへの謝罪を心の中で済ませたあと準備を始める。
「シュメルさん。よろしくお願いします」
「また、お前に負担をかけてしまったな」
「いえ、覚悟は昔に出来ています」
「ユウ…」
「始めます」
僕は意識を集中させる。
自らの魂に眠る力を引き出す為に。
魔王をウォーレン様は『上位存在』と呼んでいた。
下位の存在は上位の存在に攻撃しても軽微なダメージしか与えられない。
これは絶対的な法則や理であり運命ともいえる抗えない現象だ。
では上位存在を倒すには、どうすればよいのか?
答えは単純だ。同じ上位存在の力をぶつけて、その現象を相殺すれば良い。
僕の魂は日浦 悠という人物の魂から欠片を取り出して作られた。
この日浦 悠の魂は僕の魂において核と呼べる存在だ。
でも僕の魂は他にも多くの魂が混ぜられている。
上位存在と呼ばれる存在の魂も…
上位存在の魂を神気によって活性化させる。
それが、これから使う対上位存在用の切り札だ。
~アルマ、タマやん視点~
タマやんは火球をディブロスに放つ。
だがディブロスに当たっても乾いた音を周囲に響かせるだけだ。
どんな攻撃だろうとディブロスに届かずにいる。
「チッ」
「タマやん!同じ魔神なのに弱すぎるぞ!!」
「しゃーねーだろ!俺は欠陥品なんだよ!!ってか、コイツとは役割が違う」
「ほ~、その役割について教えて欲しいものだ」
「教えねーよ!」
軽口を叩きながらも攻撃の手を緩めない2人。
だが会話は敵のペースを乱す為のものだ。
2人の表情には余裕など微塵も見られなかった。
~ユウ視点~
僕が魂の力を普段使わないのには理由がある。
魂の力を使えば上位存在の守りを一時的に破壊できる。
でも神気を魂の活性化に使うため通常の神気の力は一部が使えなくなる。
使えなくなる代表例がスピードだ。
神気を使って行う高速の戦い方が使えなくなってしまう。
だから通常の敵に使うのには効率が悪い。
もう一つの理由は…ティナや残念女神に怒られるから。
~アルマ、タマやん視点~
タマやんとアルマは敵の攻撃を避けながらスピードを活かし戦っている。
ディブロスのスピードは突進やジャンプなどの単調な動きにしか活かされない。
このことに2人は気付いたからだ。
「冷気魔法を使うぞ」
「? ああ!!」
アルマの提案に疑問を感じたタマやんだが、すぐに意図を理解する。
そして2人はディブロスに対し冷気魔法を発動させた。
ディブロスの周囲に魔力で出来た水が大量に集まる。
そして敵を包み込むんだ水は一瞬で凍りつき氷の牢獄を作り出した。
周囲には霜が降り金属と化した森では冷気を妨げる物もない。
空気は一気に冷たいものへと変わっていた。
「どうだ!」
タマやんは鋭い目でディブロスを睨むが動く気配はない。
アルマもまたディブロスに強い視線を向けていた。
「もう一度やっておくぞ」
タマやんの提案だ。
彼は魔神の強さを知っていたが故に慎重だった。
「そうだな」
アルマもまたプロだ。
無知な自分の考えよりも知識のある相手の意見を尊重する。
そして2人が魔力を集め始めた時…
ピシッ
ディブロスを包んだ氷にヒビが入る!
「チッ やるぞ!」
「ああ!」
再び2人が氷魔法を放とうとするもディブロスは全身に赤い魔力を纏っていた。
「くっ 下がれ!」
2人は直感した。
ディブロスは先程の攻撃を行おうとしていることを。
…だが!
「神気結界」
その瞬間、ユウの声が響く。
直後、周辺には強大な力が満ち溢れていった。
「攻撃を仕掛けろ!!」
タマやんとアルマにシュメルは指示を出す。
2人は一瞬戸惑いを見せるがディブロスに攻撃を仕掛けた。
「はあぁぁぁ」
攻撃が最初に届いたのはアルマだ。
アルマは腕の関節部へと攻撃し…その刃を深く突き刺した。
「グアァァァ」
「!!」
想像もしていなかった痛みに声を挙げるディブロス。
痛みの影響か集まっていた魔力は霧散してしまう。
一方、アルマの攻撃が通った瞬間を目にしタマやんは口元を笑みで歪める。
「(ほう…コレは中々…)」
タマやんは右足に魔力を込めディブロスの胸部を蹴り付けた。
するとディブロスの巨体は後ろへと大きく吹き飛ばされる。
「攻撃が通っている…? これが…ユウの力か!!」
「正解」
僕はアルマに声をかけたが驚いているアルマに新鮮さを感じていた。
いじめッ子スマイルのアルマしか、僕の頭には刻まれていないせいだろう…
「それに、力がみなぎってくる」
「それも効果の一つだけど…今は決着を付けよう」
「…そうだな」
僕とアルマは視線をディブロスに向けた。




