元勇者様と緋色の騎士 3
カアァァァァン
周囲には金属とは違う乾いた音が響いていた。
その音は魔王と戦った者達には忌まわしい音。
僕とシュメルさんは顔を歪める。
かつて魔王と戦ったとき僕達の攻撃が防がれ続けた。
障壁のような何かに攻撃が阻まれて、全く攻撃が通らなかったんだ。
その時と同じ音と手に残る感触。
(いや、違う)
魔王とディブロスとでは僅かだけど違いがある。
ディブロスには魔王の時よりも少しだけ深く傷が入っているようだ。
タマやんは魔神を魔王を目指し作られた存在だと言っていた。
魔神とは魔王よりも劣化した存在なのかもしれない。
でも、この守りの力は厄介な事に変わりは無い。
「ほ~、俺に傷を付けるとは」
「くっ」
アルマは僕の攻撃がヤツを仕留めたと思ったのだろう。
苦々しげな表情をしている。
僕達はディブロスを囲む形に広がった。
シュメルさんが前方で攻撃に備えている。
アルマがディブロスの右手側で2本の剣を構えている。
僕はディブロスの左手側で長刀を構えている。
タマやんは…木の影に隠れている。
元々アテにはしていないけど、あからさまに避難されると精神的にキツイ。
せめてコッソリと避難して欲しかった。
「歯ごたえがありそうだ…」
ディブロスの周りに魔力が溢れる。
ヤバいのを仕掛けてくるつもりだ!
「俺の後ろに!」
シュメルさんが僕達を呼び集めた。
ディブロスの魔力は高まり続け赤い光として可視できる程になる。
そしてヤツは右手に赤い魔力を集めて拳を強く握りしめる。
「受け取れ!!!」
強く握りしめた拳を大地にぶつけた。
「ヌオオオォォォォォォォォーーーーー!!」
ディブロスの慟哭が響き渡る。
拳をぶつけられた大地から赤い光が溢れ出て周囲をなぎ払っていく。
まるで、赤く染まった暴風を見ているかのようだ。
「絶対障壁!」
シュメルさんは極大防御魔法を発動させた。
僕達3人の周囲を黒い球体に包まれる。
………
……
…
ディブロスの攻撃により周囲の金属と化した木は完全に吹き飛ばされていた。
地面もまた、どこまでも抉られている。
いや、1ヶ所だけ地面が抉られていない場所があった。
それはシュメルの作りだした防御魔法に守られた場所。
黒い球体が徐々に薄くなり消える。
そこからは3人と1匹の猫が現れた。
だがシュメルさんは片膝をつかざるえないほど消耗していた。
同じ攻撃を彼が防ぐのは難しいだろう…
僕も『絶対障壁』を使うことは出来る。
でもシュメルさんのように使いこなせるわけではない。
このため、ヤツの攻撃を防ぎ切れる可能性は低いと思う。
~~
「タマやん」
「なんだ?」
「逃げられそうかい?」
「…無理だな」
「そう」
タマやんは、既に逃げることは諦めていた。
魔力の流れを探ると金属と化した森はヤツの魔力が張り巡らされている。
森の中から出ない限り、魔力を探知され追いかけられ続けるだろう。
「ユウ…倒せそうか?」
「手はあるけど、時間が無い」
「どれだけ時間が欲しい?」
「5分あれば十分だと思う」
「ちっ…厳しいな」
僕はタマやんに魔水晶を渡した。
タマやんは、体の維持に魔水晶を未だに必要としている。
だから魔水晶はタマやんに何かを依頼する時の対価となる。
「手の内を見せてくれないかな?」
「気付いていたのか」
「なんとなく…ね」
タマやんの手の内なんて知らない。カマをかけただけだ。
でもタマやんの性格からして何か隠しているのは確信していた。
「魔水晶5本だ」
「請求は研究所の方に回していいぞ」
アルマも会話に入ってきた。
「ついでに結界石の分も経費として認めてやる」
「それは、太っ腹だね。ついでに報酬も増やしてもらえると…」
「やはり結界石は却下としておこう」
「なっ」
余計なことを言ってしまった。
アルマは何とも嬉しそうに目を輝かせている。
よほど僕をイジメルのが好きなのだろう。
「うまい話なら、俺もまぜろ」
「くたばりぞこないが」
立ち上がったシュメルさんに憎まれ口を叩くアルマ。
だがアルマもシュメルさんも口元に笑みがこぼれている。
「シュメルさん…」
「使うんだな…」
「はい」
「なら、俺は全力で守る」
「お願いします」
僕達の覚悟は決まった。
そして仲間の覚悟に対して、僕の口から自然と言葉が漏れた。
「勝とう」
「「「ああ」」」
僕達は自分の役目を果たす為に行動を開始した。




